野党の選挙共闘
小異残して大同に付け
2017年1月13日 東京新聞「社説」
年内にも想定される衆院解散・総選挙。
「安倍一強」の政治状況に野党はどう臨むべきか。
政権批判の民意集約には、野党候補の絞り込みが必要だ。
小異を残しつつも、大同に付かねばならない。
第二次安倍内閣発足から四年。
昨年十二月の内閣支持率は54・8%と、前回十一月より5・9ポイント下がったとはいえ依然、高水準だ。
自民党総裁としての任期は三月の党大会で「連続三期九年」に延長され、次の総裁選に勝てば、長期政権も視野に入る。
首相にはまさに「わが世の春」である。
しかし、安倍政権の下での国会は、惨憺(さんたん)たる状況だ。
昨年の臨時国会では年金支給額を抑制する法律の採決を、議論を打ち切って強行した。
現行の刑法が賭博として禁じるカジノを合法化する法律の審議も強引に進め、会期を延長してまで成立させた。
さかのぼれば、多くの専門家らが憲法違反と指摘した「集団的自衛権の行使」を認める安全保障関連法の成立も強行した。
今月二十日に召集予定の通常国会では、問題点が多く、過去三度廃案になった「共謀罪」を盛り込んだ法案の成立も目指す。
反対意見に耳を傾けない国会運営がまかり通るのは、与党が衆参両院で圧倒的多数を占めているからだ。
状況を変えるには、野党が選挙で議席を増やすしかない。
昨年夏の参院選で、民進党など野党四党は、三十二の改選一人区すべてで候補者を一本化して選挙戦に臨み、一定の成果を上げた。
暴走する安倍政治に歯止めをかけるため、民進、共産、自由、社民の野党四党は次期衆院選での共闘に向けた協議を急ぐべきだ。
多くの候補者を擁立する民進、共産両党間では二百近くの小選挙区で候補者が競合する。
民進党の支持組織である労働組合の連合では、共産党との共闘に慎重論が根強いが、野党候補が競合したまま衆院選に突入すれば、与党が漁夫の利を得るだけだ。
どうしたら政権批判票を最も多く集約できるのか、という観点から候補者の絞り込みを進めてほしい。
衆院選は政権選択選挙である。
与党側は、野党共闘を「理念も政策も違う選挙目当ての野合」と批判するだろう。
野党の議席を増やし、政権の暴走に歯止めをかけることは共闘の大義に十分なり得るが、主要政策では可能な限り、安倍政治に代わる選択肢を示すことが望ましい。
その努力こそが、野党共闘をより力強いものとする。