麻生財務相舌禍が波紋
反増税一揆が起こらない
摩訶不思議
2018/11/10 日刊ゲンダイ
必ず「レンポウ」と言い間違えるポンコツ五輪相の口より、放言財務相の口の方が、よほど「国難」を招いている。
朝日新聞がきのう(9日)付朝刊4面に掲載した2段見出しの記事の内容は衝撃的だ。
見出しは〈日米経済対話 また見送りに〉〈麻生氏の「ヒトラー発言」影響か〉。
約1年間、副総理を兼ねる麻生財務相とペンス米副大統領による「日米経済対話」が開かれていない理由として、麻生の過去の発言がトゲとなっている可能性があると報じたのだ。
問題視されているのは、昨年8月の派閥会合での麻生の暴言だ。
「(政治家は)結果が大事。
いくら動機が正しくても、何百万人も殺しちゃったヒトラーは、やっぱりいくら動機が正しくてもダメなんですよ」
ユダヤ人を大虐殺したヒトラーの「動機」を2度も肯定するなんて、国際社会では絶対に通用しない。
翌日に麻生は「ヒトラーは動機についても誤っていた」と暴言を撤回したが、その際も「ナチスは民主主義のルールにのっとって選ばれた政権だ」と捨てゼリフを吐く始末だった。
いくら撤回しても、ペンスは麻生を許さない。
翌9月の非公式協議は中止。
同年10月の第2回会合こそ開かれたが、以降は「懇談」のみ。
12、13日のペンスの来日時も麻生との「対話」は見送り、また「懇談」にとどまる方向で調整中だ。
朝日の記事は触れていなかったが、ペンスは「ユダヤ人国家」としてのイスラエルの強力な支持者だ。
トランプ政権が今年、イスラエルの首都をエルサレムと正式に認めた直後にも、イスラエル国会を訪問。
パレスチナ支援の中東諸国の批判を尻目に、「米大使館をイスラエルに移す」と公約してみせた。
麻生は2013年にも改憲を巡り「ナチスに学べ」と妄言を吐いた危険人物だ。
根っからヒトラーとナチスを肯定しているとしか思えず、口先だけで言い逃れても、イスラエル支持者のペンスは決して認めっこない。
「ペンス副大統領に限らず、トランプ政権はいわゆる『イスラエルロビー』の支持で成り立っています。
つまり、ナチス礼賛に当たる暴言を口にした麻生財務相が辞めなければ、日米経済対話は絶対に正常化しません。
かように人道意識と国際常識に欠けた大臣が居座る限り、国際社会における日本の地位を辱めることになります」(高千穂大教授・五野井郁夫氏=国際政治学)
存在するだけで外交上の国益を大きく損ねる麻生は即刻、辞任がスジである。
庶民の生活実感を理解できない
四角四面の対応
それでなくとも麻生は苦渋の作業に悩んだ職員の自殺まで誘引した森友文書改ざんの政治責任を一切果たそうとせず、常に上から目線の下品で下劣な放言の数々など、辞めるべき理由を挙げればキリがない。
大臣というより「人間失格」の男が長年、国民の血税を預かり差配する財務省トップに君臨しているだけで、おぞましい。ましてや生活全般に影響を及ぼす消費増税の“旗振り役”を任せるとは、もってのほかだ。
案の定、増税対応策は何から何まで混乱の極み。
国税庁は8日、軽減税率のQ&A集を拡充。
小売りや外食の現場で困惑が広がり、たった2年7カ月で4回も改定される異常事態だ。
飲食料品を持ち帰れば8%に据え置き、外食は「贅沢」だとして10%という仕分けだが、どちらにも明確に当てはまらない「グレーゾーン」だらけ。
スーパーやコンビニの店内外の休憩用ベンチも「飲食禁止」などと掲示しなければ「イートイン」とみなされる。
そこで飲み食いすれば「外食」扱いだが、持ち帰り用として税率8%で買った客に「気が変わった」と言い張られたら、店側が追及してもギクシャクするだけである。
さらに商店街のイスもテーブルもない焼き鳥屋の軒先で、持ち帰り用の砂肝を缶ビール片手にほおばっても「外食」と判断される可能性もある。
いかにも庶民の暮らしを知らない御曹司の麻生がトップの役所らしい四角四面な仕事ぶりだ。
経済ジャーナリストの荻原博子氏はこう言った。
「ミネラルウオーターに軽減税率を適用し、水道料金は対象外なのもおかしいし、そば屋も店内で食べれば10%で、出前は8%です。
出前の方が人件費はかさむのに、安いからと出前客が増えれば小さな店ほど干上がってしまう。
そもそも『イートイン』は贅沢ではありません。
家で料理するよりも、コンビニ弁当の方が安上がりだからという利用客も多い。
外食が贅沢ならば、なぜ、より贅沢な自動車と住宅ローンは減税するのか。
適当な線引きで金持ちを優遇し、経済弱者に痛みを強いるのはやめて欲しい」
■もはや存在自体がこの国にとって有害
中小規模の店舗限定で、キャッシュレス決済の買い物客に2%のポイントを還元する策も混乱の種だ。
政府は還元策への参加条件として、クレジットカード業界に中小店舗から徴収する手数料の引き下げを要請。
水面下で上限を3%台にするよう求めたもようだ。
手数料率は信用力が低い中小店舗ほど高い。
SMBC日興証券によると、4〜6%に設定された加盟店は全体の22%。
カード会社にすれば、還元策に参入し3%台に抑えられると2割強の店からの手数料収入が減る。
しかもカード会社の決済システムは、加盟店を店の規模で分類していない。
客が中小店舗でカードを使った場合のみを検知し、ポイントを還元するには大規模なシステム改修が必要だが、還元期間は増税後半年から1年程度を想定している。
そんな短期間のため、大規模改修に投資するバカはいない。
還元策が「笛吹けど踊らず」に終わるのは目に見えている。
「中小事業者が還元策に参加しても、手数料を徴収された上、カード会社から売上金の入金は早くても1カ月後。
街の豆腐屋のような現金商売の店にメリットは皆無です。
対応策の細部を詰めるほど、新たな課題が噴き出す悪循環は、安倍政権が消費税を“選挙のカード”に利用してきたことと無関係ではない。
14年衆院選、16年参院選と国政選挙に勝つために2度も先送りし、政治のオモチャのように扱ってきたから、いざ増税となると、国民にきちんと説明できずグダグダになる。
この政権に税に関する哲学がない証拠です」(荻原博子氏=前出)
前出の五野井郁夫氏は「これだけデタラメな政策を押しつけられても、クレジット会社も小売店も目に見える形で怒りの声を上げない。
フランスなどデモやストライキが当たり前の国にすれば、摩訶不思議に映ることでしょう」と指摘した。
今こそ納税者は反増税一揆を起こし、少なくとも国益を損ねる麻生だけは放逐する必要がある。
折しもきのう、市民団体「森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会」が、麻生辞任を求める1万699人分の署名を財務省に提出した。
呼びかけ人で東大名誉教授の醍醐聡氏は「今までの言動を考えれば、麻生大臣はクビが5本あっても足りないくらいです」と憤怒し、こう続けた。
「先日も麻生大臣は、不摂生で病気になった人の医療費負担は『あほらしい』と語った先輩の発言を会見で紹介し、『いいこと言うな』と肯定していた。
安倍政権が曲がりなりにも『全世代型社会保障』を掲げ、その財源のために消費税率を上げようとする矢先、担当大臣のこの発言だけで辞任に値します。
『健康な人は損』との発想がはびこると、元気な人と病弱な人とを分断し、国民皆保険など社会保障制度の基盤が崩壊しかねません。
もはや麻生大臣の存在自体が、この国にとって有害ですらあるのです」
あす(11日)午後2時には、東京・日比谷公園から「麻生辞任」を求めるデモ行進が始まる。
まず国民は怒りを顕在化し、政権に目にモノ見せるべきだ。