2018年11月10日

入管法改正紛糾 極右の首相が“移民”旗振りのいかがわしさ

入管法改正紛糾
極右の首相が
“移民”旗振りのいかがわしさ
2018/11/09 日刊ゲンダイ

 20年後、30年後の日本をどうしたいのか。
この国は将来どうなっていくのか。
予算委員会の質疑を聞いても、まったくビジョンが見えてこない。
これでは国民の不安は募る一方だ。

 外国人労働者の受け入れ拡大に向け、新たな在留資格を創設する出入国管理法改正案が来週、いよいよ審議入りしそうだ。

8日の衆院議運理事会で、自民党が13日の衆院本会議で改正案の趣旨説明と質疑を行い、審議入りすることを提案。
衆院法務委でわずか3日間ほど審議したら、22日に採決というスケジュールを与党は描いている。
「政府は来年4月から施行させたいと時限を区切り、今国会で必ず成立させる方針です。
なぜ、そんなに急ぐ必要があるのか。
まずは時間をかけて、外国人労働者の受け入れ体制を整備するべきです。
すでに、技能実習生や留学生として来日し、就労している外国人労働者数は128万人に達していますが、その待遇はひどく、毎年、数千人の技能実習生が失踪している。
こういう問題を放置したまま、新たな受け入れ制度を設けて、ダブルスタンダードでやっていくのか。
制度設計が生煮えのまま、数の力にモノを言わせて強行採決すれば、将来に禍根を残すだけです」(政治学者の五十嵐仁氏)  

野党が8日に国会内で開いた外国人労働者受け入れに関する合同ヒアリングでも、技能実習生の不当な労働実態が次々と明らかになった。
 岐阜県で縫製の仕事をしていた50代の中国人女性は、早朝から翌日未明まで時給300円で働かされたことがある上、未払い賃金は427万円に上るという。
 鉄筋・型枠工の研修目的で来日したベトナム人男性は、福島県の建設会社に勤務したが、実際は原発事故後の除染作業に従事させられていた。
男性は「専門技術を学びたくて日本に来たが、勉強はできなかった」と無念を訴えた。

■なぜ賃金アップができないか
 政府は、外国人労働者の受け入れ拡大の理由として「人手不足が日本の成長阻害要因になっている」と説明する。
「介護や建設業などで就労者の確保が困難になっている」というのだ。
 低賃金の単純労働には人が集まらない。
だから外国人労働者が必要だというが、じゃあ、なぜ賃金を上げることを考えないのか。

日本国内で起きているのは雇用のミスマッチであり、人手が絶対的に足りないわけではないはずだ。

 AIに置き換わる仕事が増え、大企業は数千人単位のリストラを敢行している。
非正規雇用も増え続けている。
人手不足の業界が賃金をアップすればいいだけの話で、急いで外国人労働力を補充する前に、国内の労働力を生かす策を考えた方がいいのではないか。
「入管法の改正は国民や労働者のためではなく、安い労働力が欲しい財界の要望です。
だから、賃金を上げて解決するという方向にはなりません。
非正規雇用を増やしてきた企業が、さらに安い労働力として外国人労働者に目をつけた。
それだけの話です。
しかし、なぜ、人手不足なのに賃金が上がらず、消費が低迷しているのか。

賃金を上げられないのは、生産性を高める努力を怠ってきた企業と、間違った経済政策を続けている政府のせいじゃないですか。
そこに頬かむりして、企業の利益を維持するために、雇用の歪みを外国人で補うという安易な発想で、外国人を労働力としてしか見ていない。
そこには国家としてのビジョンも理念もありません。
安倍政権がいかにいい加減で空っぽかということが、よく分かる政策です」(経済評論家・斎藤満氏)

ヘイトの横行を是正どころか
率先して煽ってきた
 参院予算委で、共産党の小池書記局長に「新たに在留資格を与える外国人は雇用の調整弁か」と聞かれた安倍首相は、「調整弁という考えではない」「機械ではない、人間として受け入れる」などと答えていたが、だったら、拙速な受け入れに踏み切るべきではない。
 移民国家スイスの作家マックス・フリッシュは「我々は労働力を呼んだが、やってきたのは人間だった」という言葉を残している。
モノならば、不要になったら輸入を止めればいいが、人間はそうはいかない。
安く使うだけ使って、要らなくなったら「帰国しろ」なんて、そんな都合のいい話はないのだ。

 本来、外国人労働者と共生していくためには、教育の問題、社会保障、医療、法的アクセスなど、さまざまな環境整備が必要になる。
それらの具体的な方針もまったく示されず、「法案が成立してから中身は考える」という態度だから度し難い。

 発売中の「世界」(12月号)が、「移民社会への覚悟」という特集を組んでいる。
その中で、劇作家の平田オリザ氏がこう書いていた。

<現在の進め方は、あくまで、労働力不足を補うために、「外国人材」を「輸入」する、これは「移民」政策ではないのだ、というのが基本姿勢です。
開かれた多様な社会を指向し、差別のない、誰でも基本的人権の保障された社会をつくっていくという視点が、そこには全く欠けてしまっている。
それが最大の、根本的な問題です>

<安倍政権は、そもそもこうした問題に取り組むのには向いていないのかもしれません。
移民社会につながる動きに反発する民族主義的なウルトラ保守層と、労働力として外国人を迎え入れたい経済界という二つの矛盾した支持基盤を抱えているからです

 保身のためには財界にいい顔をしたいが、支持層から見放されても困る。
だから、「移民ではない」と強弁しているだけである。
移民ではないと言い張っているから、受け入れ対策も場当たりになり、議論が深まらない。
どうせ、トラブルが起きたら「自己責任」で地域に丸投げするつもりなのだろう。

■かつての「徴用工」を彷彿
 移民問題は米国の中間選挙でも注目された。
折しも、米国を目指す「移民キャラバン」が中米から北上中。
その長い列を見ていると、移民排斥のトランプ大統領から「シンゾー、移民も日本で引き受けろ」と因果を含められているのではないかと勘ぐってしまう。
「それは、あながち冗談では済まない話です。
今年のG7首脳会議の席上、トランプ大統領は安倍首相に対し、『日本にメキシコ人を2500万人送り込めば安倍政権は終わりだ』と脅したと伝えられました。
いくら安倍首相が入管法改正は移民政策ではないと言ったところで、3年、5年も日本に住めば、移民と同じ問題が起こります。
人間だから恋愛もするし、結婚したり、子どもを産むこともあるでしょう。
その時に、どう処遇するつもりなのか。
外国人に対する偏見が根強く、日常的に接する訓練がされていない日本では、外国人労働者の受け入れは混乱と差別を呼び、国際社会との軋轢を深める結果になりそうで心配です」(斎藤満氏=前出) 

 日本ではヘイトスピーチの規制も、ほとんど自治体任せで場当たり的だ。
国家として人権を守るという意識が低い。
しかも、ヘイトの横行を是正するどころか、自ら先頭に立って近隣諸国との対立を煽り、憎悪をかき立ててきたのが安倍ではなかったか。
そういう首相が旗を振る外国人労働者の拡大だから、胡散臭いのである。

 LGBTは「生産性がない」と、差別意識丸出しのヘイトをまき散らした杉田水脈衆院議員を野放しにしておいて、共生だ、多様性だとお題目を唱えたところで、しらじらしいだけだ。

 この政権は、国民を労働力、生産性としてしか見ていない。
それが外国人であれば、なおさらだ。
政府のそういう姿勢は、分断と憎悪を生む。
そんな国に誰が働きに行きたいと思うだろうか。
排他主義の極右首相が事実上の移民政策に前のめりになるグロテスク。

大企業や富裕層のために、外国から安い労働力を輸入してこき使うという魂胆そのものが差別的だ。
安倍政権の入管法改正は、かつての「徴用工」を想起させる。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 🌁 | Comment(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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