2018年08月26日

北原みのり「医療界、相撲協会と同じ」

北原みのり
「医療界、相撲協会と同じ」
2018/08/25 AERA dot.

作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。
北原氏は東京医大前のデモを呼びかけたという。
*  *  *
 東京医大の差別入試問題が発覚した翌日、いてもたってもいられず、東京医大の前でデモを呼びかけた。
そのことをきっかけに、3人の当事者と話す機会があった(8月9日時点)。
不正があったとされる年に東京医大を受け、不合格になった女性たちだ。

 医療界は狭い。声をあげることが、後の自分のキャリアにどう影響するのか。
そう考え恐れ沈黙を選ぶ当事者は少なくない。
もちろん、私にコンタクトしてくれた女性たちだって同様だ。
それでもと連絡をしてくれたのは
「これは自分だけの問題じゃない」
「未来の職場を改善することにつながるはずだ」
「こんな悔しい思いを二度としたくない、他の女性にもさせたくない」という思いからだ。

今回、医療関係者ほど「こんなことは昔からあった」と言いたがることに驚いている。
男女比調整しなけりゃ女医が増えるとか、そもそも男女には脳の性差があるから物理を難しくして女性が入れないようにしてきたとか、女性は出産・子育てして職場に迷惑かけるとか。

科学的根拠を重んじ、理性を尊ぶべき医者の言うことじゃない。
 それでも、「女医が増えると困る」と考える背景に、一人の当事者は「医学部にジェンダー教育が一切ないことも問題だ」と言っていた。
ジェンダーが何かを知らず、ピラミッド型の医局の人間関係ばかりをみていたら、そういう考えにもなるだろうと。

例えば女性が外科を目指したとして、医局のトップの男性が「うちは休めないよ」「女はいないよ」と言えば、それは察しろという意味だ。
そういう中で男は自分の手下になるような男を選び、性差別構造は再生産されていく。

 一緒に話を聞いていた弁護士が「相撲協会と同じだね」と言った。
女を排除し、上にものを言えず、内側のローカルルールが世間で通用しないことを知らず特権的な地位を死守しようとする。

ただ相撲協会には関わらずにすむが、医療界は避けて通れない。
時代も社会の空気も読めず「女医はいらない」というのがまかり通っているお粗末な組織のありようは、私たちの健康に直結する重大事なんじゃないか。

 医療界の人たちは、「女性の比率が調整されることは暗黙の了解、受験生もわかってるはず。
だから女は人一倍頑張るし、女医は優秀なんだ」と言いたがる。
当事者からすれば、女性の点数が操作されているなんて考えたこともなかった。
女性比率が極端に低い大学の受験は女は物理が苦手だから……という迷信をむりやり納得して……というか納得するしかない気持ちで勉強してきたのだ。

 当事者の声が集まりつつある。
東京医大だけでなく、他大学で受けた面接についても声をあげている方がいる。
面接で、結婚したらどうする? 妊娠したら? ということを女性受験生は聞かれることがあるという。
いつの時代の話だよ。
 ブラックボックスは開いた。相撲協会からふつーのまともな医療界に向けて。日本社会全ての人が、当事者なのだ。
 ※週刊朝日  2018年8月31日号
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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