牧太郎の大きな声では言えないが…
「いざなぎ超え」のうそ
毎日新聞2017年11月21日 東京夕刊
前回、政府系の「商工組合中央金庫」(商工中金)の不正な低利融資について「原因は過剰なノルマ(業務目標)」と書いたら、知り合いの銀行マンが「商工中金の罪はまだ軽い方だぜ」と言ってきた。
もっと罪深いのは銀行カードローン!と言いたいらしい。
6月、この欄で「消費者金融と大差ない高金利の銀行カードローンのわな」を書いた。
9月になって、やっと金融庁は大手3銀行などの無担保融資、カードローンの実態を立ち入り検査。
銀行側は「短時間審査」の看板を下ろし、カードローンのテレビCMを自粛するなどしているが、彼によると「ノルマは変わっていない」というのだ。
銀行は、預金金利と企業に貸し出す金利との「利ざや」でもうける。
ところが、日銀の黒田東彦総裁は市場に大量のカネを流すことで、円安に誘導するゼロ金利政策。
低金利が長期化して、本来の融資業務では利益が出ない。
銀行は「金利上限が14%程度」のカードローンで稼ごうとする。
「商工中金の不正は許せないが、結果的に金利を下げ、お客さんに喜ばれる面もあった。
だけどカードローンはまるで、客の生き血をすする高利貸みたいだ」
大銀行のビジネスモデルが崩壊しようとしている。
みずほフィナンシャルグループは1万9000人の従業員削減を打ち出し、
三菱東京UFJ銀行は約500ある「フルバンク型」店舗を半減させるという。
「俺だって、リストラの対象なんだ」と彼。
もっと気の毒なのは「年金生活者」だろう。
これまで、個人の金利収入は年間30兆円以上あった。
サラリーマンは退職金を銀行に預けていれば、年金と金利の付いた預金の“切り崩し”で生活ができた。
それが「異次元緩和」とかいうゼロ金利政策で、多くの高齢者が大ピンチである。
新聞、テレビは「2012年12月から始まった景気拡大の期間が58カ月になり『いざなぎ景気』を超えた」と浮かれているが、冗談じゃない!
以前、サラリーマンの世界で「高給取り」と嫉妬された銀行員でさえ、リストラにおびえ、やがてくる「不安な年金生活」におびえている。
一番、罪深いのは「いざなぎ超え」のうそに加担しているメディアではあるまいか?
(客員編集委員)
スタイルより暖かさを優先して厚着してくださいね。
雪は スキー場やダム・公園にのみ降って欲しいのに・・。
これから4月の頭までの長期戦。ファイト!!と応援することしかできず ごめん。