会社の言いなり労組は無用の長物
自民党支持に転換しては
2019/10/03 日刊ゲンダイ(高野孟)
なかなか進まないだろうとみられていた立憲民主党と国民民主党の統一会派結成が、立憲が主導権を握る形で進展しているため、電力総連が慌てているという。
電力会社の労組からなる同総連は、脱原発をはっきりと掲げている立憲に見切りをつけ、国民を支持することで何とか原発推進の旗を死守しようとしてきた。
そのため、先の参院選で連合傘下の労組は、電力はじめ民間大企業労組は国民、自治労や日教組など官公労中心の旧総評系は立憲と2つに分かれ、それぞれの比例名簿に組織内候補を並べた。
それなのに国民が次第に立憲に寄っていくのは心外で、国民の玉木雄一郎代表にたびたび「政策を曲げてまで立憲に合流すべきではない」と申し入れ、ブレーキをかけようと躍起になってきた。
しかし、立憲の中堅議員に聞くと「玉木とウチの枝野幸男代表との間では、裏で話がついているんじゃないか」と言う。
「玉木も本気で原発推進しようなどと考えていないから、電力総連に対しては『ハイハイ、分かりました』と言ってあしらいながら、結局、枝野の原発ゼロに限りなく近づいていくのだろう」と。 それでは電力や連合は怒るだろう。
「いや、怒ってもいいんです。
世間ではまだ旧民進党系の組織基盤は労組だなんて言っている人がいるが、とんでもない。
今や選挙でも、特に民間労組なんか何の力にもならない。
どうしても原発推進にこだわるなら、早く離れていって自民党支持に転換すればいいんじゃないですか。
そのほうがお互いにスッキリする」と冷たい態度である。
実際、電力総連もいつまでも会社と一体になって原発にしがみついていても仕方がないだろう。
ドイツのメルケル政権は日本の福島第1原発事故を見てサッサと脱原発に舵を切ったが、その時、原発メーカーのシーメンスの労組を含むドイツ最大の労組である金属産業労組(IGM)は真っ先に脱原発を打ち出してこの転換に大いに貢献した。
会社の経営者は目先の利益のことばかり考えてなかなか踏み切れないが、労組はもっと広い社会的な視野と未来への展望を持って独自の判断をし、経営陣に対して堂々と論争をしかけていく。
会社の言いなりになって金魚のふんのように後を付いていくだけの労組なんて、もはや無用の長物ということである。