2019年11月25日

相続で揉めないための、賢い「生前贈与」の方法とは

相続で揉めないための、賢い「生前贈与」の方法とは
2019.11.24 ダイヤモンドオンライン
出口秀樹:税理士

知らないと損をする節税のノウハウを、税理士・出口秀樹氏の新著『知れば知るほど得する税金の本』からの抜粋で徹底解説します。
今回のテーマは「贈与税」。

資産を持つ人にとっては、相続と併せて、生前に子供に財産を贈与できれば安心が増します。
なるべく税負担を少なくする贈与の仕方はあるのでしょうか。

生前にまとまった額の贈与が可能な制度
「贈与税」は、贈与を受けた人に対して課税されます。
その贈与を受けたことに対してかかるので、生活費、または社会慣習上以外のものについてはすべて課税されることになるのです。
 たとえば1年間でトータル100万円もらっても税金はかかりません。
すべての贈与ということに対して税金をかけていたら、税務署も納税する人も大変なことになります。
ですので、贈与税では「基礎控除額」を設けています。
それは年間110万円です。
やや中途半端な金額ですが、税法上そのように定められています。

 ただ、基礎控除額の110万円という金額では、大きな財産を移すことは基本的に不可能だといえます。
ある人が保有している財産を生前に移動させることが、税負担のためにできないというのは社会全体にとって、あまり良いことではありません。
 不動産や現金など、高齢者が保有し続けることで、その利用が停滞してしまい、景気に悪影響が出るとも考えられるからです。  
そこで、ある程度まとまった金額の財産を生前に子供に贈与しやすくするために考えられたのが、「相続時精算課税制度」です。

失敗しない「相続時精算課税制度」の使い方
 贈与税とは相続税を補完するための税金ですが、相続時精算課税制度は高税率の贈与税を課すのではなく、相続税の前払いとして一定の金額を概算で負担させておき、相続が発生した時点でそれを精算するという方法をとっています。
 そのため基礎控除額は2500万円というまとまった金額にし、それを超える場合はその超えた金額の20%を前払いとしての贈与税として支払うことにしているのです。

 相続税の基礎控除額は、平成27年から改正され、3000万円+600万円×法定相続人の数という金額ですので、明らかに相続税のほうが負担は軽くなっています。
 その贈与税に比べて軽い負担の相続税の税率を適用させる上で、相続時精算課税制度は最適なものだといえるのです。
「相続時精算課税制度」を利用するには、いくつかの注意点があります。

◆一度選択すると後戻りできない制度であること
 この相続時精算課税制度を利用すると、従来の基礎控除110万円の一般贈与制度で贈与することはできません。
一度選択すると、その人からの贈与に関しては、その後すべて相続時精算課税制度で計算されることになります。

◆適用する最初の年には必ず届出書を提出すること
 この相続時精算課税制度は、選択制なので所轄税務署長に適用初年度の申告期限までに、“相続時精算課税選択届出書”を一定の添付書類と一緒に提出しなければなりません。
贈与税がゼロであっても、贈与税の申告書も提出しなければなりません。

◆2500万円という金額は“累積”であるということ
 基礎控除額が2500万円というのは、“累積の金額”です。
つまり昨年2000万円贈与を受け、今年500万円の贈与を受けた場合、基礎控除額の余裕はなくなり、次の年の贈与分からは20%の税率で課税されてしまいます。
一般贈与の110万円の基礎控除は、1年ごとの金額なので、取り扱いがまったく異なります。

もめずに生前贈与するための制度
◆必ずしも相続税対策にならない制度であること
 相続税対策として贈与という方法を使うことは一般的ですが、こと「相続時精算課税制度」では必ずしも「税金」対策になるとはいえません。
相続時精算課税制度の場合、贈与した財産は贈与された人のものにはなりますが、相続税の計算をする際には贈与した人の財産として計算をするため、生前贈与をしてもしなくても最終的な結果は同じなのです。
相続時精算課税制度は“争族”対策であって、必ずしも相続“税”対策とはなりません。

将来、相続が起きた時に、争いがないように生前に財産の分配をこの制度を利用して行うということが、この制度を利用する上でもっとも効果が期待できるところなのです。

揉めずに生前贈与するための制度
税金対策としては、使われる機会は少ない相続時精算課税制度ですが、生前にまとまった財産を贈与することができるということを利用して、他にもこんな使い方が考えられます。

◆相続が起きると兄弟間で揉めそうなケース
 財産額が多い少ないに関係なく、遺産争いが起きる可能性はあります。
たとえば財産の大部分が土地の場合、それを各相続人に納得させた上で分けることは、なかなか難しいものです。
そのような場合、効果的なのは生前に分け方をある程度決めてしまい、その分け方に基づいて贈与するという方法です。
そういう時こそ相続時精算課税制度が効果を発揮するのです。

◆子供に早いうちから財産を与えるようなケース
 たとえば、子供がサラリーマンでマイホームを建てた場合には、かなりの借金を背負うことになります。
一方、親がまとまったお金を持っていて、日常生活に何の支障もないようなケースの場合、親からの生前贈与をお金で行い、その贈与されたお金で住宅ローン返済を行ったとすると、子供は無駄な金利を金融機関に支払わなくて良くなります。
親子一体でみれば、金利の節約が可能となります。

◆“収益力の贈与”を行うケース
 たとえば財産に賃貸用不動産を持っているような方が、この方法を使えます。
このケースでは子供に物件を贈与することにより、その後入金される賃貸料を、そっくり子供のものとすることができます。これを“収益力の贈与”といいます。
この場合、相続税対策となりますし、親子で所得を分散することによって、結果として所得税の節税になります。

注意して使えば節税につながる“連年贈与”
◆税金対策になるケース  この制度を利用しても、相続税の対策としてはそれほど期待できませんが、やりようによっては税金対策になるものもあります。
たとえば将来的に価値が上がりそうなものを、現在の低い評価のうちに贈与する場合です
その財産が将来的に値上がりをしたとしても、相続時の評価額は贈与時の価格のままなので、結果として相続税の節税になります。

 相続税の対策として、生前贈与(一般贈与)は有効なものの一つです。
生前に財産のうちの一部でも、先に子供に移動させることによって最終的な相続税の税額を抑えることが期待できます。
具体的なやり方としては、毎年贈与する方法が考えられます。
 最初に自分の財産総額と負債総額、その差額である純資産額の把握から始めます。
純資産額が把握できると、法定相続による相続税の概算金額を計算します。
そうすると純資産額に対する税金がどの程度の率で課されるかがわかるはずです。

 生前贈与は、この試算した相続税の実効税率より低い贈与税率で財産を毎年贈与することで、相続税と贈与税トータルの税金で節税を行うという考え方です。
ただし、生前贈与を行う上で注意しなければならないことがいくつかあります。

◆贈与したことを表す書類の整備
“贈与”は書面にすることで、確実なものになります。
口頭だけの約束、お金の移動だけでは、本当に贈与があったのかもわかりません。
“贈与証書”など書面で贈与の事実があったことを証明できるものを残しておく必要があります。

◆贈与のお金の流れは明確に
 特に現金で贈与する場合は、金融機関の振込などを利用して贈与すると良いでしょう。
振込という方法をとることによって、贈与の跡を残しておく工夫も必要なのです。

◆毎年同じ日、同じ金額を贈与しない
 毎年、同じ日、同じ金額を贈与したとすると、最初から毎年の贈与額×年数分を贈与するつもりだったと疑われかねません。
税務署から余計な疑いを持たれないようにするためにも、この方法での贈与は避けたほうが良いでしょう。

◆贈与された人に贈与の事実をきちんと知らせる  
よくあるケースで、子供に内緒で贈与している場合があります。
これでは、そもそも贈与になりません。
必ず贈与した事実がわかるようにしておいてください。

◆3年以内の贈与について
 相続開始前、3年以内の贈与については、贈与がなかったものとされ、贈与された財産は相続税の対象として計算されることになります。
できれば相続間近で贈与するのではなく、時間的に余裕を持って贈与したほうが良いのです。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☁ | Comment(2) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
勉強になるわ♪
Posted by みゆきん at 2019年11月25日 15:53
相続税の控除は 3000万+1人600万×相続人 まで税はかかりません。
改悪前までは、5000万+1人1000万×相続人 だったので税は 一般の人は殆どかかりませんでした。

相続人の相続配分は 伴侶に対しては1/2、子どもは等分です。
ただ 遺産相続合意書作成に寄り 話し合いで配分ができます。
年々、広く浅く徴収する方向で 改悪されています。









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Posted by 小だぬき at 2019年11月25日 18:49
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