2014年10月18日

問題行動調査:反抗・暴言、荒れる児童 社会のひずみ、ストレスに

問題行動調査:
反抗・暴言、荒れる児童 
     社会のひずみ、ストレスに
毎日新聞 2014年10月17日 東京朝刊

文部科学省の2013年度問題行動調査で、荒れる小学生の増加が明らかになった。

「中学校と同じことが起きている」。
小学校教員からは悲鳴が上がり、専門家は「荒れの背景には貧困など社会のひずみが子供のストレスとなって表面化している」と指摘。
学校や行政は対応に追われている。【寺岡俊、松田栄二郎、関東晋慈、三木陽介】

 「精神的に不安定で感情を抑えられない児童が目立つ」。

大阪市立小のベテラン男性教諭(60)は現状をそう明かす。
反抗的な態度を見せ、ささいなことで教室を飛び出したり、突然壁を殴ったり。

広島県の市立小校長は「調査統計には含まれないが『言葉の暴力』も目立つと嘆く。

教員とすれ違いざまに「うざい」「死ね」と暴言を吐く児童が珍しくない。
東京都の区立小校長も「注意すると、かみついたり、いすを投げたりする。
過度な指導は『体罰』になりかねず先生も遠慮がち。
それが暴力行為を助長させている面もある」と対応に悩む。

 自治体は対応に乗り出してはいる。
熊本県教委は08年度に小中学校での暴力行為が前年度52件増の171件となったことを受け「子どもの居場所作り」を重視した対策を促進。
異学年交流の活発化や教員が連携して生徒指導に当たる学校が増加した。

13年度は135件に減り、県教委は「取り組みが浸透した結果」と説明する。

福岡県教委は02年度から「非行要因」として不登校への対策を強化。
担任とは別の教員によるマンツーマンの相談体制などに取り組む。

 小中高校の暴力行為件数が13年度1万187件と、4年連続で全国1位だった大阪府。
大阪市教委は来春から、在籍校とは別の施設に特別教室「個別指導教室(仮称)」を設置し、問題行動を起こした生徒を厳格に指導する方針だ。

 重い傷害や薬物所持、強盗などを起こしたケースが対象。
出席停止にした上で、専門スタッフが警察などと連携して指導する。
市教委は「あくまで出席停止措置の受け皿。排除ではない」と説明するが、
教員からは「邪魔者扱いと受け取られ、逆に傷つける」
「規範意識は集団生活の中で身につく」と疑問の声も上がる。

 荒れる児童について、元小学校教員の増田修治・白梅学園大教授(臨床教育学)は「ストレスを抱える子が確実に増えている」と指摘。

一因として家庭要因を挙げる。
経済的困窮で子を構えなかったり、思い通りの進路を歩ませようとしたりする親も目立つという。

学校も受け止める余裕がない。
小学校は障害を抱え特別支援が必要な児童も増え、新たな指導方法も求められる。
全国学力テストで学校間競争にもさらされる。

 増田教授は「問題行動を起こす子どもは親からも先生からも認めてもらえず自己肯定感が低い子が少なくない。
社会全体の問題としてとらえ対策を取る必要がある」と話している。

 ◇いじめ18万件、続く高水準

 文科省が実施した13年度の問題行動調査で、全国の国公私立の小中高校、特別支援学校で認知されたいじめ件数は18万5860件だったことが分かった。
前年度の約19万8000件に比べ減ったものの依然高水準で「いじめ20万件時代」に入ったことをうかがわせる。

 都道府県別では1000人当たりの認知件数は全国平均が13・4件だが、最多は京都府の99・8件、最少は福島県の1・2件と開きがあった。

同省は「自治体、学校ごとで把握の方法が一様でないことが要因
国の手引を精査し、客観的で的確に認知できるようにしたい」と話している。

 いじめのうち、インターネット上で誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)する「ネットいじめ」は8787件で過去最多。
全体に占める割合は4・7%だが、高校ではその割合が高く、約2割を占めた。

 昨年9月施行のいじめ防止対策推進法が示す対策の取り組み状況(今年10月現在)を調べた結果、都道府県に比べ市区町村の遅れが目立った。

各自治体が作る「いじめ防止基本方針」は、策定中の奈良県以外の都道府県で策定済みだったが、市区町村は4割強。
学校や教委、児童相談所など関係機関でつくる「いじめ問題対策連絡協議会」も都道府県は9割超が設置済みに対し、市町村は3割程度だった。【三木陽介】
==============  
■ことば  
◇いじめ防止対策推進法
 2011年に大津市の中2男子生徒がいじめを受け自殺した事件で、大津市教委の隠蔽(いんぺい)体質や不適切な学校の対応が問題視され、初めて法制化された。
学校に対し、教員や心理、福祉の専門家らで構成するいじめ防止対策組織の常設
▽いじめ防止基本方針の策定
▽重大ないじめ事案が起きた場合、迅速な事実関係の調査−−などを義務づけている。
posted by 小だぬき at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 教育・学習 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック