2018年02月25日

102歳の自殺 原発事故のもつ罪深さ

102歳の自殺 
原発事故のもつ罪深さ
2018年2月24日 東京新聞「社説」

 福島第一原発事故による強制避難を前に百二歳の男性が自殺した。
福島地裁が東京電力に対し遺族への賠償を命じたのは、事故との因果関係を認めたからだ。
原発事故の罪深さをあらためて思う。

 福島県飯舘村。
農家で生まれた男性は長男で、尋常小学校を出たあと、父母とともに農地を開拓した。
牛馬を飼い、田畑を耕した。葉タバコや養蚕も…。

 次男の妻は共同通信に対し、「年を重ねてからは老人会で温泉に出掛け、地域の祭りでは太鼓をたたいて楽しんでいた」と答えている。
九十九歳の白寿を祝う宴には、村中から百人近くも集まったともいう。
そのとき、「大好きだった相撲甚句を力強く披露した」とも次男の妻は語り、忘れられない姿となったという。

 二〇一一年。原発事故が起こり、飯舘村が避難区域となると知ったのは四月十一日である。  

「やっぱりここにいたいべ」
 男性はこうつぶやいたという。
両手で頭を抱えるようなそぶりで下を向いた姿を見ている。
二時間もテレビの前で座り込んでいた。

 次男の妻は「避難指示はじいちゃんにとって、『死ね』と言われるのと同じだった」と受け止めている。
確かにそうだろう。
 福島地裁の判決も、男性の百年余に及ぶ人生を語っている。

 <結婚や八人の子の誕生と育児、孫の誕生を経験し、次男の妻、孫と生活した。
村の生活は百年余りにわたり、人生そのもので家族や地域住民との交流の場だった

 だから、避難は男性にとり、過酷なストレスとなる。
科学的に言えば、降った放射性物質セシウム137の半減期は約三十年。
避難は長期にわたるのは必至で、これも耐えがたい苦痛である。

 「ちいと俺は長生きしすぎたな」と避難前にこぼした。
判決は「不自由な避難生活の中で家族に介護という負担をかけるのを遠慮したと認めるのが相当」と述べた。原発事故と避難が男性を押しつぶすストレスを与えた。そして、首を吊(つ)って自殺したのだ

 原発事故での自殺をめぐる訴訟で東電への賠償命令はこれで三件目になる。
一方、東日本大震災や原発事故の関連自殺者は厚生労働省調べで一七年までに、福島県は九十九人。
岩手県や宮城県のほぼ倍だ。
 政府は原発再稼働の政策を進める。
だが、原発事故という取り返しのつかない罪をこの判決は、われわれに思い出させる。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 | Comment(4) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私もこれを読んで泣いた
Posted by みゆきん at 2018年02月25日 14:03
まだまだ被ばく線量の高い土地があり、帰還どころか立ち入り禁止地域も残されています。
常磐線の磐城より北は、未だに放射線線量計でのモニタリングが続けられています。
政府は 北の核ミサイルの脅威を強調しますが、東北に縁のある者には、福島の原発の脅威の方が切実です。
生まれ育った土地・地域を 理不尽な「災害」で失った悲しみは 想像を絶するものでしょうね。
核の脅威をいうのであれば、全国の原発廃炉が最優先課題ですね。
特に青森県は 原発・貯蔵施設・再処理施設などの密度が日本一の地域。
知事・市長には、これらの危険を引き受けている以上、除雪費用を含めて助成金を多く配分するよう国に働きかけて欲しいものです。
Posted by 小だぬき at 2018年02月25日 15:30
小だぬきさん

原発...辛いです。
でも、政府は安全だからって他の原発再稼働したのでしょうね。九州にいたせいか、川内、玄海原発再稼働には驚きましたが。成田に住む方が、関東は怖いって鹿児島に引っ越した話を聞いて鹿児島も怖いよって言ってしまいました。

役所の人の名誉の為に一言、私は支援受けすぎ、もうヘルパーさん要らない、大丈夫って聞かない私に、家まで来て、今の貴女には必要な支援。これは、ちゃいね家の家庭環境が大変だから。ましてや、子供達の進路を決める時悪くなるから、今支援は必要って皆言ってるから、お願いだからやすんで。って言う熱い市役所の担当さんです。もう6年経つから、もうすぐ異動するかな?警察署まで迎えに来てくれました。私は人に恵まれています。小だぬきさん、本当にありがとうございます
Posted by ちゃいね at 2018年02月25日 23:02
ちゃいねさんへ
成田市の福祉は 支援者・援助者に寄り添っていることがわかりホッとしました。
ちゃいねさんが 支援・援助を「施し」ではなく「必要」と 自分を客観視できるかが課題ですね
「障害」のある今、緩解のためにも プロの助言・支援を素直に受け入れることが大切です。
わんさん、子ども達、ちゃいねさんの「今」は、相当シンドイ困難の中にあると思います。
まだまだ「自己責任」「母親・妻」としての呪縛にとらわれているようです。
生育過程や看護師体験が 「真面目さ」の主因でしょうが、「できないときはできない」「混乱するときはプロに相談」「完璧な人なんていない」「右往左往しながら生きている」ことを 恥ずかしいなどと思わないことです。
福祉課の異動情報は気になる所ですが、申し送りはしっかりとするはずです。
心の平穏が戻った時に ちゃいね家は 福祉の恩返しになるのです。
それまでは、役所・病院・服薬の支援が必要と割り切り
日々に臨んでください。
「真面目さの羅針盤」が「自己批判」「自己嫌悪」におちいらないように 「障害に対峙する、現状を認め、改善を模索する」ように 修正していってくださいね。
「明けない夜はない」「止まない雨はない」を信じて かめの歩みに思えても 諦めずに過ごしてください。

4月13日に生まれた 「患者友の会」小だぬきより。
Posted by 小だぬき at 2018年02月26日 08:48
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