余録:
「消費税は逆進性が強い」と言われる…
毎日新聞 2015年01月25日 01時30分
「消費税は逆進性が強い」と言われる。
広く薄く税を納めてもらい、社会保障を充実させようという目的だが、恩恵を受けるはずの低所得層ほど重税に苦しむという指摘である。
生活必需品への出費は同じでも、家計全体の額が小さく、負担率が高くなるからだ
▲「刑罰にも逆進性がある」と説くのは浜井浩一・龍谷大学教授である。
日本の刑事政策は1995年の地下鉄サリン事件を機に厳罰化が進んだ。
「治安が悪化している」との声に応えるためだった。
だが、厳罰化の結果、刑務所への収容が増えたのは凶悪犯ではなく、高齢者や障害者など社会的弱者だという
▲殺人などの凶悪犯罪は戦後ほぼ一貫して減少してきた。
一方、万引きや無銭飲食はあまり起訴されなかったが、厳罰化で起訴の対象が広がり、量刑も引き上げられたため、こうした微罪を繰り返す高齢者らの収容が増えたのだ
▲統計上、多くの国で刑法犯の約7割は若者層が占めるが、日本は若者の刑法犯が減少し、高齢者ばかりが増えている。
世界的にも珍しい現象が犯罪学の分野で注目されているが、それは厳罰化が引き起こした「逆進性」のせいだ
▲消費税の逆進性を緩和するため、生活必需品の税率を下げる「軽減税率」が多くの国で導入されている。
刑罰についても、高齢者が犯す微罪では刑務所に代わる自宅拘禁や、医療や福祉機関による矯正がイタリアをはじめ各国で取り入れられている
▲ひもじくておにぎりを万引きする高齢者に必要なのは福祉や地域の支え合いだ。
警察や裁判所や刑務所が多大な時間と人的コストをかけて厳罰を科す意味はどのくらいあるのだろう。