2019年05月16日

「べき論」を語る人が孤立しがちな本質的理由

「べき論」を語る人が孤立しがちな本質的理由
「巻きこめる人」になるための"3つの考え方"
2019/05/15 東洋経済オンライン
清水 久三子
: アンド・クリエイト代表取締役社長・人材育成コンサルタント

「巻き込める人」になるために
新年度、新しい時代の始まりにあたり、仕事で新たなチャレンジを始められる方も多いと思います。
どんな仕事でも1人だけで完結する仕事は少ないもの。
同じ仕事でも、周囲が心よくサポートしてくれる人と、そうでない人では大きな差が生まれてきます。

周囲の人に協力してもらえる力、つまり「巻き込み力」がある人になることは、今のような先の見えない時代で正解のないことに取り組んでいく際の大きな成功要因になります。
20代の頃、私はこの巻き込み力がないために、手痛い失敗をしました。
業務のやり方を統一する仕事で、ことごとく関係者の反対にあってしまったのです。

「やろうとしていることは正しいはずなのになぜ反対されるのかわからない」というのが当時の正直な気持ちでした。
その失敗から、どうやったら周りを巻き込んで物事を進められるのかを考え、「コンサルタント=変革の請負人だから、コンサルタントになればそのやり方が身につくのでは?」と考えたのが転職のきっかけでした。

その後発見したのは、実はテクニックそのものよりも考え方や視点を変えることが巻き込み力に必要であるということでした。
巻き込み力というと、「強いリーダーシップやカリスマ性がないとだめだ……」と思われるかもしれませんが、実は視点を切り替えることで巻き込み力を高めることができます。

3つの視点の切り替え方、1つ目は
そこでこの記事では、周囲の人に「この人に協力したい」と思ってもらえる3つの視点の切り替え方についてご紹介します。
「こうすべき(Should)」→「こうしたい(Want)」 「〜すべき」という考えは周囲の人を動かす強い考え方だと思われるかもしれませんが、この考え方で周囲を巻き込もうとすると実はあまり上手くいきません。
なぜなら、誰もが納得する絶対的な「べき」はないからです。

「べき」と言うといかにも正論のように聞こえますが、実際には「べき」は立場や環境、経験、時代によって変わるものであり、人は皆違う「べき」を持っています。
こう考えると、すべての「べき」は正しいかどうかわからないといってもよいでしょう。
つまり「べき」で相手を説得して巻き込もうとすると失敗しがちなのです。

職種や部門による「べき」の違いをあげてみましょう。
営業の人は「顧客の要求にきめ細やかに応えるべき」、
管理部門の人は「コストがかかる個別対応は会社の利益を減らすからやめるべき」というふうに立場が異なれば「べき」は変わってきます。

環境による「べき」の違いを挙げてみましょう。
東京ではエスカレーターは「右側を空けるべき」、大阪では「左側を空けるべき」という違いがあり、うっかり反対側に立っているとどつかれます。
さらには「エスカレーターの歩行は危険だから止まって乗るべき」という管理側の「べき」もあります。
つまり、「べき」論で周囲を巻き込もうとすると完全に一致する状況というのはあまりないため、衝突が生まれやすいのです。
ではどうすればいいでしょうか。

「こうしたい(Want)」という視点で切り替えて話すのです。

メリットは3つあります。
・相手の「べき」を否定しないため、共感が生まれやすい
・(仮に)考え方に違いがあっても問題になりにくい
・「ではどうしたらそうなるのか?」ということを一緒に考えてもらえる

私が新しい業務を導入した際には、私は「全員同じやり方で統一してやるべきだ」と強く主張し、周囲の人の「自分のやりやすいやり方でやるべきだ」という思いとぶつかっていました。

「べき論」を振りかざすのをやめたら…
その後は「べき論」を振りかざすのはやめて、「私は皆さんにこの新しいやり方でもっと楽をしてもらいたいと思っているのですが、どうしたらいいでしょうか?」という接し方に変えたところ、自分でも驚くほどの協力を得られるようになりました。

「何をするか(What)」→「なぜやるのか(Why)」 「何をするか」という考え方は人を引きつけるように思われますが、いつもそうとは限りません。
やることは、状況の変化とともに変わることも多いからです。
自分が「こうしよう!」と掲げたこと=Whatに一時的に協力が集まったとしても、状況が変わるともっとよいWhatに人の心が移って行くことは想像にかたくありませんし、自分自身が試行錯誤し、学んでいくことでWhatが変わることもあるでしょう。

巻き込み力にはブレない芯が必要です。
ころころ変わるWhatに協力を仰ぐよりも、ブレない信念に共感してもらうほうが、結果的に強い協力を得ることができます。
信念とは「なぜそれをやろうと思っているのか」=Whyのことです。

Whyへの共感は強く長く続きますが、人を引きつけるWhyとあまり引きつけないWhyがあります。
ビジネス訓話としてもよく取り上げられる「3人のレンガ職人」というイソップ童話は、このWhyの違いを端的に表しているのでご紹介します。

ある旅人が街を歩いていると、1人の男が道の脇で難しそうな顔をしながらレンガを積んでいました。
旅人は、その男のそばに立ち止まって尋ねました。
「ここでいったい何をしているのですか?」
すると、男はこう答えました。
「レンガ積みに決まっているだろ。
雨の日も風の日も、暑い日も寒い日も1日中レンガ積みだ。
なんでオレはこんなことを毎日しなければならないんだろう」
旅人は、その男に「大変ですね」と慰めの言葉を残して歩き続けました。

しばらく行くと、一生懸命レンガを積んでいる別の男に出会いました。
そこで、また旅人は「ここでいったい何をしているのですか?」と尋ねたところ、男はこう答えました。
「大きな壁をつくっているんだよ。この仕事で私は家族を養ってるんだ。この仕事があるから家族全員が食べていけるのだから、大変だなんて言ったらバチが当たるよ」
旅人は、その男に励ましの言葉を残して歩き続けました。

さらにもう少し歩くと、別の男がイキイキと楽しそうにレンガを積んでいました。
旅人は興味深く「ここでいったい何をしているのですか?」と尋ねました。
すると男は目を輝かせてこう答えました。
「歴史に残る偉大な大聖堂をつくっているんだ。ここで多くの人が祝福を受け、悲しみを払うんだ。素晴らしいだろう!」
旅人は、その男にお礼の言葉を残して、元気いっぱいに歩き始めました。

1人目にはそもそもWhyがありません。
そこにあるのはやらされ感です。
やらされ仕事に周囲の人を巻き込むのは難しそうです。

2人目のWhyは「生活費を稼ぎたいから」。
これが家族のためでもなく、とにかく稼ぎたいというWhyだった場合にはあまり賛同を得られることはないでしょう。

3人目のWhyは「人を救う建物をつくることで世の中に貢献したいから」です。
このWhyは多くの人が賛同するでしょう。
結果として応援が集まり、レンガを積む仕事だけではなく、大聖堂を建てる重要な仕事を任されるかもしれません。
よいWhyとそうでないWhy このようによいWhyには人が集まり、そうでないWhyからは人が離れて孤独になっていくのです。

物事を始める動機として稼ぎたいなどの欲望があることを否定するわけではありません。
人を巻き込むということを考えるのであれば、共感されるWhyを自分の中に持っている必要があるということです。

「巻き込み力」→「巻き込まれ力」 最後は意外かもしれませんが、巻き込み力を高めたいのであれば、自分が巻き込まれる力を強くする必要があります。
日本は同調圧力が強いと言われていますが、自ら巻き込まれる力は、空気を読んで同調圧力に従うということではありません。
他の人がチャレンジしようとしている取り組みや未知なる領域の取り組みに対して、自分から飛び込んでいく力のことです。この経験が、結果的に自分が何かをする際の巻き込み力につながるのです。

日本マイクロソフト社では「巻き込まれ力」を評価対象としているそうです。

主に3つの評価軸があり、
1つは、自分に与えられた責任をどれだけ果たしたか。
2つ目は、それを実現するために、どれだけ多くの人を巻き込んだか。
3つ目は、他者の成功に自分がどれだけ巻き込まれて貢献したか。

自分の仕事ではないから……と人に協力しなければ、自分が協力してほしい時も協力してもらえないというのは考えてみれば当然のことかもしれませんが、実際にはそうなりがちです。
ですので、意識的に「巻き込まれよう」と行動しなければ巻き込まれ力が強くなることはありません。

巻き込まれ力を高めるには、まずは自分がどんな人物なのか、何に興味があるのか、どんな強みがあるのか……などを情報として発信する必要があります。
今だとSNSなどがあり、情報発信しやすいでしょう。
SNSをリア充アピールのために使うだけではなく、自分が巻き込まれるきっかけ作りと考えて情報発信してみるとよいのではないでしょうか。

もう1つは巻き込まれる機会を短期的な損得勘定で捉えないということです。
自分が得られるものを金銭や評価などで考えると巻き込まれ力は弱まります。
直接その取り組みから得られるものではなく、自分が得られる経験の方が重要だと考えてみましょう。
自分が巻き込まれていくことで、視野が広がり、視座が上がります。

古代哲学者アリストテレスは、人を説得するには、ロゴス(論理)、パトス(熱意)、エトス(人格)の3つが必要だと説いています。
どんなに論理的に情熱を持って話したとしても、自分を信じてもらえなければ巻き込むことはできません。
エトス(人格)の中でも最も重要だといわれているのが実践から得られた知恵を持っていることです。
いろいろな取り組みに自ら巻き込まれていくことで、この実践知が蓄えられ、結果的に人を巻き込むことができるようになります。
多くの方が巻き込み力、巻き込まれ力を高めていくことで、社会がよい方向に向かっていくことを願っています。
posted by 小だぬき at 00:00| 神奈川 ☁| Comment(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]