2014年12月06日

高速化はストレスを増やす

イグ・ノーベル・ドクター新見正則の日常
高速化はストレスを増やす
2014年12月5日 読売新聞 yomiDr.

北海道新幹線が試験走行を始めたそうです。

 今は、東京から新青森間を3時間以下で結ぶ東北新幹線「はやぶさ」もあります。
2年後に函館までつながると、なんと東京から函館が4時間そこそこになるそうです。

 僕が子供の頃は、東京から函館に行くのは大仕事でした。
一番速い特急でも東京から青森が8時間。
そして青森から函館が青函連絡船で約4時間の船旅でした。

青森駅での乗り換えは、演歌「津軽海峡冬景色」の世界そのものでした。
合計で12時間以上の長い、長い「旅」でした。
それが2年後には、4時間、つまり乗り換え時間を含めなくても、昔の3分の1で到達できるのですね。

のんびりした旅は安らぎの時間だった

 今年、青森に学会で出張しました。僕は日帰りを選びました。
片道3時間ですから十分に日帰りできます。
たまたま乗せてもらったタクシーの運転手さんに、「東京が近くなって良いですね」と声をかけたら、「多くの人が日帰りで、泊まる人が減ったので、町と観光業にとっては、ありがたくはありません」とのご返事でした。

 たしかに、そうですね。
片道8時間もかかれば、当然1泊でしょう。
2泊になるかもしれません。
また、時間を節約するには夜行寝台などといった選択肢もありました。
そんなのんびりとしたのどかな「旅」は、ある意味心安らぐ時間でもありました。

 その上、昔は携帯電話がありません。
遠方に出張に行くときは、その時間がある意味、自由な時間でした。
仕事からまったく解放される時間でした。
いまは、どこにいても携帯がつながります。
本当に便利です。便利すぎます。
いつでも仕事ができるようになりました。
いつでも、どこでも仕事をせざるを得なくなりました。
そして、移動手段も高速化し、息つく時間もなく、働ける世の中になりました。

ストレスは人の体をむしばむ

 最近は、僕の外来にも、心の病で漢方を求めに、また医療相談に来る人も増えました。
以前は、「怠け癖がある人が増えたのでは」と思った時期もあります。
でも、たくさんお話をうかがい、そして困っていることの内容を知り、実際の生活状況がわかりました。

ストレスの多さは、むかしに比べて格段に増加しています。
高速な交通手段がなく、携帯電話もないひと昔前は、また幸せな時でもあったのです。

 ストレスは人の体をむしばみます。
体に障害を及ぼすようなストレスは避けるべきです。

一方でストレスに強い体を作る努力も大切です。
ストレスに強い体を維持する努力も大切です。

人は少し休むとまた少々のストレスには打ち勝てる体が、心が回復します。

ところが、そんなに休む時間が削られたり、なくなると、ちょっとしたストレスでも体は壊れます。
上手にストレスを発散する時間を持てる人、そんな能力がある人は、相当なストレスを受けても、それを受け流せるので滅多に心の病気になりません。
羨ましい限りです。

 しかし、いくらストレスに強い人でも、限界を超えると壊れます。
ストレスで病んだり壊れそうな体には、なにより休養が大切です。

そして休養は、ただ単なる時間の経過だけでも、過度なストレスを減らすことができます。
そして休息は、ストレスに強い体を作ることができます。
適度のストレスを楽しみ、そして適度の休息でストレスにより強い体を作りましょう。

壊れる前に休養を取ろう

 昔の携帯もなく時間がかかる出張は、ある意味、ストレスを減らす絶好の機会であったかもしれません。
お弁当とおつまみとビールを買って寝台列車に乗り込み、レールと車輪が奏でる音を聞きながら、闇の中に浮かび、そして過ぎゆく光を眺めることは、心落ち着く瞬間でもありました。

 そんな時間がなくなったのですね。
ストレス社会といわれる所以ゆえんです。
ストレスに強い体を作るにも限界があります。
壊れる前に上手にしっかりと休養をとりましょう。
体の休養とともに、心の休養がなにより大切です。

 人それぞれが、少しでも幸せになれますように。
posted by 小だぬき at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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