2018年02月14日

うつ病と上手につき合う

香山リカのココロの万華鏡
うつ病と上手につき合う
毎日新聞2018年2月13日 東京都内版

 ときどき受ける質問に、「うつって治りますか?」というものがある。
「もう少しくわしく教えてください」と言うと、だいたい、次のような話をされる。

 自分や家族、友人がうつ病で薬を飲んでるのだが、まだ落ち込みが続いて元気が出ない。
いつかこれがもとに戻って、薬や通院も必要なくなるのだろうか。
すっきりさわやかな気持ちになれる日があるのだろうか。

 私はこんな答えを返すことが多い。  
「元気にはなると思いますよ。
薬がいついらなくなるかは、人によって違いますね。
そして、“すっきりさわやか”ですけれど、うつ病じゃなくても、なかなかそういう気分にはなれないのではないでしょうか

 つまり、うつ病は適切な治療を受けたり、月日がたって波が去ったりすると、必ず回復する。ただし、それまでにどれくらいの時間が必要か。
それは予想できず、残念ながら再発してしまうこともある。
だから、完全に薬がいらなくなるかどうかも、なんとも言えない面があるのだ。

 ただ、「うつ病が治る」とは、必ずしも元気はつらつ、毎日が楽しくて仕方ない、ということではないはずだ。
 たとえば、私はうつ病ではないと思うが、どうしてもやる気が出ずにダラダラする日がある。家族と口げんかをして落ち込むこともある。
 気持ちに波があったり、ゆううつになってクヨクヨしたりすることは、人生につきもの。
だから、それをもって「まだうつ病が治っていないんだ」と思う必要はない。
 それに、薬を飲みながらでもふつうの生活ができるなら、その時点で「うつ病はある程度、おさえ込んだ」と思ってよいのではないか。
世の中には、血圧や血糖を下げる薬を飲みながら、自分を病気だと意識せずに働いたり、遊んだりしている人がたくさんいる。

 うつ病も同じように「闘って克服する病」と考えずに、「上手につき合っていく仲間」くらいに考えてはどうだろう。
 うつ病が完全に治らなくても、楽しいことはいくらでもある。
気分が完全に明るくならなくても、それなりに生活することもできる。
薬を飲みながらでも、友人に会ったり、旅行に行ったりすることもできる。

 うつ病をやっつけてやろう、と思いすぎなくても、だいじょうぶ。
「治りますか?」と心配そうに尋ねる人には、そう返事をしたい。
     (精神科医)
posted by 小だぬき at 12:00 | 神奈川 ☀ | Comment(4) | うつ病について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
雪が融けるの待つわ^^
Posted by みゆきん at 2018年02月14日 12:46
雪の被害が 少なるといいですね。
あと2ケ月の辛抱。
春が確実に近づいています
Posted by 小だぬき at 2018年02月14日 14:39
悟りを開いてないのだから、人間はみ〜んなこころの病気をもってますね。怒り(嫌だとか暗い感情)欲(もっと欲しい、執着)無知(真理がわからない、智慧がない)。
人間は誰でもみんな躁・鬱どっちももってます。まあ、みんな病気なんだから、完治は悟りを開くってことになるし、あんまり気にしなくていい。仏教で瞑想したりすれば(歩く瞑想とか簡単でおすすめ)楽になるかも。仏教的な思考の仕方に変えれば、かなり楽になるんじゃないかとわたしは思ってます。(え?それがむずかしいって?^^;とりあえず、試しにやってみるとか…)
仏教の勉強はとても楽しいです。
(香山さん、スマナサーラ長老と対談した本を出してますね)
Posted by まる at 2018年02月14日 19:50
今。そして明日、何が起こるかわからないからこそ 不安・ストレスは ある程度覚悟ですね。
まるさんのように「仏教」の学習によって 心身を見つめ鍛えることも 大切ですね。

私は「葬式仏教」ですが、曹洞宗の禅の思考法、瞑想を取り入れていきたいと思います。
Posted by 小だぬき at 2018年02月14日 23:01
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]