緊急事態宣言を延長するなら、内閣総辞職を約束せよ!
2020年05月01日 SPA!【倉山 満】
◆安倍首相よ、緊急事態宣言を延長したいのならば、内閣総辞職を約束せよ!
南無妙法蓮華経!
自民党と官僚機構が政権担当能力を失い大混乱する中、創価学会と公明党だけが正気だった。
安倍内閣は、「経済対策になっていない経済対策」を示した。
これに対して異を唱えたのが、公明党である。
支持母体の創価学会から「これでは学会員はほとんど対象とならない!」と抗議が来て、突き上げを通り越して、公明党議員は吊るし上げの状態と化したとか。
政府方針として閣議決定したにもかかわらず、山口那津男公明党代表は「国民一律10万円」を安倍晋三首相に要求。
「連立離脱」を突きつけて、政府方針を撤回させた。
10万円でも足りるかどうか不透明だが、最初の案よりは遥かにマシなのは間違いない。
多くの人の命が救われたのは認めざるを得ないだろう。
大恥をかいたのが、岸田文雄自民党政調会長だ。
「国民一律10万円」は岸田氏も唱えており、自民党の大半が賛同したが、首相官邸は蹴散らした。
本欄で再三再四お伝えしているように、安倍首相は麻生太郎財務大臣と二階俊博自民党幹事長と組んでいる限り、怖いものはない。
二人の実力者と一部の側近だけで、自民党の多数が求める提案を拒否した。
ところが、本気で怒った創価学会は敵に回せない。
我が国において権力とは、拒否権のことである。
創価学会抜きでは、今の自民党も安倍首相も選挙ができないのだから、逆らうことができないのだ。
しかも創価学会・公明党は政府の政策を即座に精査し、拒否権を行使して安倍内閣の決定を覆した。
情けないのは、7年も政権を独占させてもらいながら何の実績もないばかりか、疫病対策もできない安倍内閣とその支持者だ。
自民党内の「なんちゃって減税派」は、日ごろは「未来を考える」「日本を護る」だのと偉そうなことを言っているが、いざという時には数だけ多くて何の役にも立たない。
しかも己の無力を詫びるかと思いきや、SNSで有権者を相手に大上段に説教している。
こうした状況に、保守の国民が最も絶望している。
まさか、創価学会と公明党に日本を守ってもらう羽目になるとは、思わなかっただろうから。
陰鬱な日々が続くが、理由は簡単だ。
ただでさえ昨年10月の消費増税で景気が悪化している時に、コロナ禍で緊急事態宣言である。
政府がまともな補償もしないで経済活動を止めたのだから、当然だろう。
さて、誰もが「こんな緊急事態宣言など、さっさと解除してほしい」と望んでいると思うだろう。
ところが今の政権は、この危機が少しでも長く続いてほしいと考えているかのようだ。
◆今、緊急事態宣言の解除を、誰が最も望み、最も望まないのは誰か、考えてみてほしい
なぜか。 誰がこの緊急事態の解除を最も望んでいるかを考えよう。
最大の勢力は検察庁である。
検察庁は、安倍内閣7年の間、人事介入を繰り返され、叩きのめされ続けた。
親安倍派の検察官は、多くの事件をもみ消したとすら噂される。
検察は、安倍内閣の7年間、耐えに耐え続けてきた。
そして、復讐の時が来た。
安倍側近の河井克行元法相夫妻の逮捕は秒読みだ。
ところが、このコロナ騒動の間は、かき消されてしまう。
だから、一刻も早く騒動が終わってくれれば、河井夫妻逮捕、そして安倍倒閣に動く気だ。
次に緊急事態宣言の解除を望むのは、財務省だ。
自粛が長引けば、補償をしなければならない。
しかも、次から次へと。
無制限の歳出など、財務省には耐えられない。
だから、早く終息してほしいと願っているのだ。
検察庁と財務省、いずれも安倍内閣の敵である。
安倍政権の延命には、この危機を長引かせたいのだ。
そこで利用されるのが、「専門家」の意見だ。
「このままでは42万人が死ぬ」「人との接触を8割減らせ」「あと2週間の我慢だ」などの意見に従い、安倍内閣は緊急事態宣言を全国に広げた。
だが、冷静に考えよう。
相手は未知のウイルスなのだ。
誰も証拠のある断定などできない。
あくまで「仮説に基づく実験」にすぎないのだ。
では商人にとって、人との接触を8割減らすとはどういうことか。
売り上げが8割以上減ることである。
店に1日中1人も客が入らないなどザラだが、家賃は容赦なく発生する。
家賃を払ってもらえないと、大家も収入が無くなる。
確かに専門家は「コロナ対策が万全になるのに1年かかる」「アメリカは2年だと言っている」などと主張する。
そら、そうだろう。
医者は人の命を救うのが仕事で、1人も人を死なせない方策を提言する。
だが、優れた専門家にありがちだが、大局観で知を総合できない。
伝染病で死ぬ人間への対策が医者の仕事であって、経済で死ぬ人間の話は門外漢だ。
こうした場合、最終的に判断するのは政治家、
特に総理大臣の役目だ。
安倍首相はコロナとの戦いを戦争にたとえた。
ならば、戦争においては前方の戦線と後方の補給の双方を維持しなければならない。
この場合の前方とは伝染病との戦いで、後方とは国民経済だ。
どちらかを取りどちらかを捨てる話ではない。
安倍首相に戦時宰相のような能力を求めても無駄だが、長引けば長引くほど自分の政治的立場が有利な状況なのだから、専門家に悲観論を言わせるに決まっている。
こうした環境にあると、国民が世の中の状況を見極めるべきだ。
そして声を上げるべきだ。
「安倍首相よ、緊急事態宣言を延長したいのならば、内閣総辞職を約束せよ!」と。
今の日本政府は、法律に基づかないで自粛を要請してくる。
それでいて十分な補償も行わない。
騒動勃発以来、自民党と官僚は数多くの失態を犯したが、それでも人口当たりの死者数は極端に少ない。
すべて国民の頑張りだ。
その国民に対し、安倍首相や自民党は、一度でも真剣に感謝し、己の無能と無力を詫びたことがあるか。
結果を出せていないし、初動の誤りが無ければ、ここまで深刻化はしなかった。
ならば、安倍首相は安全地帯で他人事のように要請するのではなく、己の進退をかけて国民にひれ伏して頼むべきではないのか。
与党も野党も、緊急事態宣言を延長する場合は、騒動終了時の安倍内閣の退陣を合意し、協力し合えば良いではないか。
それならば、国民も納得する。
国民の我慢は、心身ともに限界にきている。
「戦争」なのだったら、まず首相が命を懸けろ!
―[言論ストロングスタイル]―
【倉山 満】 憲政史研究家 ’73年、香川県生まれ。
中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。
在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務め、’15年まで日本国憲法を教える。
現在、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰し、大日本帝国憲法や日本近現代史、政治外交について積極的に言論活動を行っている。
ベストセラーになった『嘘だらけシリーズ』など著書多数。
最新著書に『13歳からの「くにまもり」』