「人口減少」と「高齢化」進む日本のヤバい問題
年金も医療制度も「現状維持」では破綻する
2019/05/02 東洋経済オンライン
小林 昌裕 : 副業アカデミー代表
今年4月1日に働き方改革関連法が施行され、サラリーマンの副業・兼業が本格的に解禁になったが、そもそも政府はなぜ副業解禁を推し進めるのか。
そこにはネガティブな理由があった。
「副業アカデミー」代表であり、明治大学リバティアカデミー講師でもある小林昌裕氏が、
「政府が副業解禁を進めたがる理由」
「日本が近い将来に直面する大問題」について解説する。
これからの日本社会では、誰もが副業をするのが当たり前の時代がやってきます。
その動きはまだ始まったばかりですが、政府主導で副業が推進されているのが実情です。
2018年は「副業元年」と言われ、今後数年のうちに、この動きは加速していくでしょう。
すでに、ソフトバンクグループ、新生銀行、ユニ・チャーム、ロート製薬、コニカミノルタ、ソニー、花王、三菱自動車といった大企業でも副業を認め始めており、今後幅広い業種・業態へと拡大していくと見られています。
なぜこれほど副業が拡大しているのか。
その理由は、現在の日本社会が直面している問題にあります。
すなわち、「少子高齢化」です。
国立社会保障・人口問題研究所が発表した「日本の将来推計人口」(2017年)によると、2015年時点で1億2700万人いた日本の人口は、今の若者が高齢者となる2063年には9000万人を下回り、さらに100年後の2115年には5060万人まで激減すると試算されています。
それほど遠い将来の話でなくても、2036年には3人に1人が65歳以上という「超々高齢社会」が訪れようとしています。
「人口減少」と「高齢化」は回避できない
政治経済や外交問題に関する未来予測というのは、必ずしも当たるものではありません。
ただし、少なくとも人口予測に関しては極めて高い精度で的中します。
自身と日本社会の将来を考えるうえで、“人口減少”と“高齢化”は、大前提となるのです。
これは、かつて当たり前だったはずの“昭和型キャリアプラン”が、まもなく終焉を迎えようとしていることを意味します。
経済産業省の試算によると、「正社員になり定年まで勤めあげる」という生き方をする人は、1950年代生まれでは34%だったのに対し、1980年代生まれでは27%。
「結婚して、出産して、添い遂げる」という生き方をする人は1950年代生まれでは81%いたのに対し、1980年代生まれでは58%にとどまります(次官・若手プロジェクト「不安な個人、立ちすくむ国家」平成29年5月)。
「年金受給年齢」をどうしても引き上げたい政府
「夫は定年まで正社員」「妻は子持ちの専業主婦で、一生、夫に添いとげる」という昭和のモデルケースのような家庭は、もはやごく一部の富裕層に限られると言っていいでしょう。
定年年齢も段階的に引き上げられており、1980年代前半までは55歳が一般的でしたが、1986年に高年齢者雇用安定法(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律)が制定されると60歳定年が努力義務に。
2000年の改正法では65歳定年が努力義務となり、2012年改正法で完全に義務化されました。
政府は現在、70歳定年を目指していますが、これまでの流れから考えると、2020年代には実現するでしょう。
「人生100年時代」と言われるなか、健康な人であれば、80歳ぐらいまで働き続けるのが当たり前になるはずです。
政府が定年を延長したがる理由は、言うまでもなく公的年金の受給開始年齢を引き上げるためです。
年金を含めた社会保障にかかる費用は、2011年度は約108兆円だったのに対し、2025年度は約150兆円まで増大すると見られています(厚生労働省、2012年推計)。
およそ1.5倍です。
日本政府はすでに莫大な借金をしているため、これ以上の財政支出は不可能です。
このままでは、年金制度は破綻してしまう可能性が高い。
今の40代が高齢者になって年金を受け取れるのは、75歳か80歳になってから、なんてことになりかねません。
しかも、給付額が大幅に減るのは確実でしょう。
現在の医療費の自己負担割合は6〜70歳が3割、70〜74歳が2割、75歳以上が1割(70歳以上でも現役並み所得者は3割負担)となっていますが、いつまでも高齢者を優遇し続けることは、財政上不可能です。
2019年10月には消費税が10%に増税されるかもしれませんが、まだ足りない。
今後15%、18%、20%という具合に、上がり続けたとしても、まったく不思議ではないのです。
われわれは「長生きする可能性が高い」
仮に75歳まで定年が延長されたとしても、すべての人が健康で働き続けられるとは限りません。
2017年の日本人の平均寿命は女性が87.26歳、男性が81.09歳(厚生労働省「平成29年簡易生命表」)ですが、平均寿命はさらに延びる可能性が高い。
平均寿命とは、その年に生まれた赤ちゃんがその後何年生きるか推計したもので、例えば、2017年生まれの女性なら平均87.26歳まで生きるということです。
一方、ある年齢の人が、この先何年生きるかを推計したものは「平均余命」と言います。
例えば、2017年に65歳の女性なら、平均余命は24.43年(前出の簡易生命表)なので、89.43歳まで生きることになります。
つまり2017年において、0歳の女性の平均寿命は87.26歳でも、65歳の女性は89.43歳まで生きるということです。
自分が何歳まで生きるかを考えるときは、平均寿命ではなく平均余命で考えなくてはなりません。
平均余命で考えると、男性は90〜100歳、女性は100歳超まで人生は続く可能性が高いと思ったほうがいいでしょう。
医療経済学者で長浜バイオ大学教授(医学博士)の永田宏氏によると、今後も医療技術の進歩に伴い、平均余命はさらに延びる可能性が高いとされており、平均寿命を基準に考えていると、多くの人が“思ったより長生き”してしまうことになるそうです。