熱血!与良(正男)政談
自民党のレベルが分かる
毎日新聞2018年2月7日 東京夕刊
与党の質問時間を増やしたところで、ほとんどマイナスにしかならない。
それが改めて分かったと言うべきだろう。
通常国会が始まって2週間余。
与野党の質問時間配分が変わった衆院予算委員会の質疑に私も注目していたけれど、見ての通りの有り様だ。
自民党議員から「首相を大いに応援していきたい」等々の礼賛型質問(応援演説)が相次いでいるだけではない。
同党の堀内詔子氏は予定の質問時間(45分)を1分ほど残して切り上げようとして野党からヤジを浴び、おたおたする姿をさらけ出した。
私は本欄で、昨秋の特別国会で登壇した自民党の岸田文雄政調会長の代表質問を評価したことがある。
だから今度も少し期待していたのだ。
しかし、その岸田氏も財政再建の重要性を説いたものの、安倍晋三首相は例によって5年間の実績をアピール。「経済再生なくして財政健全化なし」と力説する首相に、押し切られるだけだった。
これを「論戦」とはとても言えない。
質問時間配分に変更はなかった参院予算委の審議にも驚いた。
極めつきは、やはりこれだろう。
安倍首相が韓国・平昌(ピョンチャン)冬季五輪の開会式に出席することについて、自民党の宇都隆史氏は「本当は(首相は)行きたくないとも感じる。行くのをやめようと思ったら、インフルエンザに罹患(りかん)する手もある」と首相に持ちかけた。
何と「仮病のすすめ」である。
出席に反対している人たちの本音でもあるだろうし、この議員が笑いを取ろうとしたのも間違いないだろう。
実際、安倍首相も笑っていた。
だが、ことは日韓関係や北朝鮮問題に直結する深刻な課題だ。
こうしたやり取りが堂々と、いや軽々しく国会の場で交わされるところに、怖さや恐ろしさ、そして悲しさを感じたのは私だけではないと思う。
そう考えていくと、与党質問に注目することで、ただ一つ、プラスの効果があるとすれば、今の自民党議員のレベルがどの程度か、よく分かることかもしれない。
私からすれば、自民党執行部がなぜ、「恥ずかしいし、選挙にもマイナスだから、直ちに野党に質問時間を返せ」と言い出さないのか、不思議なほどだ。
(専門編集委員)