茂木健一郎の I love
脳 さぼることの快楽…継続の難しさ痛感
2014年10月27日 読売新聞yomiDr.
健康のための運動に限らず、日々の習慣を考える上で何よりも難しいのは、「続ける」ということでしょう。
多くの人が、「私には続けられない」という理由で、あきらめているようにも見えます。
「三日坊主」という言葉があるくらいですから。
もっとも、「三日坊主」というのは、「三日しか続かない」という意味ですが、
逆に、「三日続いたものは、ずっと続く」という考え方もあるのではないかと、誰かが言っていました。
どんな時でも、ポジティブに考えることはできるものです!
私自身、今、ダイエットを中心とする健康つくりに取り組んでいて、「続ける」ことの大切さと難しさを痛感しています。
なかなか成果が出なかったダイエットも、椎名誠師匠の「男は1日1回床と勝負しろ」という教えを守るようになってから、順調に体重が減り始めました。
ところが、この、椎名誠師匠の教えを守っての、1日腕立て200回、腹筋200回を続けるのが、なかなかに難しいのです。
この原稿を書いている今日の時点で、腕立て200回、腹筋200回は94日連続、さらに3キロ以上のランを加えた「グランドスラム」は47日連続を達成しています! ぱちぱちぱち。
もちろん、連続記録自体に意味があるわけではありません。
数字は、単なる数字に過ぎません。
それでも、続けること、つないでいくことに価値があるという思いがあるのです。
というのも、過去に、思い立って運動を始めたものの、つい「今日くらいはいいだろう」と油断して、それからダラダラと堕落の生活を送っていく、ということが何度もあったように思うからです。
人間は弱いもので、さぼる理屈はいくらでも思いつくもの。
小学校や中学校の時、私は案外風邪を引くことが多くて、学校を時々休んでいました。
朝、母親が熱を測って、「あら、これじゃ行けないわよね」と言う。
一応弱々しく、情けない顔をするものの、内心は「しめた」と思っている、そして、もう一度寝床に就いて眠る、その時の心地よさと、得をした感じ! あれを思い出すと、人間というのはさぼることに快楽を感じるのだと思わざるを得ません。
だから、油断大敵というか、連続記録には意味がなくて、いつかは途切れるだろうけれども、とりあえず、できるだけ続ける、少しきつくても、なんとか、つないでいくということを心がけているのです。
もうここまでくると、「意地」のようなものですね!
旅の「句読点」も刺激に
このところ、地方に出ることが多くて、そんな時も、連続記録をつないでいくために、ランニングシューズを持っていく。
リュックの他にもう一つ持っていくのは面倒くさいが、そうでないとつながらないのです。
先日も、三重県の松阪に、国学者、本居宣長の足跡を訪ねましたが、その際もランニングシューズを持っていって、文化の香りあふれる松阪の街を走りました。
そこから、京都に向かいましたが、京都でも、朝、御所のまわりを走りました。
どこでも、めったやたらと、走っているのです。(笑)
訪れた各地を走る「旅ラン」は、観光もかねる感じになっていて、途中で立ち止まったり、写真を撮ったりすることも多いのですが、そんな句読点もかえって刺激になって、「つないでいく」エネルギーがわきあがってくる気がするのです。
まだまだ、やり続けるぞう!
東京に戻ってくると、今度は秋の長雨。
ランニングの連続を妨げる要因としては、雨は無視できません。
朝のタイトなスケジュールの中でなんとか走ろうとしたその矢先、激しい雨が降ってきたりしたら、かなり気力がそがれます。
ましてや、秋の雨は冷たく、気をつけないと風邪を引いてしまいます。
それでも、雨の中を走りに出かけるのは、なんとかつないで行きたいからで、そこには、もはや、「うまくつながってくれ」という、極端に言えば「祈り」のような気持ちさえ、あるように思うのです。
脳科学者から「走る哲学者」へ
考えてみると、生命の本質は、「つないでいく」ことにあるのかもしれません。
腕立てや腹筋を、1日くらい休んでも大したことはなさそうですが、では、私たちの心臓はどうか。
心臓が、1日どころか、1分止まっただけでも、私たちの命は危機に陥ってしまいます。
呼吸だってそうです。
心臓の鼓動や、呼吸が、生まれてから、途切れることなく「つないで」きてくれたからこそ、私は、今、ここにいます。
ああ、ありがたや。
つながることこそが、命の本質!
そう考えると、案外、腕立て、腹筋、ランニングといった運動を途切れることなくつないでいくことには、それなりの意味があるのかなと思います。
もちろん、無理は禁物です。止やめるときには止める勇気を持たなければならないのですが。 なんだか、運動を続けているうちに、「走る哲学者」みたいになってきたようです!
ところで、体重の変化の最新のデータは、76キロを切る直前で、やや「足踏み」している傾向が見られます。
このところ、旅が続き、会食も多かったためかもしれません(汗)。
引き続き、運動を毎日「つないで」、がんばりたいと思います!
(小だぬきー写真略)
◆ 茂木 健一郎(もぎ けんいちろう)
脳科学者、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。
1962年、東京生まれ。東大大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。
クオリア(感覚の持つ質感)をキーワードに脳と心を研究。
最先端の科学知識をテレビや講演活動でわかりやすく解説している。
主な著書に「脳の中の人生」(中公新書ラクレ)、「脳とクオリア」(日経サイエンス社)、「脳内現象」(NHK出版)、「ひらめき脳」(新潮社)など。
たつた1日の暴飲暴食で2キロ戻るのよ
ひどいわ〜(笑)
胃腸が元気でスッキリできれば、もう少し減るのではと思います。
私も 減量努力を見習わなくてはと思います。