国会会期延長
「悪法」を押し通すのか
2018年6月21日 東京新聞「社説」
国会が三十二日間延長された。
安倍政権が重視する「働き方」や「カジノ」法案などの成立に万全を期すためだという。
国民への影響が懸念される「悪法」ぞろいだ。押し通すのは強引ではないか。
毎年一月に召集される通常国会の会期は百五十日間。
国会法の規定により一回だけ会期を延長できる。
今の通常国会はきのう会期末を迎えたが、政権側は七月二十二日まで延長することを決めた。
安倍晋三首相は今年一月の施政方針演説で、長時間労働の解消や雇用形態による不合理な待遇差是正など、働き方「改革」を断行すると強調。
きのうの山口那津男公明党代表との党首会談では「働き方改革国会とうたってきたので、法案成立を図りたい」と、会期延長の理由を説明した。
国会は国民の代表たる議員同士が、国民の暮らしをよりよくする政策について議論し、行政を監視する場である。
必要なら会期を延ばして議論を続けるのは当然だ。
しかし、法案に問題点があり、野党がそれを指摘しているにもかかわらず、政権側が強引に成立させるための延長だとしたら、直ちに賛同するわけにはいかない。
「働き方」関連法案は、年収の高い専門職を労働時間の規制から外す高度プロフェッショナル制度(高プロ)の創設を含み、「残業代ゼロ法案」とも指摘される。
審議でも過重労働の懸念は払拭(ふっしょく)されず、制度導入に向けた厚生労働省による専門職からの聴取のずさんさも明らかになった。
待遇差是正は急務でも、高プロ創設と一括提案した政府の手法には違和感を覚える。
衆院に続いて参院でも採決を強行しようというのか。
カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法案も同様だ。
刑法が禁じる賭博を一部合法化する危険性や、ギャンブル依存症患者が増える恐れが審議で指摘されたにもかかわらず、与党は十九日、衆院を強引に通過させた。
共同通信の世論調査では約七割がIR法案の今国会成立の「必要はない」と答えた。
慎重な世論をなぜ顧みないのか。
自民党が提出した参院定数を六増する公職選挙法改正案は撤回し、与野党間の再協議を求めたい。
「一票の不平等」是正の必要性は認めるが、比例代表に「特定枠」を設けて合区対象県の候補者救済を図るのは党利党略が過ぎるからだ。
会期延長により、森友・加計両学園をめぐる問題の追及機会は増える。
国政調査権を駆使して事実解明に努めるべきは当然である。