高齢者に死をもたらす
「熱中症」の甚大リスク
まずは週1度の親への電話を2回以上にしよう
2018年07月04日 東洋経済
梶 葉子 : 医療ジャーナリスト
熱中症が起こりやすい季節が到来した。
昨日(7月3日)には、熱中症の疑いで埼玉県の76歳男性が亡くなったことが明らかになった。
国を挙げての啓発活動が功を奏し、熱中症による重症化率・死亡率は減少傾向だという。
だが、その中で高齢者の死亡率・死亡者数だけは、飛び抜けて高い。
そこから見えてくるのは、超高齢社会、老々介護、孤立、貧困など、今の日本社会の現実そのものだ。
高齢者の死亡者数は
若年〜壮年者の数倍
熱中症に詳しい帝京大学附属病院高度救命救急センター長の三宅康史教授による調査では、2012年以降各年6〜9月の熱中症の死亡者数は、70歳未満に限ってみれば50人前後だ。
ところが70歳以上の人では、一気に300人以上に跳ね上がる。
日本はすでに超高齢社会。
高齢化率は30%に迫り、2025年までには「団塊の世代」が全員後期高齢者になり、百寿者は2017年の段階で6万8000人近くに上る。
その中で、心身が弱り、持病を抱え、在宅で闘病したり介護を受けて生活する高齢者が急増している。
これが熱中症による高齢者の死亡数が際立つ要因の一つだと、三宅教授は考えている。
「基本的に高齢者の熱中症と、スポーツや屋外の肉体労働などでかかる若年〜壮年の熱中症とは、分けて考える必要があります。
若い人たちの場合、特に最近はみんな気を付けて水分や休憩を取るし、もともと体力もあるので、軽症で済む場合が多い。
しかし、高齢者の熱中症は異なります。
暑さで食欲が落ちて脱水気味になった上に、糖尿などの持病が悪化していたり、普段から低栄養だったり、虚弱(フレイル)になっているなど、熱中症以外のさまざまな要素が重なって複合的に起きることが多い。
そのため、重症化しやすく、回復も遅いのです」(三宅教授、以下同)
高齢者の場合、家での日常生活の中にこそ、熱中症のリスクがある。
年をとって体力・気力が弱れば、毎年やっていたことも、だんだんとできなくなってくる。
いつも元気な祖父母や両親も、後期高齢者になり、さらに80歳を過ぎてくれば、子どもや孫には見せないところで、衰えてきているかもしれない。
例えば、夏布団と冬布団の入れ替えができず、冬の羽毛布団をそのまま使っていたり、衣替えまで手が回らず、ヒートテックの下着や厚手のシャツを着ていたりする。
気温の差を感じにくくなって、コタツがついていたり、エアコンのスイッチが冷房に切り替わっていなかったりする。
中には、部屋にエアコンがなかったり、あっても電気代を心配して使わないこともある。
糖尿病、高血圧の高齢者は注意
さらに「老々介護」では、介護者も高齢で認知症があるなど判断力や認知機能が衰え、季節に応じた適切な生活を送ることが難しくなってくる。
炎天下に買い物に行って倒れたり、足が弱って近くのスーパーにも頻繁には行けなくなったりして、食材やペットボトルなどを十分に補充できないこともある。
そういった状態で真夏日や熱帯夜が続くと、慢性的な食欲不振や睡眠不足から少しずつ体調を崩し、熱中症になっていく。
高齢者は日常的に多くの薬剤を服用している場合も多く、そこにもリスクが潜む。
「たとえば、糖尿病がある方は、多尿になるので水分が失われて脱水になりやすい。
末梢神経の感覚が鈍くなるため暑さを感じにくく、上着の脱ぎ着など適切な温度管理が難しい場合もあります。
また、高血圧で服用する降圧薬は、心機能を下げて血圧を下げるため血液の循環が低下し、体内の熱を体表に運びにくくする危険性があるし、利尿薬は当然、排尿を促すので脱水気味になります。
いつも服用している薬剤であっても、熱中症の季節にはリスクになることもあると心得て、十分に注意をすることが必要です」
三宅教授によると、独居や高齢者のみの世帯で、家族とも疎遠で隣近所とも付き合いがないなど孤立している場合、発見が遅れて重症化しやすいという。
特に「老々介護」では、介護者が先に倒れてしまうと被介護者も救われず、同時に複数の死者が出てしまうこともある。
この2、3年、猛暑の中、閉め切った室内で老夫婦や高齢の親子・きょうだいが亡くなって発見されたというニュースを目にすることも、まれではなくなっている。
世の中にこれだけ熱中症の啓発が溢れていても、十分に届かない人や、届いても自分たちだけでは対処が難しい人も少なくないのだ。
週に2回は親に電話して確認を
昔は、冬期に高齢者が亡くなると「残念ながら冬を越せなかったねぇ。
今年は特に寒かったから……」という会話が交わされたものである。
だが、昨今は「夏を越せなかったねぇ。猛暑だったから」に変わりつつある。
「熱中症の季節には家族や周囲の人が、いつも以上に気に掛けることが大切です。
電話をする回数を増やす、頻繁に様子を見に行く、ちょっと声を掛ける。
そういったことで、具合が悪そうなのがわかって早めに対処すれば、重症化せずに済みます。
今後ますます在宅が推進され、家で過ごす高齢者が増えることでリスクは一層高まります。
行政も含めて、高齢者の熱中症対策は喫緊の課題ですね」 対策は身近なところから。
とりあえず夏の間は、週に1度の親への電話を2回以上にするとしよう。
こっちは寒くて暖房点けちゃった(◎_◎;)
スーパーの冷房が心地よかったです。
各地での大雨の被害を見て辛いです。
電話します
本当に凄い天気。九州の実家近くは、河川氾濫、避難勧告出てました。皆さま気をつけて
電話で 絆をつなげて お互いに励ましあってね。