消費動向で衝撃のデータ 増税の影響軽微は大ウソだった
2019/11/30 日刊ゲンダイ
この国はもう二度と立ち直れないのではないのか。
経産省は29日、10月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み)を公表。
速報値は98・9で、前月を4・2%下回った。
指数が100を割り込むのは16年7月以来、3年3カ月ぶり。
下げ幅は18年1月以来、1年9カ月ぶりの大きさだ。
同指数は企業の生産活動を示す。
悪化ということは企業活動が停滞基調にあることを意味しているワケだが、確かに10月の経済指標は、どの業界も総じてメタメタだ。
原因はもちろん決まっている。
国民世論の強い反対を押し切り、安倍政権が強引に引き上げた10月からの「消費税10%」だろう。
経産省の商業動態統計速報(10月)によると、小売販売額は前年同月比7・1%減の11兆900億円。
15年3月以来、実に4年7カ月ぶりの大幅な落ち込みとなり、前回の消費税率が5%から8%に引き上げられた14年4月(4・3%減)よりも下落幅が大きくなった。
業種別では全9業種のうち8業種で販売額が減少。
17・0%減となった自動車の国内販売台数は、大手7社すべてで前年同月割れ。
台風19号の影響で群馬県内の工場の操業停止を余儀なくされた「SUBARU(スバル)」(48・5%)をはじめ、「ホンダ」(39・5%減)、「三菱自動車」(30・0%減)、「日産自動車」(29・9%減)、「トヨタ自動車」(22・6%減)、「マツダ」(14・4%減)、「スズキ」(8・8%減)と軒並み酷かった。
■国民の厳しい家計状況を見ようとしない政府
自動車に次いで、落ち込みが大きかったのが「百貨店」と「家電量販店」だ。
日本百貨店協会が発表した全国百貨店売上高は、既存店ベースで前年同月比17・5%減となり、3カ月ぶりのマイナス。
やはり、前回の増税時(12・0%減)よりも減少幅が拡大した。
14・2%減となった「家電量販店」を個別に見ると、「ケーズホールディングス(HD)」は冷蔵庫の販売額が前年同月比で約3割も減少。
「ビックカメラ」は全店の売上高が2割ダウンだ。
他の分野も目を覆いたくなるような惨状で、「市販薬」の販売額は前年同月比で88・6%と過去、例を見ないほど落ち込んだ。
誰がどう見ても景気は悪化の一途。
地獄の扉が開き始めたのも同然なのに、例によって悪辣政権は〈緩やかに回復している〉(月例経済報告)などと、鉛筆ナメナメの作文でごまかそうとしているから許し難い。
経済財政諮問会議(議長・安倍首相)も、2020年度予算編成の基本方針で、消費増税の下振れリスクに備える必要性を明記したが、小手先の対策では、もはや何をやっても焼け石に水だろう。
埼玉学園大の相澤幸悦教授(金融論)がこう言う。
「米中貿易戦争や鈍化が指摘されている欧州経済など、すでに世界的に見て景気は悪化傾向にあるにもかかわらず、日本政府は消費増税を強行したのですから、経済が落ち込むのは当たり前。
賃金は増えず、年金などの将来不安が強い消費者が財布の紐を締めるのは当然でしょう。
問題は、そういう国民の厳しい家計状況を政府が見ていない、理解していないことです」
安倍政権は消費増税しながら財政を破綻させようとしている
赤坂のふぐ料理店「い津み」(28日)、新宿のフランス料理店「オテル・ドゥ・ミクニ」(21日)、平河町の中国料理店「上海大飯店」(20日)、「紀尾井倶楽部」(19日)、有楽町の日本料理店「春秋ツギハギ日比谷」(18日)……。なるほど、連夜のように都内の高級飲食店を渡り歩き、豪華料理に舌鼓を打っている安倍にとっては、生活苦にあえぎ、1円、2円の食費を切り詰めながら懸命に生きている庶民の実情など分かるはずもない。
国民生活にこれっぽっちも関心がないのだから、打ち出される施策も現実を知らない場当たり的なものばかり。
増税対策と称して鳴り物入りで導入された「プレミアム付き商品券」や「キャッシュレス決済のポイント還元制度」だって、経済指標を見る限り、消費の下支えにはほとんど役に立っていないと言っていい。
とりわけ、ポイント還元に至っては愚の極みだろう。
政府は多額の予算を投じて加盟店を増やせ! と大号令をかけていたのに、いざ加盟店が増えたら、今度は還元する財源が千数百億円も足りなくなり、慌てて補正予算を組むというデタラメぶり。
税収を増やすために増税しながら、その対策費が膨らんでカネが足りなくなったなんて、全くメチャクチャだ。
そうしたら、今度はマイナンバーカードを持つ人向けのポイント還元に2000億円を投じるとか言いだしているからマトモじゃない。
一体何のために増税したのか。
社会保障に充てるという本来の目的はどこに消えたのか。
「10月消費税10%ストップ!ネットワーク」の呼び掛け人を務めた東大名誉教授の醍醐聰氏がこう言う。
「2%増税分の見込み税収5・7兆円のうち、ポイント還元や軽減税率適用によって粗税は1・9兆円ほど。
つまり、大部分は増税対策に消えるわけで、ハナから社会保障に充てる気などないのでしょう。
マイナンバーカードのポイント還元という話が出てくる状況から見ても明らかです。
今の政権は増税しながら財政を破滅させようとしているとしか思えません」
■増税前に必死に生活防衛に動いていた高齢者
「引き上げ幅が前回に比べて小さく、軽減税率や幼児教育の無償化などの措置が実施されているので、影響の大きさは前回増税時よりも小幅とみている」
11月19日の参院財政金融委。増税の影響について問われた日銀の黒田東彦総裁はこう言って増税の影響は軽微だと強調。
月例経済報告も、個人消費は「持ち直している」に据え置いたが、本気で言っているとしたら錯乱しているとしか思えない。
経済評論家の斎藤満氏は「8%から10%の2%増は決して軽微ではない。
経済指標を見ても国内経済がおかしくなっているのは間違いなく、日銀や政府の見方は机上の空論」と切り捨て、こう続ける。
「家計調査の結果を見ると、無職世帯(年金世帯)の消費支出は8月に3・8%増、9月は11・9%増でした。
つまり、収入が限られ、年金も先細りになる高齢者らが増税前に必死に生活防衛に動いていたことが分かります。
本来は、こうした世帯に対する施策を充実させるべきなのに、キャッシュレスなど全く的外れのことをやっているのが今の政権です。
消費税は1年限りで終わりはなく、未来永劫、(このままだと)10%が続くのです。
一部の富裕層であれば何とかなるかもしれないが、年金世帯ではとてもカバーしきれないでしょう。
このままだと、生活できない世帯も増えるのではないか。今後の影響は計り知れません」
結局、アベ政治とは、金持ちとお友達を優遇するだけ。
アベノミクスにしても一部の株主が儲けただけだ。
狂乱政治のツケが、いよいよ国民を襲う日が迫っているのだ。