香山リカのココロの万華鏡:
若者よ気軽に相談を
毎日新聞 2015年02月17日 首都圏版
大学入試のシーズンがやって来た。
私は大学に所属しているので入試の監督をすることがある。
カゼの多いこの季節、マスクをしている受験生も目立つ。
咳(せき)をするなど調子が悪そうな人もいる。
監督のマニュアルには「体調不良、トイレなどの場合は手をあげて知らせてください」とあり、開始前に毎時間、読み上げる。
試験時間中、監督は誰か手をあげないか、と注意を払う。
とはいっても、こちらをチラチラ見ている受験生がいても、「何かご用ですか」と声をかけるわけにはいかない。
あくまで彼らが手をあげるのを待つだけだ。
ある科目のとき、いかにも体調が悪そうな受験生がいて、こちらも気にしていたのだがなかなか手をあげない。
試験時間の終わり頃になってようやく「おなかが痛い」と申し出たときには、顔色も真っ青だった。
「無理せずにもっと早く言ってくれればいいのに」と思ったが、受験生としてはとても言い出せないのだろう。
そのあと受験生が集うネットの掲示板を見たら、「トイレとの戦いだった」「吐き気がしたけど“ちょっと外に出ていいですか”なんて言えなかった」といった書き込みがけっこうあった。
どうして「ちょっとトイレ」と手をあげてくれないのか。
がまんなど必要ないのだ。
「受験生よ、あまり遠慮したりおそれたりせずに、試験監督になんでも申し出てほしい」と思った。
私たちはそこで怒ったり点数を差し引いたりすることはない。
受験に限ったことではない。
子どもや若者は「おとなに言ってもわかってもらえない」「逆に説教されたり自分が不利になったりするだけ」と思いがちなのではないだろうか。
そして、困っていることや悩みができても、身近なおとなには言わずがまんしてしまう。
しかし、私もおとなになってよくわかった。
おとなは、若い人が頼ってくれたり悩みを打ち明けてくれたりするのを、決してわずらわしいとは思っていない。
それよりも「何か役に立ちたい」と思って、待っているおとなもたくさんいるのだ。
もっと気軽に、まわりにいるおとなに気持ちを話してみてはどうだろう。
ただ、不幸にして最初に話したおとながよく理解してくれない、という場合もあるかもしれない。
そのときはあきらめずに、次の人をさがしてほしい。
そしてもちろんこれから受験という人は、試験時間中のトイレや体調不良での一時退席をためらわず、気軽に手をあげてほしいと思う。
(精神科医)


なんとなく、試験中にトイレとかって言えない
私だけじゃなかったのね(^^ゞ
十倍近い倍率では、トイレに行くより1問でも多く回答したい気分に追い込まれます。
本当はベストのコンディションで挑戦するには 途中でも 申し出る方がいいのですね。