「こだわり」が強すぎる……
日常生活に支障をきたす強迫神経症
2014年12月5日 20時45分 All About
毎日、何かしら同じ事をする傾向の有無には大きな個人差がみられます。
「毎日同じ事を繰り返すだけなんてとんでもない」と思う方もいれば、「毎日同じ事を繰り返していた方が心が落ち着く!」という方もいると思います。
それ自体はその人の個性で、精神医学的にあれこれ言う事ではないでしょうが、もし「毎日これをしないとダメ!」という考えに強く駆られるのであれば、強迫観念や強迫行為のレベルになっている可能性もあります。
そこで日常生活に潜む可能性がある強迫的な症状とその注意点を詳しく解説します。
■物事の手順にはどのくらい気を使いますか?
物事の手順にこだわりやすい方は少なからずいるでしょう。
例えば、歯磨きは必ず下段の左側から始まり、次に右側、そして上段……と決めている人がいたとします。
うっかり順序を間違えて磨きはじめた後、それに気付いた時が問題です。
そのままいつもと違う順序で歯磨きを完了させた場合、心が落ち着かなくなってしまうことがあります。
そしてその気持ちを直したい気持ちに駆られ、仕切り直しでいつも通りに磨き直した場合、そのこだわりは少々強迫的だと言えるでしょう。
「強迫行為」は精神医学の用語で、何か物事を行なう際、その手順あるいは方法に強いこだわりがあり、ある程度気が済むまでそれを繰り返す傾向のことを言います。
例えば外出時、家のドアを施錠したか不安になり、ドアのノブを何回確認しても不安を完全に拭いきれず、その確認行為を延々と繰り返してしまう……といった事も起こり得ます。
こうした強迫行為は不合理なほど物事に手間を掛けてしまう事になり、日常生活の効率を大きく低下させる可能性があります。
もし生活に必要な事をこなせなくなっていたら、「強迫神経症」のレベルになっている可能性も考えられます。
■その原因は単にストレス、それとも?
強迫行為の問題点はその不合理性にありますが、人は必ずしも常に合理的に行動するとは限りません。
例えば、自宅から遠いA店でバーゲンがある事を知ったとします。
急にその店に行きたくなってしまい、そのままその店に行ってしまった。
でも交通費を考慮すれば、実は近くのB店に行った方が安上がりで、時間もセーブできていた……といった事は少なからずあるかもしれません。
もっとも、経済的には不合理でも、その時の気分で自由気ままに行動した方がストレス解消には良い場合もあります。
実際、ストレスは私たちの行動に不合理性を生み出す大きな要因です。
仕事のプレッシャーが強くなると、すぐ仕事に取組むべきだと分かっていても、心理的になかなかそれに取り掛かれない人もいるでしょう。
例えば、とりあえずインターネットのブラウザーを開いてしまう。
普段閲覧するサイトを一通りチェックすると、トイレに一旦席をはずす。
そして戻ってくると、今度は机の上を眺めて、資料の位置やコンピューターの位置など、気になる部分に満足してから、ようやく仕事に取り掛かる……。
ここまでで既に20分以上経過している場合、他人の目から見れば非効率なのは一目瞭然でしょうが、本人は意外とそれを意識していないかもしれません。
場合によってはそれが習慣化して、仕事を始める前に必要な儀式になっていたら、そうなっている自分をはっきり認識しておきたいものです。
■生活の能率向上のため、強迫性をチェックしていきましょう!
「こうした強迫性は自分には関係ない!」と思われた方も多いかもしれませんが、強迫性は個人差が大きい、人のパーソナリティの特質の一つと見る事もできます。
個人個人の生活に現われている、その特質のレベルは抽象的になりますが、スペクトラム(spectrum:連続体)を形成します。
その一方の端は強迫性とは正反対で、物事に無頓着、日常生活に秩序がまるで欠けているようなレベルに。
そして、もう一方の端は精神科(神経科)を受診され、病状に応じた治療を受ける事が望ましい強迫神経症のレベルになるでしょう。
多くの方は、このスペクトラム上、この2つの端から離れた、中央の正常範囲のレベルに位置するでしょうが、それは日常生活に顕著な支障をきたさないという意味での正常範囲で、強迫的な行為は物事の能率をある程度低下させる事は注意しましょう。
もし最近時間が足りない! と悩んでいる方は、ただ単にやるべきことが多いだけかもしれませんが、物事への取り組み方に何らかの不合理性が潜んでいないかを確認したいところです。
自分の思考や行動は、必ずしも自分の認識通りとは限りません。
今回解説しました強迫行為などの不合理性は、程度には個人差がありますが、誰にでも潜んでいる可能性がある事は是非認識しておきましょう。
【メンタルヘルスガイド:中嶋 泰憲】
他人に迷惑をかけないストレス発散であってほしいですね。