高齢者への虐待 社会で介護を支えよう
2015年2月18日 東京新聞「社説」
高齢者への虐待件数が増えている。
厚生労働省の調査によると、二〇一三年度は前年度比4%増の一万六千件だった。
認知症に関する知識の普及や、介護を担う家族への支援が急務だ。
調査は高齢者虐待防止法に基づき〇六年度に開始。
一三年度は過去三番目に多かった。
内訳は、特別養護老人ホームなど介護施設の職員による虐待が二百二十一件、残りが家族や親族などによるものだった。
施設職員による虐待件数は前年度比四割増と急増しており、被害者の八割超が認知症の人だった。
死亡したのは二十一人で、いずれも家族らによる虐待が原因だった。
職員による虐待の内容で最も多かったのが殴る蹴るなどの「身体的虐待」で64%。
次いで暴言や無視などの「心理的虐待」、「介護放棄」が続いた。
虐待件数が増加している要因について、厚労省は「市町村の取り組みが進んだことに加え、施設職員の意識の高まりから、虐待が広く拾われるようになったため」と説明。
確かにそれも一因だろう。
だが、発生要因は、施設職員の場合、徘徊(はいかい)や妄想など認知症の症状などの知識不足に次いで「職員のストレス」が多かった。
家族らの場合、最多が「介護疲れ・介護ストレス」だ。
悲劇を防ぐために市町村の取り組みをより強化するべきだ。
調査で、介護保険サービスを受けていると、第三者の目が入るため虐待の深刻度が低いということも分かった。
在宅介護サービス事業者、医療機関、警察などと連携し、未然防止や早期発見に努めたい。
また、虐待する家族はアルコール依存症やうつ病などを患っているケースも多く、家族への支援も求められる。
認知症の人や家族を支援する「認知症サポーター」は現在五百八十万人が登録しているが、地域での見守りネットワークをさらに充実させたい。
認知症の人は二五年に約七百万人になるという。
心配なのは、四月から介護報酬が引き下げられ、認知症グループホームを含め軒並み報酬減となることだ。
事業者が撤退したり現場の人手不足がより深刻になることが懸念される。
四月から実施される介護保険サービスのカットで介護を担う家族の負担も増大する恐れがある。
政府は先月末、認知症対策の総合戦略で「認知症高齢者にやさしい地域づくり」を宣言したが、一連の見直しは、その理念に逆行している。

