酒の安売り規制
消費者の利益を損なわないか
2015年04月26日 01時24分 読売新聞「社説」
酒の安売りを規制するため、自民党は酒税法などの改正案を今国会に提出する方針だ。
財務相が、酒類販売の「公正な取引基準」を新たに定め、業者が従わない場合には、販売免許を取り消せるようにする。
量販店などの安売りから、「街の酒屋さん」を保護する狙いという。
だが、免許取り消しを恐れ、経営努力による適正な値引きまでしなくなる懸念は拭えない。
過剰な規制強化で、消費者の利益が損なわれないだろうか。
慎重に見極める必要がある。
酒の販売は、1990年代以降の規制緩和で大手スーパーや量販店などの参入が相次ぎ、競争が激化した。
一般の酒店はこの20年でほぼ半減し、全国で約5万5000店になっている。
追い込まれた中小販売店の組合などが安売り規制の強化を求め、自民党が議員立法で対抗措置を講じることになった。
新しい取引基準の詳細は決まっていないが、原価を下回る安値販売などを禁じ、これを守らない業者名の公表、罰金、免許取り消しへと、段階的に重い処分を科す内容になりそうだ。
もちろん、採算を度外視した安値攻勢で大手業者が周辺の酒店を廃業に追い込むといった、不当な販売は看過できない。
ただ、こうした不当廉売については、独占禁止法に基づいて公正取引委員会が摘発する仕組みがある。
国税庁も2006年に策定した取引指針で、公取委との連携強化などを打ち出している。
まずは、既存の制度をしっかり機能させることが重要だ。
量販店などの攻勢を受けているのは酒店だけではない。
なぜ、酒に限って独禁法とは別の廉売規制が必要なのか。
筋の通った説明がなければ、酒以外の小売店や消費者はとても納得できまい。
酒店は、コンビニやネットスーパーなどとの競争でも劣勢に立たされている。
求められるのは、大型店にない個性的な品ぞろえなどの創意工夫だ。
法律で量販店などの安売りを制限しても、業績改善の効果は限られよう。
新たな安売り規制は、自民党などが昨年に議員立法で実施したタクシー業界の参入規制強化と同様に、競争制限的な政策だ。
規制緩和を推進して民間の自由な競争を促し、経済活性化を目指すことが「アベノミクス」の本筋と言える。
自民党は、安易な業者保護政策に走り、成長戦略の路線を踏み外してはならない。
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