2017年02月20日

「町内会」の担い手がますます減りそうな理由

「町内会」の担い手が
ますます減りそうな理由
行政の仕事や責任が
安上がりに「下請け」に
2017.2.19 東洋経済オンライン (紙屋 高雪)

町内会の仕事が多すぎる
 年度の終わりは、団体や組織の役員の交代のシーズン。
町内会も例外ではありません。  
拙著『どこまでやるか、町内会』でも紹介していますが、この「役員の仕事が回ってくる」というのが、「町内会に入りたくない!」という人にとって最大の理由の1つでしょう。
もちろん、町内会にはある程度参加・協力するという人でも、町内会が抱えている仕事の多さに、気がめいっている人は少なくありません。

 町内会が抱える仕事が多すぎる → 仕事が多すぎるために、役員を敬遠される → 役員の引き受け手がいなくなることで、ますます過重負担になっていく――。
 こんな悪循環が繰り返されていないでしょうか。
町内会が抱えている仕事をリストラして、必要最小限のスリムな組織にしたい! と常々悩んでいる町内会は少なくないはずです。

 ところが、行政から回される仕事がますます増えるのではないか……と心配になる動きがあります。

「住民主体の課題解決力」?
 「地域力強化検討会」というちょっと奇妙なネーミングの会議が国にあります。
正式名称は「地域における住民主体の課題解決力強化・相談支援体制の在り方に関する検討会」といって、厚生労働省によって立ち上げられた有識者の集まりです。
 この会議が、昨年(2016年)12月26日に「中間とりまとめ」という報告を出しました。
 それを読むと、「介護、子育て、障害、病気等にとどまらず、住まい、就労を含む役割を持てる場の確保、教育、家計、そして孤立など、いわば『くらし』と『しごと』の全般」を「地域の課題」ととらえ、「他人事」ではなく「我が事」として考えて、地域の住民が主体になってそれらの課題を解決する「地域力」を高めていくことがうたわれています。

 「支え手側と受け手側に分かれるのではなく、誰もが役割を持ち、活躍できる社会」を目指すとされています。
そして「地域には今まで存在しながら光が当たらなかった宝(「知恵」「人材」「資源」)があることに気づき、それを最大限引き出」した経験が強調されています。

 これはどういう意味でしょうか。
 生活に困っている家があったら、それを住民ががんばって解決できる力を地域で育てよう。
住民の中で、ときには支えられたり、ときには支えたりしてください。
「予算がない」「人がいない」と嘆くんじゃなくて地域の中をよーく探してください……そんなふうに「説教」されているようにも読めます。

 ちなみに、その中で行政の責任はどうなっているのでしょうか。
結局「安上がり」のサービスにならないか
 まず自治体です。
 報告を読むと、こうした課題解決や相談のための地域団体やヒトのネットワークといった「体制」をつくることに「最終的な責任を持つ」とされています。
あわせて、その体制に関係する人たちが「共通認識を持てるような働きかけをすること」を求めています。

 国はどうでしょうか。
 国がすべき仕事について書かれたところを読むと、「なぜそのような機能が必要なのか、各自治体で丁寧に話し合うような支援をしていくことが必要」とあります。
これだけなのか、と不安になります。

 予算、つまりカネはだしてくれるのでしょうか。
「財源のあり方についても、具体的に検討を進めるべきである」としかなく、具体的なのは「寄附文化の醸成について」という章立てだけです。
 これでは、“住民団体や住民の中にいる人材を組み合わせて、どうしたらいいか話し合わせるのが自治体の仕事” “国はハッパをかけるだけ” “カネは寄付頼み”……そんなふうに読めてしまいます。

この報告の「終わりに」のところには、読んだ人の不安を見透かしたかのように、「『我が事』の地域づくりは、決して地域住民に解決のすべてを委ねることではない」と強調していますが、逆に言えば、「そう読めてしまう」からわざわざ払拭に努めているわけです。

 もっとはっきり言えば、「住民主体の課題解決力強化」というのは、行政がカネもヒトもできるだけ手を引いて、ていよく住民自身が安上がりにやってくれないかなあ、という行政側の「願望」ではないでしょうか。
 その結果、行政がしていた仕事が町内会に「下請け」に出される流れがますます強まるおそれがあります。

町内会などが介護保険の「下請け」?
 その流れを先取りするかのような話が、介護保険の「総合事業」(介護予防・日常生活支援総合事業)です。
 これまで介護保険の中で比較的軽い「要支援」の人たちが受けていたサービスの一部が、ヘルパーでなくてもできるようになります。
ゴミ出し、家事、見守りなどは介護事業所ではなく、「地域住民主体」つまり町内会のようなところでもできるというわけです。

 ところが、この「総合事業」への移行は、2017年4月が期限なのですが、厚労省調査では2016年4月の段階で、移行がゼロ自治体(保険者)の府県が7つもあります。
20市町がある佐賀県もゼロ。
「住民主体でごみ出しや見守りなどきめ細かなニーズに対応したり、利用料を下げたりする新サービスを提供できるのは、7市町にとどまる見通しだ」(西日本新聞2017年2月9日付)。

 福岡市は、住民主体サービスについては「実施しない」としていますが、「従来の7割程度まで報酬を下げた上で、介護事業所による新サービスを提供する」(同)ことにしたために、議会で問題に。
議員から「ある市内のホームヘルプ事業を行っている事業所では、年間で1200万円もの減収になると言われている。
小さな事業所などはこれで閉鎖せざるを得なくなる」と告発され、追及を受けています(同2016年12月16日付)。

 厚生労働省が音頭をとって、町内会をはじめとする「住民主体」の受け皿をつくろうとしたもののうまくいかず、報酬単価を切り下げて従来の介護事業所にやらせようとした自治体では、そのしわ寄せが介護事業所に押しつけられているのです。
 「住民主体の地域の課題解決力アップ!」――そんな美名の下に、行政の仕事や責任が安上がりに「下請け」に出されています。
町内会や地域団体の負担がますます重くなり、そのせいで、いよいよ抱えた仕事に押しつぶされ、後継の担い手が育たないという悪循環に、はまり込んでいないでしょうか。
posted by 小だぬき at 02:07 | 神奈川 ☀ | Comment(2) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
町内の仕事は年に1度回ってくるゴミステーションの掃除よ
Posted by みゆきん at 2017年02月20日 13:25
私は 資源回収のボランティア。

今の町会では 町会費を集めるだけでも一苦労です。
行政が 広報などで町会に持ち込む広報紙配布だけでも大変です。
PTAと町会、今 任意加盟の徹底と役割を見直す時期のように思います。
Posted by 小だぬき at 2017年02月20日 15:06
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