2018年06月21日

がん見落とし 患者には到底納得できない

がん見落とし 
患者には到底納得できない
2018年06月20日 読売新聞「社説」

 患部の画像の細部に目を奪われ、重要な病巣を見逃した。
患者の全身を診る、という原則が疎おろそかになっていないか。

 千葉大医学部付属病院で、がんの診断ミスが相次いでいたことが判明した。
 病院の調査によると、2013年以降、コンピューター断層撮影法(CT)検査などの画像に映った患者9人のがんを見落としていた。
うち4人については、その後の治療内容に影響が及んだ。
 担当医が、検査画像の中で、患者の主症状に関連する部分にしか注意を払っていなかったことが原因だという。

放射線診断専門医と連携して、周りの臓器までよく見ていれば、もっと早い段階でがんを発見できたかもしれない。
 典型的なのは、昨年12月に死亡した60歳代の女性の例だ。
炎症性腸疾患の経過観察のため、13年6月にCT検査を受けた。
画像を診た専門医は、腎がんが疑われると画像診断報告書に記したが、担当医は見落とした。
 昨年10月に別のCT検査で腎がんが判明したが、既に手術はできない状態だった。

 進歩した診断技術が有効活用されていない。
患者側にとっては見過ごせない事態である。
 千葉大病院は、厚生労働省が認めた特定機能病院だ。
高度な医療を提供する能力を有するはずだが、担当医の意識や診療体制に問題が多いと言わざるを得ない。  外部調査委員会は今月、診療科と放射線診断専門医の連携が不十分だった、と指摘した。

専門医からの画像診断報告書を診療科が確認するルールが存在しない点を批判したのも、もっともである。
 千葉大病院は7月から、再発防止策を強化する。画像診断センターを新設し、専門医を増員する。
担当医が患者とともに画像診断報告書を確認する制度も始める。
着実に実行してもらいたい。
 他の医療機関でも同様の見落としが相次ぐ。
千葉大病院のケースは氷山の一角である。
厚労省は昨年11月、安全対策を徹底するよう全国に通知している。

 日本には、世界有数と言われるほど多数のCT検査機器が導入され、撮影数もトップクラスだ。
 CT検査をすれば、何枚もの画像が得られる。
小さな影も映し出される。
それが病巣かどうか、評価できる専門医は足りない。
 画像検査と診断を専門とする医療機関も増えている。

多数の患者を抱える大学病院などは、画像診断の外部委託を取り入れるなど、業務の効率化を検討すべきだ。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☔ | Comment(2) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
今までどんだけのひとが見落としで亡くなったろう。
Posted by みゆきん at 2018年06月21日 13:55
医療だけは 病院・医師・看護師を信じなければならないのが患者の立場。
医療が「当たり外れ」の博打のような信用なしでは困りますね。
Posted by 小だぬき at 2018年06月21日 15:21
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