2018年09月22日

サマータイム、安倍政権の政治的意図

サマータイム、
安倍政権の政治的意図
2018.09.20 Business Journal

文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授

 サマータイム導入の可否をめぐり議論が盛り上がっている。
欧州では、9月12日にEUのユンケル欧州委員長が、EU加盟国が一律に採用しているサマータイム制度を2019年に廃止する法案を欧州議会と加盟国の理事会に正式提案した。

これを受けて、導入をゴリ押ししようとする自民党は翌13日、サマータイム導入を前提とした議員連盟を、導入を前提としない研究会に格下げし、法案提出の目標時期も今秋の臨時国会から先送りした。

 ことの発端は、安倍晋三首相が8月7日、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会委員長の森喜朗元首相と会談した際、サマータイム制度導入の提案を受け、自民党に検討を指示したことだった。
以降、「健康に悪い」「残業が増える」「EUでもサマータイム導入の見直しが始まっているのに世界に逆行している」といった指摘が多数なされている。

 本稿では、サマータイム導入の政治的意図や、グローバル化する日本社会への影響など多面的な観点から論点整理を行ってみたい。

今回のサマータイム導入の論点を整理すると、以下の6点になるのではないか。

・猛暑の夏に開催する東京五輪・パラリンピックへの対応
・サマータイム導入の政治的意図
・現行のサマータイム案
・導入国からみた日本におけるサマータイム導入の必要性
・海外との関係で考えるサマータイム導入
・反対意見の論調 猛暑の夏に開催する東京五輪・パラリンピックへの対応

 今回のサマータイム導入議論は、2020年の東京五輪が念頭にある。
酷暑の時期の開催なので、マラソンなど屋外競技をより涼しい時間帯に行おうという目的である。
しかし、酷暑対策であるならば、坂村健東洋大教授も指摘するように、単に競技の開催時間を早めれば良いだけである。
選手には前もって周知し、競技場へのアクセスとなる公共移動手段の始発をこの期間だけ早めれば済むことである。
 つまり、東京五輪の酷暑対策として、サマータイムという社会全体に大きな影響を与える制度を導入する意義は、まったく不明である。

サマータイム導入の政治的意図
 では、合理性のないサマータイム導入が、なぜ議論になっているのか。
それは、東京五輪を酷暑の夏季に開催することに対する海外での不評という外圧を利用してでも、サマータイムを導入したいという政治的意図があるからである。
これがサマータイム導入の一番大きな理由であろう。

自民党にとっては、
サマータイム導入は悲願
サマータイム導入はこれまで、1995年、1999年、2005年、2011年の4回試みられていたが、すべて法案提出は断念され、失敗に帰している。
この意味では、自民党にとっては、サマータイム導入は悲願なのであろう。

 実は日本でもサマータイムを導入していた時期がある。
敗戦後の占領統治時代の1948年〜1951年までの3年間、GHQ主導で導入していた。夏時刻法という法律を制定し、標準時刻に1時間を加えたタイムゾーンを採用し、5月の第1土曜日から9月の第2土曜日までの期間を夏時間としていた。
1952年の講和条約発効前に、この夏時刻法は廃止された。

諸説あるが、廃止の大きな理由は、当時の日本では人口の大半は農業で生計を立てる農家であり、太陽の動きに合わせて生活をしてきた彼らは、夏時刻による1時間の時間変更に馴染めず不評であったというのが廃止の最大の原因といわれている。

 では、自民党が執着するサマータイムの導入目的とはなんであろうか。
それは、省エネと経済効果であるようだ。
省エネに関しては、エアコンの利用が広がった今、サマータイムを導入しても省エネどころかエネルギー消費が増えるといわれているので説得力はない。
 もう一つが、日没の時間が遅くなることによる経済効果である。
しかし、“飲み屋”での消費が大きい日本では、夜の時間の短縮は経済的にマイナスの効果をもたらす。
明るい時間を長くすることで日中の消費が増えたとしても、当然、その分だけ夜の時間が短くなり夜の消費は減る。
時間当たりで日中消費のほうが夜の消費よりもよほど大きくない限り、大幅な消費増にはならないであろう。
つまり、大きな経済効果は期待薄といえる。

 しかし、経済成長がお題目の政治家にとって重要なのは、「経済効果がある」と主張することなのである。
政治家と官僚(特に経産省)が「日本のGDPを伸ばすには、その6割近くを占める個人消費を増やさなければならない、それが我々のミッションである」と考えているのであろう。
不発に終わったプレミアムフライデーも、この発想がベースにある。
経産省としてはあの手この手で個人消費を増やすのに必死であり、そこでサマータイム導入の議論に飛びついたといえよう。  

経産省にとっては、「経済成長のために矢継ぎ早に経済対策をしています」と国民に見せることが重要なのであり、その対策が実際に経済効果をもたらすかは彼らにとって重要ではない。
実際、政策失敗の屍が累々であるが、その責任を取ろうとは露ほども思っていない。

現行のサマータイム案
以上のように省エネと経済効果が不確かななかで、システムリスクと高い社会的コストを伴うサマータイムを導入するのは説得性に欠ける。
しかし、政治家は突き進むのである。
日本の政治家は、消費税の軽減税率といい、合理性を欠き目先の人気取りのために将来に禍根を残すことを平気で行うのである。
国民としては、そのような政治家に投票し続けるのはもうやめるべきではないか。

 8月6日付産経新聞によると、現在、政府と与党で検討されているサマータイム案では、夏に時間を2時間繰り上げる夏時間を、2019年と2020年に2年間限定で導入する方向のようである。
そして繰り上げ期間として、「最も暑い6〜8月を軸に数カ月間だけ2時間繰り上げる方向で検討に入った」とある。
もしこれが本当なら、政治家の発想を疑わざるをえない。

 まず、2時間繰り上げは、世界に類のない異常な繰り上げである(例外として、連合国占領下のドイツで1945年と1947年に2段階のサマータイムを実施)。
医師でなくとも健康に悪いというのはわかる。
また、6〜8月を軸に数カ月間というのも合理性がない。
欧米では、明るい時間帯を長くするためにサマータイムがあるので、約7カ月(2018年は3月25日から10月28日)、北米では約8カ月(3月11日から11月4日)である。

実施国を見ている限り、数カ月ではサマータイム本来の意味がないと思われる。
さらに、2年間の限定導入というのも理解できない。
もし、本当に2年間の限定導入というのであれば、コンピュータのシステム改修の多大なコストと手間とリスクをどう考えているのであろうか。

 以上、サマータイムをめぐる議論の政治的な文脈を総括したが、自民党が検討を進める現行案は議論するに値しないといえる。
次回は、より本質的な意味での日本社会におけるサマータイムの必要性について考えてみたい。

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posted by 小だぬき at 00:00| 神奈川 ☔| Comment(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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