安倍首相「自衛隊募集に非協力的な自治体ある」発言の詐術と本音! 改憲で個人情報提供を強要し“現代の徴兵制”強化
2019.02.03 LITERA編集部
厚労省の不正調査問題をめぐる“アベノミクスの成果偽装”が大きく取りざたされている通常国会だが、忘れてはならないのは、安倍首相が悲願とする改憲の行方だ。
毎日新聞は1日付朝刊で「安倍首相『改憲』発言弱まる 参院選控え、機運しぼむ」と題し、〈1月31日の衆院本会議で、憲法改正について「各党の議論が深められ、国民的な理解も深まることを期待する」と抑制的な発言にとどめた。
夏の参院選を控えて改憲機運はしぼんでおり、各党を刺激するのは得策でないためだ〉との観測を伝えているが、永田町周辺では「安倍首相は参院選までは猫をかぶる作戦で、選挙が終われば本格的に改憲に乗り出してくる」という見方が強くある。 事実、安倍首相は30日の衆院本会議で、直接的に“9条改憲”に踏み込み、さらには“徴兵制”を彷彿とさせるような“国民の自衛隊勧誘”のための露骨な圧力発言までしているのである。
自民党・二階俊博幹事長の代表質問への答弁でのことだ。安倍首相は「私が自民党総裁として一石を投じた考え方は、現行の憲法第9条の第1項と第2項を残した上で、自衛隊の存在を憲法に明記することです」とあらためて強調し、自衛隊員の災害救助活動への評価をまるで自分の手柄のように語りながら、こう続けた。
「しかし、近年の調査でも、自衛隊は合憲と言い切る憲法学者は2割にとどまります。
『君たちは憲法違反かもしれないが、何かあれば命を張ってくれ』と言うのはあまりにも無責任ではないでしょうか。
多くの教科書に自衛隊の合憲性には議論がある旨の記述があります。
その教科書で、自衛隊員のお子さんたちも学んでいるんです」
いつもの“自衛隊員の子どもがかわいそう”なる扇動だ。
念のため言っておくが、現在使用されている7社の中学生向け公民教科書は両論併記で、断定的に「自衛隊は違憲」と記述している教科書はない。
これは一昨年前からずっと指摘され続けていることだ。
だいたい、安倍首相は自衛隊の災害救助活動をダシにしているが、違憲性が問題になっているのは戦力保持の部分であって、9条のままでも災害救助に違憲性は一切ない。
まったく、詭弁にもほどがある。
だが、問題はここからだ。安倍首相は「さらには、いまなお自衛隊に対するいわれなき批判や反対運動、自治体による非協力的な対応といった状況があるのも事実です」と言って、こんな批判をまくしたてたのである。
「たとえば、自衛隊の自衛官の募集は市町村の事務ですが、一部の自治体はその実施を拒否し、受験票の受理さえも行っていません。
また、防衛大臣からの要請にもかかわらず、全体の6割以上の自治体が隊員募集に必要となる、自治体から自衛隊員募集に必要となる所要の協力が得られていません。
優秀な人材確保のためには地域に密着した採用活動が重要ですが、自衛隊の採用説明会等のとり止めを求める要請が様々な団体により行われており、このため昨年、採用説明会がとり止めとなった事例もあります」
「このような状況に終止符を打つためにも自衛隊の存在を憲法上明確に位置付けることが必要ではないでしょうか 」
つまり、安倍首相は“自治体が自衛官募集を拒否している”ことなどが不当だと主張して、「それは自衛隊が違憲だと言われているからだ。
ゆえに改憲せねばならない!」とアジっているわけである。
自治体に個人情報を提供させ高校3年生に「現代の召集令状」配布
あまりの論理の破綻に呆れるが、その前に、この批判じたい、かなりの誇張表現が入っているだろう。
そもそも、自衛官の募集関連活動は主に各地にある自衛隊の総合窓口「地方協力本部」が行なっている。
自衛隊の試験には防衛大学校や幹部候補生、一般曹候補ほか様々な種類があるが、防衛省の自衛官募集ホームページではいずれも〈受験にあたっては、事前に志願票を最寄の地方協力本部へ提出してください〉とある。
その上で言うと、たしかに、自衛隊法97条では、自治体の長は〈自衛官及び自衛官候補生の募集に関する事務の一部を行う〉と記されている。
「募集に関する事務の一部」とは、募集期間の告知や市町村を窓口とした志願票の受理等(自衛隊法施行令114条ほか)を指す。
この自衛官募集事務をめぐっては70年代に“本土復帰”したばかりの沖縄で多くの革新自治体が拒否した例があった。
しかし、現在ではほとんどの自治体で自衛官募集事務は行われている。
いや、それどころか、防衛省・自衛隊は募集協力の名のもと、自治体に住民の個人情報を取得し、自衛官募集のダイレクトメールを送りつけるなどの行為の違法性すら指摘されているのだ。
たとえば、2014年7月に安倍政権が集団的自衛権行使容認を閣議決定したのと同時期には、高校3年生などに自衛官募集のDMが大量に送付され、ネット上などで「現代の召集令状か」などと不安視する声が多数あがった。
なぜ、自衛隊が国民の個人情報を持っているのかというと、自治体の住民基本台帳から個人の住所や生年月日などの情報を開示ないしは提出させているからだ。
とりわけ、自衛隊が自治体に名簿の提供を迫ることについては、個人情報保護上の問題を指摘する専門家の声が相次いでいる。
たとえば、法学者の園田寿・甲南大学法科大学院教授は「自衛官募集のために住民基本台帳の情報を自治体が紙などで提供するのは法的根拠がない。
住民基本台帳法で禁止する『個人情報の目的外利用』にあたり、違法だ」
「個人情報を扱う規定は同(自衛隊)法にも施行令にもなく、これらを根拠に提供を求めるのは拡大解釈だ」と指摘(朝日新聞2016年3月22日付)。
憲法学者の右崎正博・独協大法科大学院教授も「政令である自衛隊法施行令120条には、自治体に資料の提供義務があるとは明記されていない。
本人の同意なしに名簿まで提供できるとするのは自衛隊側の都合のいい拡大解釈だ」と批判したうえで、「自治体の担当者は『国の依頼だから』ではなく、住民のことを最優先に考え、主体的に判断していく必要がある」と語っている(朝日新聞西部地方版2016年1月14日付)。
志願者数が減少する自衛隊の現状、改憲で“本物の徴兵制”も視野か
ようするに、安倍首相は自衛隊の戦力等をめぐる憲法違反を「だから憲法を変えればいい」といって転倒させるのと同様に、個人情報上の違法が指摘されている自衛官勧誘のための名簿提出をネグって、厚顔にも「協力しない自治体が悪い」とすり替えているのだ。
あげく、自衛隊募集のための個人情報提出に反対する市民をやり玉にして、 総理大臣が国会の場で恫喝すらしてみせる。
まるで、戦争に協力しない国民や組織を政府が全体主義で糾弾した戦中のようなやり方だ。
市町村はつべこべ言わず住民を自衛隊に入れろ──完全に狂気だが、周知の通り、その背景には止まらない自衛隊志願者数の減少がある。
実際、自衛官候補生試験の応募者数は2013年の3万3534人から2017年には2万7510人にまで減った。
他方、この間、安倍政権は安保法制によって自衛隊の海外活動範囲を飛躍的に広げ、駆け付け警護の新任務など危険も増加した。
2014年の沖縄タイムスのインタビューでは、20代の元自衛官が「安倍政権になってから、内容が大幅に変わりました。
人を標的とする訓練が始まりました」
「軍隊としか思えません。1年に2回だった実戦訓練は実際、増えました」と証言している。
志願者の減少には少子化の影響ももちろんあるが、こうした“人を殺し、殺されるようになる”状況で、自衛隊に入ろうという国民が増えるはずがない。
だからこそ、安倍首相は自治体に公然と圧力をかけることで、リクルートを強制しようとしているのだろう。
これは、その先に事実上の徴兵制度が復活する可能性が十分にありうることを意味している。
「憲法18条には意に反する苦役、これはダメですよということが書いてあります。
そして徴兵制度の本質は、意思に反して強制的に兵士の義務を負うことです。
ですから、徴兵制は明確に憲法違反なんです」
安倍首相は2015年の安保国会の最中、自民党のネット番組でこう述べていた。
ならば、次は「徴兵制は憲法違反との指摘が根強くある。
ですから憲法を変えなければならないのであります」とでも言うのではないか。
冗談ではなく、安倍首相の詭弁を弄した9条改憲を許してしまえば、このまま一気に“戦時体制”へとなだれ込んでいくはずだ。
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