2020年07月19日

女子医大だけじゃない 次に起こる医療従事者の反安倍決起

女子医大だけじゃない 次に起こる医療従事者の反安倍決起
2020/07/18 日刊ゲンダイ

 開始まで1週間を切っての運用変更に旅行現場は大混乱である。
安倍政権肝いりの「Go To キャンペーン」は、16日、旅行代金を割り引く「Go To トラベル」で東京発着の除外が決定。
17日は事業を所管する国交省の赤羽大臣が、高齢者と若者の団体ツアーを支援対象から外すと発言し、線引きは旅行業者に委ねるとしたため、業者からは「基準を示して」と悲鳴が上がっている。
「キャンセル料は誰が払うのか」など、もはやカオス状態である。

 総額1兆6794億円という巨額は、政府の力の入れようが分かるというもの。
確かに観光業は軒並み収入が9割減で経営が火の車だ。
もっとも、理由はそれだけじゃない。
選挙の際に旅行業者の政治団体が自民党議員へ献金するなど「密」な関係もある。
しかし、再び感染拡大というこの緊急局面で、大事な血税を投入すべき先は、もっと他にあるだろう。
そう、医療現場である。

 今週、ツイッターでは〈#GoTo 予算を医療に回せ〉という投稿がトレンド上位入り。
「Go Toの予算を医療現場や被災地などに回して」という趣旨で、「Go To」に反対する署名も10万人を突破した。
大勢が賛同するのは、それだけ医療現場の悲惨な状況が報じられているからだろう。

 東京女子医大では、夏のボーナスが「ゼロ」だと聞かされた看護師400人が、退職の意向を示しているという。
このニュースは衝撃だった。同大は5月からコロナ患者用に、普通病床とICU(集中治療室)を確保しており、コロナ患者がいなくても常にベッドを空けている状態。
外来患者も大幅に減少していて、赤字は30億円に上るという。
退職金すら出るのか分からない状況らしい。

 さすがに「大量退職」が大きく報道されたからか、17日になって大学側が態度を一転。
 独立行政法人福祉医療機構からの資金調達で「原資を確保できる見通しになった」として、ボーナス支給を検討するとの文書を関係者に出したようだ。
 医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏が言う。
「危機的な状況ですね。医療費は全国一律なので、東京の都心部の総合病院、特に私立の大学病院ほど、固定費が高くて経営が大変だというもともとの構造的問題があります。
そこへコロナ禍が重なり、経営は一気に悪化した。
東京女子医大は医療事故を機に評判を落とし、患者が減っていましたからより深刻でしょう。
経営の厳しい病院で医療従事者が辞めていくのは合理的で仕方のないことですが、一般企業と違うのは病院には入院患者がいて、ケアが必要だということです。
スタッフが辞めれば医療事故も医療崩壊のリスクも高まります」

■3割の医療機関がボーナス減額を通告
 千葉県船橋市の総合病院「船橋二和病院」でも、医師や看護師がボーナス減額に抗議するストライキを決行した。
日本医療労働組合連合会によれば、傘下の組合を通じた調査で、約3割の医療機関が夏のボーナス減額を組合側に通告しているというから末期的だ。
 新型コロナウイルスに感染する不安と緊張の中、使命感で働いている医療従事者が報われない現実。
これでは待遇悪化で現場を離れる人が続出しかねない。

 そんな医療現場のボーナスカットは許しがたいが、医療機関の経営悪化も深刻。
厚労省が4月の診療報酬の全国状況をまとめたところ、前年同月より13%の減少だった。
どの病院も不要不急の手術は延期、感染リスクを避け外来患者は大幅減少だから収入減は当然だ。
 17日の全国の新規感染者は596人。
16日は600人を超え、4月のピーク時に迫る勢いである。

急激な感染拡大には「既に第2波の流行が始まっている」という見方も出ている。
それなのにこのままでは、感染者数に医療現場の人手が追いつかなかったり、病院破綻が続出して、医療崩壊へまっしぐらだ。

フランス政府は1兆円規模の歴史的賃上げを決定
 この間、政府も自治体も何をやってきたのか。
安倍首相は4月の会見で「医療現場を守るため、あらゆる手を尽くす」と宣言し、二言目には病院と保健所を支援し、強化すると口にしてきた。
だが、ずっと足りないと言われてきたPCR検査はいまだ十分な体制になっていない。
 米国では1日500万件の検査が行われ、ニューヨーク州に750カ所のPCRセンターが整備された。
中国では人口2000万人の北京市で感染が起きた際、800万人にPCR検査が実施された。
16日の参院予算委員会で参考人として陳述した東大先端科学技術研究センター名誉教授の児玉龍彦氏は、既に東京にエピセンター(感染の震源地)ができており、制圧には20万件の検査が必要だと力説していた。

ところが、今の日本国内の検査体制は最大能力でも1日3万件程度、東京都は3000人程度(1週間平均)に過ぎないのだ。
 医療現場の感染不安を解消するためにも、PCR検査の拡充が急がれるのに、厚労省が熱心なのは「夜の街クラスター」の検査ばかり。
「本来なら医療従事者のPCR検査だって、公費でやるべきなのです」(上昌広氏=前出)

 安倍政権は第2次補正予算で医療機関への支援策として2兆円超を盛り込んだ。
ただ、現場で疲弊する医療従事者への給付金は、実際にコロナ患者の診療を行った医療機関では1人20万円、対象機関ながら実際にコロナ患者の診療がなかった場合は10万円、それ以外は5万円だ。
これに追加して、独自に10万円を支給する自治体もある。
だが、「Go To トラベル」が1泊最大2万円の割引を何度でも受けられることと比較すると、命がけで働く医療従事者に最大20万円では、少なすぎるんじゃないか。

■「同情するなら金をくれ」が心情
医療従事者への敬意と感謝を示すためとして、安倍政権は6月、東京上空に航空自衛隊のアクロバットチーム「ブルーインパルス」を飛行させたが、そんな目くらましより、「同情するなら金をくれ」が現場の心情だろう。
感謝によって励まされ、鼓舞される面はあっても、ボーナスや給料の削減で生活苦になれば、医者も看護師も安心して仕事を続けられない。

 仏政府は13日、医療従事者の賃上げ策として総額80億ユーロ(約9730億円)の支出を決めた。
平均給与は月額2万2000円程度増額される。
カステックス首相は「この国の保健制度にとって歴史的な瞬間だ」と語ったという。
 仏でも医療従事者は感謝され英雄と称えられているが、評価以上のものを求めて給与アップや病院の財源強化を掲げた抗議デモが行われてきた。
今回の賃上げ決定は、これに仏政府が応えたということだ。

安倍政権も10兆円もの予備費があるのだから、何らかの対応をすべきだろう。
 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。
「政府は医療崩壊を避けるために全力を注ぐべきです。
予備費が10兆円もあるのですから、金がないとは言わせません。
『Go To』で瀕死の旅行業界を救済することを否定はしませんが、それは感染が収まってからでいい。
まずは医療従事者が心置きなくコロナと闘えるよう支援することが先決。
優先順位があります」

 安倍政権のコロナ対策は、「アベノマスク」「減収世帯30万円が一律10万円へ変更された現金給付」、そして今回の「Go Toの混乱」と、やることなすこと頓珍漢のうえ、世論の不評に右往左往。
この政権はオツムがイカれているとしか思えない。

 内閣は支持率下落で首相の求心力も風前のともしびだ。
官邸では安倍の側近官僚が跋扈し、菅官房長官との確執やコロナ対策での主導権争いも囁かれる。
組織はバラバラの空中分解。
安倍本人は予算委にも出席せず逃げ腰で、第2波の危機に瀕しても記者会見すら開かないのだから無責任極まりない。
 このまま感染者が増え、医療現場への負担が増えれば、医療従事者のストレスと不満は爆発。
次に起こるのは、フランスのように反安倍決起だろう。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☁ | Comment(2) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
お早うございます。!
GO toトラこそが不要不急であり経営難に陥る医療関連者を国家が支援することが急務と思います。
感染検査を保険適用して検査希望者を全員検査して隔離することも大切だと思います。
無症状者や軽症者が全国に拡大して全土が感染国になる前に早急な対策が望まれますね。☆!
Posted by 荒野鷹虎 at 2020年07月19日 07:19
私は 以前から 国鉄、郵政、専売、電電公社、水道の民営化には反対なのです。
国民にとって大切なインフラや公共事業は 社会主義といわれようと 国が責任を持って維持すべきだとおもっています。
病院もその一つです。
警察、自衛隊にはだれも 全額税でも利潤はもとめないでしょう。なのに なぜ医療機関や介護福祉機関が経営に苦労しなくてはならないのか 理屈がわからないのです。
コロナ感染にしても 全員定期検査というファッショ的方法より 体調が悪ければ医療機関にかかれる、検査を受けられる体制構築の方が敷居は低い。
教員の時に丸くさせられた性格が 歳とともに学生時代の「べ平連」的思考に回帰し始めているのを感じ苦笑する日々です。
Posted by 小だぬき at 2020年07月19日 07:57
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