日本人の6割が感じる「生きづらさ」向き合うための3つのコツ
2019年08月19日 SPA!
―[[生きづらい病]の正体]―
仕事や家庭などさまざまな場面で感じる「生きづらさ」が日本人に蔓延している。
30〜55歳までの男女2000人を対象にしたアンケート調査でも64.5%の人が生きづらいと感じている現代社会。
もはや国民病とも言える、その病理に迫る!
◆「生きづらさ」とどう向き合うべきか?
「生きづらい病」を抱えた人は、どう折り合いをつけるべきか?
「まずは生きづらい理由を整理し、理解すること。
そのうえで自身が悩まされている気質や障害、疾患について詳しく知ることです。
そこから特性を生かせる働き方や生き方を模索できたり、治療するための対策を考えていけたりと第一歩を踏み出すことができます」(HSP専門カウンセラー・みさきじゅり氏)
※HSPとは?…
「ハイリー・センシティブ・パーソン」の略。
感覚から得た情報を処理する神経が敏感で、刺激や他人の感情に過敏に反応してしまう特性を持つ
HSP当事者である川村博行さん(仮名・40歳)も、カウンセリングを受けながら自身のHSPの特性と折り合いをつけている最中だ。
「社会人時代はいっぱいいっぱいで気づきませんでしたが、今は相手の感情や細かい表情の変化に気づけるHSPの特性は1対1のビジネスに役立つスキルだと感じています。
特性がデメリットだけじゃないと思えるようになって心が軽くなりました」
HSPに限らず「他者との比較をやめ、環境やペース、適性など自分にとって働きやすい環境を自分で選んだという仕事に対する肯定感が重要」(みさき氏)だという。
また、多くの日本人が生きづらさの理由として直面する“対人関係でのつまずき”。
精神科医の西脇俊二氏は、「専門医にかかるまでもなく、対人関係を良化させるコツは3つしかない」と断言する。
「1つ目は『他人に期待しないこと』。
対人関係でつまずく理由の多くは、他人が思ったとおりに行動してくれなかったり評価してくれないことがストレスになり生まれるもの。
自分自身は変えられても他人の感情や思考を変えることはできません。
他人にはとことん期待せずにいたほうが、心穏やかに生きられます。
そして2つ目は『自分にも期待しないこと』。
自分には“できること”と“できないこと”があることを理解し、『うまくいかないことがあっても当然』と考えて落ち込まないようにする。
もちろんすべてを諦めるのではなく、“できること”のスキルを伸ばす努力は不可欠です」
他人にも自分にも期待をするからこそ、うまくいかなくなったときに生きづらさを感じてしまう。
◆意識的に他者の承認欲求を満たすことを考える
これら2つを踏まえたうえでもっとも重要なのが3つ目だ。
「最後は『他人の承認欲求を満たしてあげること』。
承認欲求は誰しもが持ち、飢えているものですが、それを意識的に『他人に与えよう』と考えている人は非常に少ない。
これが生きづらさが蔓延するひとつの理由とも言えます。
自分の承認欲求を満たすことばかり考えるのではなく、意識的に他者を褒めたり認めることで周囲の人の承認欲求を満たすことを考える。
そうすることでおのずと人から求められるようになり、自分の承認欲求も満たされることに繋がります」(西脇氏)
言わばこの3点は対人関係の核だが、こうした意識改革はすぐに実践できるものではない。
「まずは2週間から1か月。
メモに書いて貼ったり、スマホの待ち受け画面に書き込むなど、ことあるごとに思い出し心がければ、徐々に思考法が身につきストレスが軽減する」(同)という。
つかみどころのない“生きづらさ”に悩まされ続けるのではなく、その理由を知ったうえで対策を実践することが、一番の近道なのかもしれない。
◆タイプ別「生きづらさ」の対処法
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<HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)>
HSPの特性をみずからの個性として受け入れることが折り合いをつけるための第一歩。
外出時はイヤホンで雑音を遮断する、会社から近いエリアに住み電車通勤の負担を減らす、「コピー機の横だと気が散るので」と上司に伝えて社内での席を配慮してもらうなど、積極的に個人で対策を取ることも忘れずに
<発達障害>
近年はソーシャルスキルトレーニング(SST)と呼ばれる発達障害者の社会的自立、生活の不自由をなくすための療育プログラムも充実。
ADHDなら投薬治療で症状を抑えることも可能。
グレーゾーンであれ、希望すればこうした治療を受けられる。
当事者会に参加し悩みを共有するのもひとつの手段だ
<複雑性PTSD(心的外傷後ストレス障害)>
個人で無理に過去のトラウマと向き合おうとするのは精神的負担が大きいためオススメできない。
医師の診断、カウンセリングを受けながら指示を仰ぐのがベター。
抗うつ剤による投薬治療という選択肢もあるが、対症療法にすぎず根本となるトラウマを解消するものではないので坂本医師は推奨していない
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◆「生きづらい病」の人たちとの接し方
では、生きづらさを抱える人に周囲はどう接するべきか?
「何事も深く考え込む特性をもつHSPですが、『考えすぎだ』『気にしすぎだ』といったワードは当事者の個性を否定することになるのでNG。
HSPは感情や神経が乱高下しやすい面がありますが、そういうときには非難するのではなく『大丈夫だよ』と安心させる声をかけてほしいです」(前出・みさき氏)
ミスへの対策を、ともに話し合うのもひとつの手段だ。
「ケアレスミスが多いなら『次はこうしてみたらどうだろう?』などとアイデアを一緒に出していくようにしましょう。
高圧的に指導して治そうとしたり、自分たちの仕事のやり方を無理強いしたりはしないほうがよいと思います」(前出・西脇氏)
周囲が理解を示す姿勢を見せてこそ、「生きづらさ」は解消されるものなのだ。
<取材・文/週刊SPA!編集部>
―[[生きづらい病]の正体]―