2014年11月09日

<自殺遺児>社会変えた 思いつづった文集、国の対策促す

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<自殺遺児>社会変えた
 思いつづった文集、国の対策促す
2014年11月07日 毎日新聞

14年前、自殺で親を亡くした子供たちが「心の叫びを聞いてほしい」と訴えた小さな文集が、日本の自殺防止対策の出発点だったと世界に発信されている。

世界保健機関(WHO)は今秋、「世界自殺リポート」を初めて公表し、この中で日本の自殺対策を世界の先進事例として取り上げた。
そのきっかけとして紹介されたのが文集の存在。

ここで胸の内を明かした自死遺児の一人は「個人の責任と片付けられていた自殺が、社会の問題だと思ってもらえるようになった」と振り返る。
【清水健二】

 世界自殺リポートは、WHOが掲げる「2020年までに各国の自殺率を1割下げる」の目標達成に向け、世界の現状と課題をまとめたものだ。
個別事例として特徴的な4カ国の対策が紹介され、日本が最も大きく扱われた。
かつて「社会的タブー」だった自殺の問題は、00年に遺児たちが語り始めたことで変化が起きたと解説している。

 文集「自殺って言えない」は、親を病気や自殺で亡くした子を支援する「あしなが育英会」が発行。
家族が自殺した17人の高校生、大学生、妻が匿名で思いをつづった。

長野県の久保井康典さん(33)は当時大学2年。中1の時に借金苦から自殺した父を助けられなかった後悔、仲間に過去を打ち明けるまでの葛藤を書き「僕たちと同じ境遇の人たちに“一人じゃない”と伝えたい」と結んだ。

 A5判でわずか36ページの文集は反響を呼び、NHKが特集番組を制作した。
そのディレクターだった清水康之さん(42)が退職して設立したNPO法人「ライフリンク」は、自殺防止や遺族支援の活動を全国に広げた。

 久保井さんらは01年12月、小泉純一郎首相(当時)に面会できることになり、首相官邸で対策の必要性を訴えた。
これを機に国の取り組みが加速し、06年の自殺対策基本法制定につながった。

専門家は「法律に基づき各省庁や自治体が横断的に自殺対策を取っている国は、世界でまだ少ない」と指摘する。

 大学を出た久保井さんは郷里に戻って自治体職員になり、結婚して2児の父になった。

生活保護を担当した際は人を支援することの難しさを実感した。
家族の自殺を抵抗なく語れる社会になったとも思えない。
それでも「自殺を個人の問題と考える人は減り、社会全体が解決に向き合っている」と感じるという。

 1990年代後半に急増し、03年にピークの3万4427人に達した自殺者は10年から減少に転じ、12年にようやく3万人を割った。

 久保井さんは「国が対策を進めなかったら、自殺者は今よりも多かったかもしれない」と思う一方、現状を喜んではいない。

「それでも毎年2万人以上が自ら死を選んでいる。
その数倍の自死遺族が生まれていることを忘れてほしくない

◇「適切な介入と治療で防止可能」WHOリポート

 世界で約40秒に1人が自ら命を絶ち、その「予備軍」は20倍に上る−−。
WHOのリポートは世界の自殺の現状をそう伝え、「適切な介入と治療で防止が可能だ」と指摘する。

 2012年の自殺者数は推計80万3900人。
うち75%は国民所得が低〜中位の国。
性別では男性が多く、女性の1・9倍、高所得国に限ると3・5倍(日本は2・4倍)に達する。
15〜29歳の若者は、自殺が死因の2位(日本では1位)。

 自殺の危険因子としては、
世界共通で▽精神障害▽差別▽社会的孤立−−などが挙げられる。

紛争や自然災害があると自殺が減るとの説もあるが「明白な方向性はなかった」。

 リポートは「自殺を口にする人は自殺するつもりがない」
「自殺について話すのはよくない」など、精神保健学的に誤った「俗説」を、正しい事実とともに紹介している。

 日本語版を翻訳した国立精神・神経医療研究センターの小高真美研究員は
自殺の危険は人生のどこにでもあり、避けて通れない。
身近な問題だと知って、正しい知識を持ってほしい」と訴える。 ……………………………………………
◇WHOリポートが指摘する自殺の「俗説」

「自殺を口にする人は実際にするつもりはない」
→(事実)自殺を考える人の多くは、絶望を 抱え他に選択肢はないと感じており、口にする時はおそらく支援や援助を求めている

「自殺は予告なく突然起こる」
→(事実)多くは言葉か行動による事前のサインがあり、用心することが重要

「自殺の危機にある人は死ぬ決意をしている」
→(事実)危機にある人は、生と死の相反する 感情を同時に持っていることが多い

「自殺について話すのは、促しているようでよくない」
→(事実)包み隠さず話すことは、他の選択肢を考え直す時間を与えて、むしろ予防する
posted by 小だぬき at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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