2018年10月27日

任意団体 入退会は個人の自由<PTA会長になった記者リポート>

任意団体 入退会は個人の自由
PTA会長になった記者リポート
熊本日日新聞社 2018/10/25  

PTAは任意団体です」−。
荒尾市の小学校のPTA会長に就任した今年4月の総会のあいさつで、そう触れた。
「任意団体」という説明を口頭で伝えることは、役員内での申し送り事項になっていた。
そのきっかけとなったのが、「PTA会費返還訴訟」だ。

 熊本市の小学校に子ども2人を通わせていた自営業の男性(62)が2014年、PTAに入会の意思を示していないのに会費を徴収されたとして、同小PTAに会費返還などを求めて提訴。
昨年2月、福岡高裁で成立した和解条項には「PTAが入退会自由な任意団体であることを十分に周知」することなどに努める、と記された。
 任意団体であるPTAが訴えられれば、代表者である会長個人も被告となる。
こうしたリスクを抱える以上、慣例的ではなく、問題を理解した上で対応すべきではないか。
そんな思いから、PTAを提訴した男性と連絡を取り、話を聞いた。  
  ◇      ◇
 男性の2人の子どもは09年、熊本市の小学校から同市の別の学校に転校した。
父子家庭で、輪番制の登校の見守りなどは参加したが、バザーの手伝いは「忙しいので」と断った。
すると、ある保護者から「みんなやっているのにずるい」と言われたという。

 「当初はPTAと、地域や学校の活動との区別がはっきり分からず、批判に後ろめたさも感じたが、何となく違和感も覚えていた」
 ある時、ふと目にしたPTAの決算書に驚いた。
学校の周年行事に向けた積立金など多額の繰越金があった。
「誰のために使われているのか」。
会費の使途に、疑問を抱くようになった。

 PTAについて調べるうち、1954年に文部省(当時)が策定した「『父母と先生の会』第二次参考規約」に関する新聞記事を見つけた。
参考規約には「会員になることも、会員にとどまることも、自覚に基づく個人個人の自由であって、いささかも強制があってはならない」とあった。
 「この時、PTAが入退会自由な団体という確証を深めた」。
男性は退会を申し出た。
PTA側は当初、案内冊子の文面を基に「会則の配布をもって入会の了承をいただいた」とし、「子どもが学校に在籍する限り退会できない」などと説明。
その後、謝罪して、退会を認めた。

 退会を申し出る前、長男が進学した中学校PTAでは、会費が減免されることを知る。
長女の小学校PTAにも経済的な理由などで減免を求めたが、対応が進まなかったという。
訴訟は男性がPTA側の一連の対応に不信感を募らせた結果だった。
 訴訟の意義について、男性は「入会届の提出義務付けまでは和解条項に盛り込めなかったが、PTAは入退会自由ということを公に示せた意味は大きい」。  
  ◇      ◇
 うちのPTAの会則には会員は「本会の主旨に賛同する者」とあり、入会は自由意思に任せるという趣旨は示されている。予算も「会員の拠出金による共同財産」という認識は当然持っている。
私も最初は驚いたが、先輩役員らは、お茶のボトルを1本買うにも「会員の理解を得られるか」と確認している。
 ただ、男性の話を聞きながら、会則や予算の説明を十分に尽くしているのか、あらためて考えさせられた。
 PTAの事業についても、単独の研修会を廃止するなど見直しが進んでいる。
それでも、「過重な負担」を感じている保護者がいるなら、役割分担のあり方も含め、さらなる検討が必要だ。

 男性に「PTAは不要と思いますか」と投げかけた。
すると「存在自体を否定するつもりはない」と返ってきた。
会長の一人として、子煩悩な普通の男性と、被告となった当時の会長が2年半余りも法廷で争った事実の重みをかみしめた。(荒尾支局・原大祐)
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | 教育・学習 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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