2018年08月22日

安倍3選という息苦しさ 真綿で首を絞められる民主主義

安倍3選という息苦しさ
真綿で首を
絞められる民主主義
2018年8月20日 日刊ゲンダイ

 平成最後の夏。
そして平成最後の終戦記念日を迎え、この30年間や昭和の戦争、戦後社会を検証する特集番組が目立つが、今の安倍政権は後世の歴史にどう評価されるのだろうか。

 ミステリー作家の綾辻行人氏が16日の毎日新聞夕刊に登場。
こう語っていた。
<作家生活のほとんどが平成という時代に重なります。
社会や政治の問題については基本的に淡泊なスタンスを取ってきました。
でも平成の終わりに至って、胸にあるのは危機感です。
憤り、といってもいい
幅も余裕もない。薄気味が悪い。
息苦しい。
無粋。
この国の空気を表すと、こんな言葉が浮かびます>

 息苦しい社会――。
安倍政権の5年半で、この国は変質した。
安倍首相が政権に返り咲いたあの日、一瞬にして世界が変わったわけではない。
しかし、確実に変容したことを感じずにいられない。

 排他主義が横行し、ヘイトスピーチが幅を利かせ、ちょっとでも政権批判をしようものなら「反日」のレッテルを貼られて炎上する。
 少なくとも5年半前までなら、政権と国家を同一視するような見識のなさは、冷笑の対象だったのではないか。
それが今では、安倍の言動を支持することが「愛国」で、安倍政権の売国政策や棄民政治に異を唱えると「反日」扱いされるという倒錯した世の中になっている。
 それで為政者の傲慢も嘘も怠慢も許されてしまう。
「朕は国家なり」を地で行く絶対君主ぶりで、安倍は9月の自民党総裁選で3選が確実視されている。

■ゴルフと美食で王侯貴族気取り
西日本豪雨の被災地は今も大変な苦労をしているのに、安倍首相は長い夏休みを満喫している。
財界の親玉や元首相連中、子分の国会議員らと別荘でゴルフと美食三昧などと、まるで王侯貴族気取りです。
それを日本のメディアは垂れ流すだけで、国益を損ない続けてきた安倍政治5年半の検証もしない。
米国のメディアはスクラムを組み、命懸けでトランプ政権と戦い始めたというのに、この国のメディアは相変わらず大本営発表を続け、国民を欺いている。
メディアが戦争に加担した反省は、まったく生かされていません」(政治評論家・森田実氏)

 この5年半で、政権に批判的なコメンテーターは画面から消えた。
権力に飼い慣らされた大メディアは常に政権の顔色をうかがい、真っ向から批判することもなくなった。
せいぜい“両論併記”でお茶を濁す程度だ。
民主主義を担保する言論の自由は、静かに、巧妙に制限されてきた。
恐らく、多くの国民が気づかないうちに。

 戦争がいかにして市井の人々の生活に忍び込んでいくのかを描いた「小さいおうち」で直木賞を受賞した作家の中島京子氏は、日刊ゲンダイのインタビューでこう語っていた。
<なんだかんだ言って、平和憲法があるから砦になると思っていたら、あっという間に突き崩されようとしていますね。
特定秘密保護法も、その成立過程を見ると、いつの間にか言論統制が入り込んできた戦前とよく似ている。
治安維持法みたいなものが、このタイミングで法制化された恐怖というか、戦後、私たちが信じてきた民主主義や言論の自由が、底が抜け、骨抜きになったような気がしています> 

 無謀な戦争に突き進んでいった昭和初期と今は空気が似ていて、「本当に怖くなる」と言うのだ。

ダメだと思ったら撤退する勇気が必要
 言論の自由が徐々に失われてきた結果、全体主義的な空気が日本を覆い、ついには権力者が国民を「生産性」で選別する社会になってしまった。
戦後民主主義でようやく男女平等を手にしたはずの女性も受難の時代だ。
 少子化だから子どもを産め、子どもが小さいうちは保育所に預けず自分で育てろ、でも労働人口が減っているから女も働いて税金を納めろ……。

それでいて、世のために働きたくとも医学部の入試で差別される。
じゃあ、どうすればいいのか。
国民を労働力や生産性でしか見ない政権だから、こういう不条理がまかり通っている。

「かつての自民党は、ここまでひどくありませんでした。
曲がりなりにも平和主義と国際協調主義を維持し、日本経済の成長と国民生活の充実を考えていた。
今は格差が拡大し、国民経済は疲弊しているのに、庶民生活を蝕むアベノミクスを批判する声が自民党内から出てこない。
安倍首相ににらまれたら損だと、雪崩を打って3選を支持しているのだから、自民党議員はどうかしています。

総裁選への出馬を表明している石破元幹事長には、『嘘つき政権でいいのか』とハッキリ言って欲しい。
安倍政治の5年半で、官僚は腐敗し、信用が高かった警察も穴だらけ、検察も巨悪を見逃す暗黒国家になってしまった。
組織では誰も責任を取らず、トップは嘘を言って逃げ、部下を犠牲にして押し付ける。

首相官邸も日大アメフト部も同じです。
政官の道義が廃れれば、民間も当然そうなってしまう。
そんな日本に未来はありません」(森田実氏=前出)

 自民党の村上元行革担当大臣は「時事放談」(TBS系)で、安倍が総裁選で国会議員の7割超を固めたことに「正直、国民の世論と懸け離れた状況になっているんじゃないか」と懸念を表明していたが、他の自民党議員は本当に今のままでいいと思っているのか。

 安倍3選ならば、インパール作戦に例えられる黒田日銀の金融緩和も継続されることになる。
日本は先の大戦で、短期決戦に失敗したのに、それを糊塗してズルズルと戦力を逐次投入し、大きな犠牲を払った。
今の黒田日銀はこれと同じ道をたどっている。

■作戦の継続に固執するのは
    大本営と同じ
「異次元緩和は『2年で2%』の物価上昇を実現するはずでした。
短期決戦でしかあり得ない政策だったからです。
しかし、2年で成果が出ず、失敗が明らかになっても、政策の誤りを認められず方針転換できないまま来てしまった。
現実から目を背けて、一度始めた作戦の継続に固執するのは旧日本軍の大本営と同じです。

こんなむちゃな金融政策があと3年も続けば、傷は深まる一方です。
今の日銀は株価を下げないよう、安倍政権の継続のためだけに存在しているようなもの。
日銀の独立性まで無視して私物化しているのが安倍政権です。
他に適当な人がいないとか、安定などという虚言にだまされてはいけない。

ダメだと思ったら、撤退する勇気が必要です。
このまま安倍首相が3選なら、経済はメチャクチャになり、人権は蹂躙され、戦争に突き進む国になる。
経済的にも政治的にも、戦後最大の国家的な危機に立たされているのです。
金融システムを破壊し、経済無策で外交無能の安倍政権があと3年も続いたら、第二の敗戦というべき事態に陥るのは間違いありません」(経済アナリスト・菊池英博氏)

 マトモな識者は黙っていられない惨状なのだ。
戦争を知る世代だった宮沢喜一元首相も、著書「新・護憲宣言」で「われわれは将来に向かって自由の制限につながるかもしれないどんな兆候に対しても、厳しく管理する必要があります」と書いていた。
自由はある日突然、なくなるものではない。
徐々に蝕まれ、気づいたときにはすべてが失われている」とも言っていた。

「戦争絶滅」を訴え続けたジャーナリストのむのたけじ氏も
始めに終わりがある。
抵抗するなら最初に抵抗せよ」という言葉を残した。

全体主義の流れが一度、渦を巻き始めたら、気づいた時にはのまれて抵抗できなくなっている。
暴力は「兆候」の段階で止めなければならないと説いた。
 5年半の独裁で、もはや暴力は兆候の域にとどまらない。
だが、真綿で首を絞められるように窒息させられていく自由と民主主義を取り戻すのに、遅過ぎるということはないはずだ。「きょう」が一番新しい「未来」なのだから。
自民党議員は、歴史の審判に堪え得る判断ができるのか。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]