ウラから目線
にんげんだもの?=福本容子
毎日新聞2017年10月16日 東京夕刊
今年こそ彼氏を見つける。
痩せる。お金をためる……。
新年の抱負は大きく、はかない。
実行できないばかりか、今ごろになると何を誓ったかさえ思い出せない。
元は同じ自分の銀行口座なのに、クレジットカードで払う買い物は、お財布から現金を出す場合より、太っ腹になってしまう。
どちらもよくある話なのだけど、こうした人間の行動や心理を経済学と結び付けて、きちんと分析したアメリカの経済学者、リチャード・セイラーさんが、今年のノーベル経済学賞を受賞することになった。
伝統的な経済学は、人が常に合理的に行動すると想定する。
二日酔いになって後悔したりなどしない。
汗水流して稼いだ1万円も宝くじで当てた1万円も同一の価値なのだ。
現実は違う。
特にインフレとかでなくても、2年後に2万円もらえる選択肢と今1万円もらえる選択肢では、半分しかない1万円の方を取ったりする。
目先の得に惑わされ、きつい努力が嫌い。
不完全な人間ならではの行動だ。
そんな人間を上手に正しい道へ促す方法として、セイラーさんは「ナッジ」という考え方を生み出した。
つべこべ言わず、そっと背中を押してあげる優しい誘導策である。
例えば、野菜が健康に良いことを科学的根拠を並べて説明するより、売り場やレストランで、いかにも選んでしまいそうな場所に野菜を並べた方が食べてもらえる。
そんな政策があればいいな。
でも現実は、政治家自身が将来より目先を優先し、他人のお金、借りたお金を痛みを覚えることなく使う、というセイラーさんの世界の不合理な人間を地でいっている気がする。
さて、セイラーさんは相田みつをさんの大ファンだって。
「日経ビジネス」誌が8年前に掲載したインタビューにある。
好きな言葉は、「にんげんだもの」。
コンピューターのようにはいかないし、失敗を繰り返しては立ち止まる。
人の心を愛しているところが、彼の行動経済学と通じるようだ。
とはいっても、国をリードする指導者が言い訳に使うというのはいけない。
公約に書いたけど実行できない。
「にんげんだもの」。
財政再建は、「そのうち そのうち べんかいしながら日がくれる」。
(論説委員)
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