医師から患者になり、
初めて知ったこと
=手術受け分かった不安、立場の違い
8/8(水) jiji.com(武矢けいゆう)
私が人生で初めて全身麻酔手術を受けたのは、医師になって数年たってからのことでした。
この時、手術前後で1カ月近くの入院を経験しました。
私は初めて入院患者となり、それまで全く気づけなかった驚くべき事実を知ることになります。
今回は、医師から患者になったことで、私がどんなことを学び、どんなふうに成長できたのかを書いてみたいと思います。
全身麻酔手術は怖い
外科医は、毎日のように患者さんに全身麻酔手術を受けていただく仕事です。
いつも手術前の患者さんからは、
「ちゃんと麻酔が効くでしょうか?」
「途中で麻酔が覚めたりしないでしょうか?」
「手術が終わっても麻酔が覚めない、なんてことはないでしょうか?」と質問攻めです。
全身麻酔は薬で突然意識を失わせる行為なので、怖いのは当たり前です。
しかし実体験のなかった私はそれまで、患者さんにニコニコして「大丈夫ですよ!」と言っていました。
今日の全身麻酔の技術は非常に安全ですから、ことさらに心配する必要はありません。
これは私が毎日のように肌で感じていたことです。
ところが、自分が全身麻酔手術を受ける段になった時、言いようもない恐怖を覚えました。
「麻酔薬が注射される時はどんなふうに意識がなくなるのだろう」
「目が覚めた時、口の中に気管チューブが入っているのは苦しくないだろうか」
「麻酔薬の副作用で出る吐き気はつらくないだろうか」実にさまざまな不安が去来しました。
自分が手術を受ける段になって初めて、全身麻酔への恐怖を味わうことになったのです。
それ以後は、患者さんの不安をじっくり聞いて共感し、それまで以上に丁寧に繰り返し説明するようになりました。
医師にあまり本当の気持ちを伝えない
手術後は、自分の体が問題なく回復しているかどうか、不安で仕方がありませんでした。
医師である私ですらこうなので、医療の専門家でない患者さんからすれば、その不安は計り知れないでしょう。
そして、毎日のように主治医が病室に顔を見せるのを心待ちにすることになります。
毎日、自分の体に関して主治医への質問がたくさんたまってきます。
ところが、いざ主治医が病室にやって来て、その忙しそうな姿を見ると、
「今こんなことを言うと迷惑ではないか?」
「ある程度、痛みは我慢した方がいいのではないか?」と気を遣うので、正直な気持ちは伝えにくくなります。
とにかく話したいことがたくさんあるのに、遠慮して一部しか伝えられないのです。
私は医師として患者さんと接する時は、「不安なことがあれば私に何でも言ってくださいね」と言っていましたが、それだけでは不十分だということが分かりました。
遠慮がちな方には忙しそうな姿をなるべく見せず、「じっくり全ての情報を引き出そう」という姿勢を見せるようになりました。
手術後はとにかくつらい
私たちは普段患者さんに、手術後はしっかりリハビリをするよう指導します。
病状によっては安静にすべきケースもありますが、全身状態が許せば、術後は積極的に動いていただきます。
こうした術後のリハビリが、回復を早めるためには非常に重要だからです。
私は、術後ベッド上でじっと寝ている患者さんには、「もっと歩いてください」と少しスパルタな指導をしていたこともありました。
ところが自分が手術を受けると、印象が大きく変わりました。
とにかく術後は全身がだるくて重く、起き上がるのも一苦労です。
スムーズに歩くなどとても無理で、フラフラになりながらリハビリをしました。
手術翌日からスタスタと病棟を歩いている高齢の患者さんがたくさんいたことを思い出し、改めて感心しました。
手術後はとにかくつらいことを十分認識し、その上で適切な言葉をかける必要があると分かりました。
ナースコールを押すのは気を遣う
私は患者さんにいつも、「何かあったらナースコール押してくださいね!」と軽く言っていたのですが、自分が入院すると、そう簡単でもないことに気づきました。
入院中はささいな不安や看護師への用事が出てくるのですが、看護師たちが忙しい中、「こんなことでコールしていいのだろうか」と思ってしまうのです。
たくさんの患者さんの相手をしなくてはならない看護師たちに、自分のところに来てもらうにはそれなりの理由が必要だと考えると、ナースコールを押すことへの敷居は高くなります。
もちろん「何のためらいもなくナースコールを何度も押せる患者さん」はたくさんいます。
これは個人の性格の違いです。
しかし、中には控えめな性格の人もいて、「ナースコールを押したいけれど遠慮して押せない」という人が多くいる可能性に気づけたのは、大きな成長だと感じます。
それぞれの患者さんの性格に応じて、適切なケアは違うと実感できたからです。
医師は、何百、何千という患者さんを相手にする中で、患者さんへの診療が当たり前の行為になっています。
しかし医師として、患者さんの立場で物事を考えることがいかに大切かを、入院することで身にしみて学ぶことができました。 これを読む医療者の方々にもぜひ、こういう患者さんの立場を分かっていただけるとうれしく思います。
武矢けいゆう(たけや・けいゆう)医師。
専門は消化器外科。
平成22年京都大学医学部卒業後、複数の市中病院勤務を経て、現在京都大学医学研究科博士課程。
個人で執筆、運営する医療情報ブログ「外科医の視点」で役立つ医療情報を日々発信中。
資格は外科専門医、消化器外科専門医、消化器病専門医など。
私自身、盲腸の手術しかしりません。産科の手術は局所か硬膜外麻酔しかしらない、元、消化器病棟の看護師です。私がした事は、Dr.の指示の薬を打って手術室まで送ること。お迎えして経過観察すること。患者さんの事考える余裕もない一年目の私でした。
もし、今から復帰(今はDrストップ)できたら、話を聞けるようになりたいです
看護師さんって 大変な仕事でしたね。
他の人の世話に一所懸命だったので 自分の心がすり減ったのかな??
よく勤務後、ストレス発散しないと潰れてしまうと 入院時の担当がいっていました。
早く わんさんや子供達が いい日々が過ごせるといいですね。
ちゃいねさんも身体を大事にしてね。
独身時代、勤務後は遊びまわってました
勤務後のストレス解消につきあいたいな、と言ったら 患者さんとわかっているのだから ストレス解消になりませんと 断られました。
勤務後の「ストレス発散法」を 思い出して 静養してくださいね。