2018年08月30日

「信教の自由」を盾に開き直る宗教界への疑問

「信教の自由」を盾に開き直る
宗教界への疑問
収支はひた隠し、労務管理もずさんそのもの
2018/08/27 東洋経済

風間 直樹 : 東洋経済 記者

日本の宗教界が、曲がり角に立っている。
文化庁の『宗教年鑑』によれば、国内宗教法人の信者数(公称)の総数は過去10年で12%減。
信者数の絶対値は減り続けている。
それでも、宗教法人は侮れない力を依然として持つ。

税制優遇という強力な”特権”が付与されているほか、財務諸表などの情報開示が求められないこともある。
富の蓄積を容易にするその力をテコに、巨大施設の建設や美術品の購入、政治活動を行ってきた。

『週刊東洋経済』は8月27日発売号(9月1日号)で、「宗教 カネと権力」を特集。
創価学会、幸福の科学、真如苑、ワールドメイトなど注目教団のマネーから人事まで、厚いベールに包まれた実像に迫っている。

さまざまな税制優遇を享受しているのに…
現在、ほとんどの宗教法人は毎年の収入すら開示していない。
宗教法人は税法上、「公益法人等」という立場で、さまざまな税制優遇を享受している。
お布施や寄付など宗教活動で得たおカネは原則非課税で、不動産賃貸など収益事業に関しても通常より税率が低い。
宗教法人は高い倫理観から不正経理など行わないという性善説に立っているためだ。

だが現実には修正申告は少なくなく、悪質な所得隠しを行っているケースもある。
税逃れ狙いによる宗教法人売買では反社会的勢力も暗躍している。

オウム真理教による無差別テロ事件をきっかけに、1995年に宗教法人法の改正が行われた。
改正法では、収益事業を行っているか、年間収入が8000万円を超えている場合、毎年収支報告書を作成し、所轄庁に提出することが義務化された。
宗教法人が所轄庁に届け出た財務諸表の写しは行政文書となる。
そこで『週刊東洋経済』編集部は今年6月、文化庁あてに複数の宗教法人から提出された財務諸表の開示を求める請求を行った。
翌月、文化庁から届いた決定通知書は請求文書の存否も含めてすべて不開示とするというものだった。
現在、文化庁長官に不開示決定への不服審査請求を行っている。
不服審査請求を受けた省庁は、総務省の情報公開・個人情報保護審査会に諮問する。
審査会は第三者的立場から公正かつ中立的に調査審議し答申を行う。

実はこれまでも『週刊東洋経済』編集部と同様の審査請求が文化庁宛てに複数回行われており、審査会ではそのたびに「存否を明らかにしないで開示請求を拒否した決定は取り消すべき」との答申を出している。

「付言」がなされても…
審査会が対象文書の提示を要求(インカメラ審理)しても免れようとする文化庁の対応に、
「法の理解に重大な問題がある」
「今後は法の趣旨に則って適切な対応をすることが強く望まれる」などと異例の「付言」がなされたこともあった。
ところが「付言」がなされたケースで文化庁は、新たな不開示の理由を示すことなく、再度不開示と、答申と異なる決定をしている。

文化庁宗務課長は宗教法人審議会で「信教の自由を妨げることのないように慎重に取り扱う必要がある」ためと説明している。
答申に法的拘束力はないが、「答申と異なる決定を諮問庁がすることは極めて例外的」(総務省)だ。
実際、2015年度に審査会に諮問し決定等を行った922件のうち、審査会の答申と異なる決定をしたのはたった1件だった。

行政介入を避けるべきと
いうなら情報公開を徹底すべし
制度に詳しい特定NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は、「存否応答拒否が許されるのは、警察の捜査情報や自衛隊の防衛機密などに限られる。
宗教法人の財務諸表が同等とは思えない」と話す。

信教の自由の尊重から行政の宗教介入は避けるべきというなら、「より情報公開を徹底し社会的監視に委ねる道を探るべきだ」と指摘する。
情報が閉ざされた結果、次のようなことも起こっている。
関係者によれば、都内のある寺院は10年間まったく同じ数字の財務諸表を提出しているが、何の指摘も受けていないという。

行政は宗教介入に当たるからと基本的なチェックも行わないのである。
宗教法人の決算業務にかかわった別の税理士法人関係者は、「非課税の宗教行為と課税対象の収益事業の財布も分けておらず、まさにどんぶり勘定。
これで通用するとは信じられなかった」と振り返る。

僧侶で税理士の上田二郎氏は、「この実態が明らかになれば財務諸表の公表を求める声はより強まるだろう。
優遇税制も疑問視されかねない。
宗教法人の大学などで経営・税務を教育するなど早急な対応が必要だ」と語る。

一般社会の常識が通用してこなかったのは、「働き方」「働かせ方」においても同じだ。
「給与明細を見て、あれだけ働いたのに残業代がないのはなぜだろうと思ったのがきっかけだった」。
真宗大谷派(本山・東本願寺、京都市)で僧侶として働いていた水田悟志さん(39歳、仮名)は振り返る。

月の残業時間は
最大130時間を超えていた
水田さんは2013年4月から本山境内にある研修宿泊施設で門信徒の世話役である「補導」として働き始めた。
朝のお勤め前の6時半すぎには出勤し、夜は22時過ぎになることもザラだったという。
とりわけ繁忙を極めたのが、子供や学生の奉仕団がやってくる夏休み期間中だ。
「残業時間は最大で130時間を超えていた」(水田さん)。

水田さんは仏門に入る前、民間企業で5年、本山の補導となる前は、宗派教務所で事務職として働いていた。
「企業ではもちろん、教務所でも残業代は支払われた。
本山でも事務職には残業代が支払われるのに、勤務時間が長い補導には支給されないのは納得できなかった」(水田さん)。

水田さんは同僚と地域労働組合に加盟し、2015年秋から団体交渉を行った。
真宗大谷派側は残業代不払いのみならず、労働時間を把握してないことや、補導については残業代を支払わないという違法な覚書を40年以上前に職員組合と締結して更新し続けてきたことを認めた。

ただ団交の席上、直属の上司は水田さんにこう言い放ったという。
「宗教心があればこんな訴えは起こさない」
「同じ環境で働いてきた人が多くいるのに、おかしな訴えを起こすのはあなたが初めてだ」。
こうした言葉が象徴するように、僧侶は出家して仏門に入れば俗世とは離れるので、その活動は「修行」であり「労働」ではないという考えが仏教界に根強く残る。
ほかの宗教でも同様だ。

「宗教法人には労務管理という意識がなく、労働法の知識が乏しいのが実情だった」(僧侶で宗教法人法務に詳しい本間久雄弁護士)。

相応の給料を受け取っていれば労働者
僧侶をはじめとする聖職者の労働者性について厚生労働省は「宗教関連事業の特殊性を十分配慮すること」との通達を出している。
具体的な判断基準によれば、寺院の指揮命令によって業務を行い、相応の給与を受け取っていれば労働者として扱われる。
聖職者といえど同じ人間。

心身に悪影響が及ぶほどの無茶な働かせ方や、
人権を無視した扱いが許されていいワケはない
世界遺産・高野山(和歌山県高野町)の寺院に勤める40代の男性僧侶が、連続勤務でうつ病を発症したとして、昨年10月に労災認定されている。
また宗教上の地位の剥奪である「破門」についても、不当な「解雇」との争いについて、裁判所は昨年、破門に正当な理由はないとする仮処分決定を出している。
こうした労働問題と並んで宗教界を揺さぶる世俗からの波が、厚生年金の未加入問題だ。

2015年ごろから日本年金機構は寺院に厚生年金の加入を迫るようになった。
法人税法上、住職が宗教法人から受け取る金銭は、現物を含めて役員報酬に該当するため、社会保険の加入対象となると判断されたためだ。
「宗教界は生涯現役を理由に反発するが、中小・零細企業の社長の多くは社会保険に加入している。
宗教界だけが特別との主張は通らないだろう」と、前出の僧侶で税理士の上田氏は話す。

個々の是非はともかく、法令順守という世俗のルールが宗教界にも序々に浸透しているのは間違いない。
情報開示への消極姿勢も、やがて変革を迫られるだろう。
信教の自由を守ることは、宗教法人の既得権益を守ることと同義ではない。
公益性と性善説について国民的合意を得るためにも、世俗のルールとの調和を目指した自己改革が望まれる。
posted by 小だぬき at 00:00| 神奈川 ☁| Comment(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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