2020年08月02日

迷惑を恐れ何が産まれるのか 日本を劣等国にする同調圧力

迷惑を恐れ何が産まれるのか 日本を劣等国にする同調圧力
2020/08/01 日刊ゲンダイ
三枝成彰 作曲家

先日、遅ればせながら米映画「ジョーカー」を見た。
 今年2月のアカデミー賞では主演男優賞と作曲賞の2冠に終わっているが、私は作品賞や監督賞、脚本賞などを総なめにした「パラサイト 半地下の家族」よりもいいと思った。
 舞台はコミック「バットマン」の舞台であり、ニューヨークをモデルにしたと思われるゴッサム・シティ。
人生に絶望したしがないひとりの道化師が起こしたある行動によって、社会に不満を持つ若者や貧困層が暴徒と化し、暴行や破壊行為を繰り広げる。深刻な社会格差を狂気や暴力で表現した作品だ。
 米国の奥深さを見せられた。

日本では到底つくれない作品である。
カネを出すスポンサーが絶対に見つからないだろう。
自分の理解が及ばないことを批判し、害悪であるかのように叩く。
それが正義だと妄信し、枠から外れた人たちを激しく罵る。
そんな国民性から生じる同調圧力に屈する日本人は多いのだ。

 新型コロナの感染者が再び増加している今は、圧力が強まっているからなおさらだろう。
テレビではもう一度、自粛を要請すべきだとか、罰則を設けるべきだとか、声高に主張するコメンテーターすらいるのだから、理解に苦しむ。
 以前も当欄で書いたが、日本では“平時”でも1日当たり3700人がさまざまな病気や事故などで亡くなっている。
コロナによる死者は累計でも1000人を少し超えた程度だ。
確かに大変なことには違いないが、それでも進んで私権の制限まで提案する神経を疑ってしまう。

 かつて日本はファシズムに支配された。
その反省もなく、また自らファッショをつくろうとしているのか、不都合な社会を欲しているのか。
 これから日本では膨大な数の失業者が街にあふれるだろう。
知人の中には、3割の会社が潰れてなくなると予想する人もいる。
日本は終戦直後のような状況を迎えるのだ。
そんな中で営業するな、マスクを外すな、旅行に行くなと同調圧力を強めれば、日本の社会は立ち行かなくなる。

今必要なのは、新しいものを生み出す力だ。均一で同質の製品を数多くつくるのではない。
見たこともない商品やサービスだ。
それで世界と勝負して生き残るしか道はない。
周囲の批判など気にせず、「ジョーカー」を生み出すセンスとパワーが求められているのだ。

 真のアーティストは他人に迷惑をかけることなど恐れない。
自分と自分の考えを何よりも大切にする。
だから同じ時代に生きていながら、常人の発想ではつくれないものをつくれるのだ。
これは、どんな世界でも同じだろう。
自分たちと同じように振る舞うことを求めて個を否定する考えは、日本を劣等国に押し下げる。
厳に慎むべきだ。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☔ | Comment(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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