既成政党への絶望感が「れいわ」と「N国」を生み出した
2019/08/04 日刊ゲンダイ(伊藤惇夫政治アナリスト)
今回の参議院選挙で法に基づく政党要件を満たした2つの新しい政党が誕生した。
1つは山本太郎が立ち上げた「れいわ新選組」であり、もう1つが「NHKから国民を守る党」である。
選挙戦の途中から注目を浴び始めた「れいわ」は山本太郎への個人票99万票余りを含む約228万票を獲得し2議席を。
当初、だれもが半分冗談だと思っていたはずの「N国」もなんと比例で100万票弱を獲得し、1議席を得てしまった。
参議院選挙は政権選択の総選挙と違うため、有権者は「遊ぶ」、つまり面白がって投票する傾向が強いといわれている。
それにしても、「れいわ」はともかく、どう見ても“真面目”とは思えない「N国」までが議席を獲得したのはなぜか。
そこには有権者の既成政党の劣化に対する絶望感が見て取れる。
前回は野党の劣化を指摘したが、実は劣化しているのは野党だけではなく、一見、盤石にも見える与党も劣化が進行中だといえるだろう。
及第点といえる議席を確保した自民党だが、それを支えたのは既得権益を失いたくない固定的支持層以外は「他にないから」「安定第一」といった消極的な支持が多くを占めていたはずだ。
公明党も議席数こそ増やしたが、比例で100万票以上減らしたことから見て、支持母体である創価学会の集票力低下や学会以外の支持が剥がれ落ちている実態が浮かび上がる。
一方の野党を見ると、国民民主は比例でたった350万票弱しか獲得できず、躍進が予想されていた立憲民主も比例は800万票弱、全体で17議席しか獲得できなかった。
与党への消極的支持と野党に対する期待感の低下、それを全体としてみれば、既成政党全体に対する有権者の失望感、絶望感という言葉に置き換えてもいいのではないか。
有権者はすでに与党に対しても、野党に対しても何の期待感も抱いておらず、むしろ見放し始めているのかもしれない。
だからこその「れいわ」であり「N国」であって、この結果は有権者の既成政党に対する意識的な“反乱”行為だったと見ることもできる。
「れいわ」に関しては徹底したSNSの駆使と左派ポピュリズムともいえるような社会的弱者や貧困層をターゲットにした戦略が、本来は既成の野党が掘り起こすべき層にアピールした結果だろう。
一方の「N国」は、「既成政党のどれにも投票したくない」という有権者が、たまたま「面白そう」という意識で投票したことによる部分が大きいと思われる。
その結果が、議員辞職して当然の丸山某まで入党させるという暴走行為を引き起こしているわけだが、責められるべきはむしろ、そんな政党を誕生させてしまった既成政党のほうかもしれない。