2015年10月09日

「介護離職ゼロ」 説得力欠く首相の方針

「介護離職ゼロ」 
説得力欠く首相の方針
2015年10月8日 東京新聞「社説」

 これまでやってきたことと、新方針が、あまりにちぐはぐではないか。
安倍晋三首相が打ち出した「介護離職ゼロ」のことだ。
具体的な工程を示してもらわなければ、首相の言葉に説得力はない。

 親などの介護を理由に退職する人は年間十万人前後に上る。
働き盛りの四十代、五十代が多い。

 介護離職の問題は深刻だ。
退職で収入が途絶え、生活が立ち行かなくなるケースも少なくない。
待ったなしで取り組むべき課題であり、方向性には賛同する。

 だが、本当にやる気があるのかと首をかしげざるを得ない。
というのも、首相は就任以来、一貫して介護保険サービスの縮小を進めてきたからだ。

 四月から特別養護老人ホーム(特養)の新規入所者は原則、中重度の要介護者に限定した。
八月からは、一定の所得がある人の利用者負担を従来の一割から二割に引き上げた。
これにより、介護サービスの利用を手控える家族が増えることが危惧される。

 加えて、四月には保険から個々のサービスに対して事業者に支払われる介護報酬を、全体で過去最大に近い2・27%引き下げた。
この影響は出ている。
東京商工リサーチによると、今年一月から八月の介護事業者の倒産が五十五件となり、過去最多だった昨年の年間倒産件数を上回った。

 一連の施策をふり返ると、首相の発言はにわかには信じ難い。

 特養の入所を待つ待機者数は、二〇一三年度で五十二万人に上っている。
要介護者数は二五年度には約八百三十万人と、一四年度と比べ四割増えると推計される。

 首相は介護施設の整備を進める方針を示した。
介護保険は〇〇年度のスタート時から費用抑制のため「施設から在宅へ」という大方針があった。
首相の新たな方針は、それを覆すものともとれる。

 私たちは特養など施設を増やすべきだと主張してきた。
介護離職や「介護難民」を減らすためだが、それには財源が必要だ。
投入する財源額を示すべきだ。

 と同時に、介護報酬引き上げを検討すべきだ。
事業者の倒産を防ぎ、人手不足が深刻な介護職員の待遇を改善するためだ。

 加えて、介護と仕事を両立させるための制度充実を求める。
介護休業は現在、最長九十三日間取得できるとされているが、あまりに短いのではないか。

 首相は「介護離職ゼロ」達成を二〇年代初頭としたが、実現までの具体的な方策を語ってほしい。
posted by 小だぬき at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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