「介護うつ」共倒れ防げ
早期発見に簡易判定法
2014年10月15日 東京新聞朝刊
家族を介護する人が、介護疲れなどが原因でうつ状態になっていないか簡単な質問で判定する方法を、国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)の荒井由美子・長寿政策科学研究部長らが開発した。
だれでも同一の基準で判定することができ、介護者のうつを早期発見し支援を充実させることで、虐待などのリスクを減らすことができると期待されている。 (山本真嗣)

この方法では、介護の負担度を点数化して、一定以上の点数でうつの危険性を示す。
介護うつを判定する目安はこれまでなく、英国の国際老年精神医学雑誌十二月号に掲載される。
質問は「介護を受けている人のそばにいると腹が立つことがあるか」
「介護があるので、自分の社会参加の機会が減ったと思うことがあるか」など、介護に対する否定的な感情と、社会生活に支障をきたしている程度を尋ねる八問。
「いつも思う」「時々思う」「思わない」など五段階で答え、回答ごとの点数(四〜零点)を出し加算。
合計点数が高いほど負担を感じている状態で、十三点以上は「うつ状態の可能性が高い」と判断できるという。
荒井部長は、富山市と共同して、同市内で在宅介護サービスを受けていた約六千人を対象に、主な介護者へのアンケート調査を実施。
回収できた約四千百人の34%がうつ状態だった。
この八項目の質問表を用いた調査を同時に行った結果、そのほとんどが十三点以上だった。
米国では、介護の負担を測定する二十二項目の質問表が広く使われている。
今回の判定方法で使う質問表は、米国のものを扱いやすいよう荒井部長らが簡略化し、うつ状態と判定できる目安を示した。
荒井部長は「介護者が倒れてしまえば、在宅介護は続けられない。うつのリスクの高い介護者を早めに見つけ出してケアすることが、在宅介護の充実につながる」と話す。
◆「精神的に限界」…周囲で支えを
名古屋市で認知症の八十代の母を在宅介護する女性(53)は昨秋、うつ病と診断され、今も薬の服用を続ける。
実母のもの忘れがひどくなり、認知症と診断されたのは七年ほど前。
ここ二年で急激に悪化した。
妄想がひどく、「他人が家に入ってきてめちゃくちゃにした」と女性の夫に激怒。
注意されると子どものように泣き叫び、「出て行け」と罵倒した。
トイレに行くと汚物を手に付けたまま歩き回るため目が離せない。
夫と二人の息子の五人暮らし。
夫は仕事、息子は受験に失敗し浪人中で、母の介護は女性一人で担う。
週三回のデイサービスを使い何とか続けてきたが、好きな旅行にも行けず、家にこもりがちに。 体重は十キロ近く落ち、両手がこわばってしっかり握れなくなった。
母の顔を見ると吐き気がし、母の頭をぶったり、「母を殺して私も死のう」と思ったことも。
でも診断を受けるまで、「自分ではうつだと思っていなかった」と言う。
愛知県内の五十代女性は認知症の義母を在宅で二年間介護したが、「精神的に限界」と感じて、昨冬、グループホームに預けた。
夫は東京に単身赴任中。
「自分一人で判断し、対応しなければ」という責任感が負担に。
息抜きも兼ねてパートで働きに出たが、徘徊(はいかい)や大学生の孫へ暴言を繰り返すようになり、目が離せなくなってやめた。
夜も安心して眠れず、持病のリウマチも悪化。
週三回のデイサービスから、義母の帰宅が近づくと動悸(どうき)が止まらなくなった。
義母の相談に行った病院の精神科で、医師から自分のことを心配された。
◇ 介護者を支援する一般社団法人「日本ケアラー連盟」(東京)代表理事の堀越栄子・日本女子大教授(63)によると、介護を嫌がっていると思われることを心配して、介護者は自分から助けを求めない傾向にあるという。
介護保険は要介護者の支援が中心で、介護者の心のケアなど直接的な支援はほとんどないことも拍車をかけている。
国立長寿医療研究センターの荒井由美子・長寿政策科学研究部長と富山市が、同市内の在宅介護者約六千人を対象に実施した調査では、介護の負担を強く感じている介護者ほど、うつ状態の程度が高かった。
一方、身近に相談できる人が多いと、介護の負担感やうつ状態が軽い傾向が出た。
こうした状況を改善するため、埼玉県では市民団体などが県内二十七カ所で、定期的に介護者が集うサロンを実施。
岩手県花巻市や北海道栗山町は数年前から社会福祉協議会の職員らが介護者を訪問し、相談に乗る事業を始めている。
堀越教授は「介護者は目の前のことに精いっぱいで、自分が支援が必要なことにも気付かない。周囲が異変に気付き、支えることが必要」と話す。
◇ 国立長寿医療研究センターの荒井部長は、介護うつを判定する質問票を早期発見と支援に役立ててもらうため、ケアマネジャーや訪問看護師に提供することを検討している。
問い合わせは、ファクス0562(46)8421。
今頃って感じ
早く介護にもっと力を入れてほしいね。
全て 自分で決めて自分が手配していてくれて 子どもの善意と思っていたことが 手のひらを返されたようで 自分の心がパニックになっています。