2018年10月13日

改憲を隠れ蓑に進行 「人生100年」という弱者切り捨て

改憲を隠れ蓑に進行
「人生100年」という
  弱者切り捨て
2018/10/12 日刊ゲンダイ

「人生100年時代」を生き残れるのは、老後資産に余裕のある一握り。
大半はヨボヨボになるまで働くか、サッサと死ぬほかない――。
安倍首相が掲げる「全世代型社会保障改革」。
改革とは名ばかりで、壮絶な庶民イジメ社会を目指す悪魔的青写真が見えてきた。

 政府税制調査会は10日、今年度初めての総会を開催。
人生100年時代を見据え、老後に備えた資産形成を支援する投資減税の検討に着手した。
具体的には、少額投資非課税制度(NISA)や個人型確定拠出年金「iDeCo」など、それぞれ利用可能な額が異なり複雑な長期投資向けの優遇税制を整理。
公的年金の先細りを念頭に、「資産形成による自助努力」を一段と促すというが、本末転倒も甚だしい。

 政府税調は曲がりなりにも安倍首相の諮問機関。
年金の枯渇を庶民の「自助努力」とやらで補完させる前に、やるべきことがある。
 年金財政の不安が広がる中、安倍が年金積立金の株式運用比率を拡大したのは、株価連動支持率内閣の株高維持のためだけ。
まず税調は年金私物化首相に「これ以上、虎の子の老後資金を“鉄火場”につぎ込むな」と迫るぐらいしてみろ。
11日の世界同時株安で平均株価が一時1000円超も急落し、どれだけ大事な老後資金が焦げついたか知れたものじゃない。

 経済ジャーナリストの荻原博子氏が言う。
投資優遇税制を整理しても恩恵を受けるのは投資に回すだけの余裕がある世帯のみ。
いくら『自助努力』を促したところで、多くの家庭はその余裕すらないのが実情です。
しかも投資は儲かる人がいれば、必ず損する人も出る。
金融庁のデータによると、銀行窓口の投信購入者の実に46%が損しています。
それでも『老後資産の自助努力』で投資を促すのは、より多くの国民に株を買わせ、株価を維持したいのでしょう。
『投資』はイメージが悪いのか、政府税調は今年から『資産形成』と言い換えました。
こんな言葉遊びで、国民に“全員野球”で株を買い支えろとは、もうムチャクチャです

 本気で老後に備えた資産形成を国民に促すなら、より多くの働く人に適用される所得減税が先だろう。
ウソとゴマカシだらけの政権は、投資に回すカネのない貧乏人に渡す年金はない、と言っているに等しいのだ。

真相は「死ぬまで」
働かせて大幅歳出カット
 邪なペテン政権の庶民イジメ策は、もっとある。
厚労省は10日、75歳以上の後期高齢者の医療費負担を見直す議論を始めた。
現役世代と同じ3割を自己負担する「現役並み所得」の対象範囲を拡大。
通常1割を自己負担する後期高齢者の数を減らし、国の医療費をケチるというのだ。
 現行の「現役並み」の基準は夫婦世帯で年収520万円以上。
実際の給与所得者の平均収入約420万円とのギャップを埋めるため、「現役並み」の基準が引き下げられる見通しだ。

 後期高齢者の医療費の半分は公費だが、「現役並み」の医療費は患者本人と保険者のみで賄う。それだけ公費の支出は減るが、減った分を肩代わりするのは、保険料を支える現役世代だ。
健康保険組合連合会の試算では「現役並み」の後期高齢者が1%増えるだけで、保険者の負担は500億円も増える。
 増加分を補うには、現役世代の保険料を上げるしかない。
将来の窓口負担も保険料もアップとは、踏んだり蹴ったりである。
揚げ句に同じ日には年金受給開始年齢を引き上げる議論まで始めたのだから、ドケチ政権は血も涙もない。

 現行は60〜70歳の間で開始年齢を選べるが、70歳を超えても受給を遅らせることが可能な仕組みに変えるのは決定済み。
焦点は上限にする年齢だが、厚労省の社会保障審議会が意識するのはナント、後期高齢者となる75歳なのだ。
 今でこそ選択制の議論だが、過去の支給引き上げの経緯を見れば、いずれ受給開始年齢が75歳に延びかねない。
そうなれば「今の高齢者は元気。
昔の65歳は今の75歳と同じ」とか言って、後期高齢者の対象年齢も引き上げるに違いない。
 国にすれば年金も医療費も出費が減る一石二鳥だが、庶民はたまらない。

75歳まで年金はもらえず、窓口負担も増えれば、オチオチ医者にもかかれなくなる。
高額で知られる夢のがん治療薬オプジーボは、まさに「夢のまた夢」の薬となる。
法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言った。
ただでさえ、安倍政権は社会保障費を散々抑えてきたのに、まだケチるとは恐れ入る。
トランプ米大統領に言われるがまま大量の兵器を購入し、防衛費を拡大させる一方で、今年度の社会保障費は自然増分を1300億円もカット。
来年度予算は自然増分を従来の5000億円を下回るレベルに抑え込むつもりです。
さらに予定通り来年10月には庶民に消費増税を押しつけながら、内部留保を貯め込み大儲けの企業の法人税は引き下げる。豊かな人々を助け、貧しき者からふんだくる。
アベコベ政策の数々はデタラメの極みです」

■孫を抱いていたはずの老人に
   強制労働を課す
 安倍政権は継続雇用年齢の65歳以上への引き上げを検討中だが、定年後に雇用が延びても、給与は現役時代の半分から3分の1程度だ。
雇用延長が終われば、70歳になっても年金がもらえない以上、いくら老いぼれたって働きに出るしかない。
 安倍政権は本来なら孫を抱いていた年寄りに“強制労働”を課す一方で、AI化と外国人雇用の受け入れ拡大を進めている。生涯働く老人と化す今の現役世代はこの先、AIに仕事を奪われ、外国人労働者と雇用を競い合うハメになる。

老人が徹夜で警備員や道路工事の誘導係をつとめるか、座して死を待つしか選択肢はなくなるのだ。
 大体、アベノミクスがまともな政策ならば、こんな社会にはなっていない。
安倍は「250万人の新たな雇用を生み出した」と威張るが、うち211万人は65歳以上の高齢者だ。

今だって年金をアテにできない高齢者が渋々働きに出ているのに、「死ぬまで働く社会」になれば、さらに増加の一途。
それでも安倍は「雇用を生んだ」と胸を張るのか。
そりゃあ、来日したIMFのラガルド専務理事に「政策の見直しが必要」とダメ出しされるのも当然である。

異次元緩和のマイナス金利で、融資の利ざやが激減した金融機関の経営は火の車です。
安倍政権が全国民に投資を勧めるのは、もはや投資で稼ぐしかない金融機関への“ガス抜き”策でもある。
ここにもアベノミクスの破綻は表れています」(荻原博子氏=前出)

 邪悪な政権にここまでやられて、なぜ国民は黙っているのか。
それは大マスコミが、年金、医療、税金と、にわかに動き出した「全世代型社会保障改革」の実態をちっとも伝えないからだ。
 11日の主要6紙は、自助努力を促す投資減税こそ5紙が伝えたが、朝日は超ベタ記事扱い。
後期高齢者の医療費3割負担の拡大検討にいたっては、取り上げたのは日経1紙のみだ。
何も真相を知らされなければ、国民だって怒りようがない。
全世代型社会保障改革の正体は、全世代型の貧困化です。
いくら小泉元首相らに『できっこない』と批判されても、安倍首相が改憲に意欲を燃やしているのも、実は隠れ蓑かもしれません。
できもしない改憲を騒ぎ立て、国民の危機感を引き付けているうちに、『本命』の総貧困化による財政支出削減を着々と進めるという目くらましです」(五十嵐仁氏=前出)

 来年には改元を控え、再来年には東京五輪が開催される。
この2大フィーバーに国民が浮かれていたら、イカサマ政権の思うツボ。
アベノミクス破綻の責任を誰も取らず継続するだけだ。
人生100年の裏で悪魔的青写真を描く政権が、あと3年も続けば「豊かな老後」は完全に死語となる。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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