2020年10月27日

冬は地獄絵 学者潰しやハンコに血道をあげている場合か

冬は地獄絵 学者潰しやハンコに血道をあげている場合か
2020/10/26 日刊ゲンダイ

 秋の足音とともに、新型コロナウイルスの感染が勢いを増している。
全国各地で新規感染者の過去最多更新が相次ぎ、東京都では累計3万人を突破。
全国の累計感染者は10万人に迫り、死者は1700人を超えた。
新型コロナと季節性インフルエンザが同時に大流行する「ツインデミック」の懸念も高まる中、抜本的なコロナ対策が急務なのは言うまでもない。

菅政権発足から41日目となった26日、臨時国会が召集。
菅首相がようやく所信表明演説に臨んだが、空恐ろしいほど中身がない。
危機感が欠落しているのか、打つ手なしなのか。
あるいは弱者は見殺しなのか。

 所信表明の柱は、新型コロナ対策と経済の両立、デジタル社会の実現、クリーン社会の実現、地方創生――など。
肝心の新型コロナ対策は威勢がいいものの、新たな具体策への言及はなし。
 1日平均20万件の検査体制の整備だとか、来年前半までに全国民分のワクチンを確保して無料接種を実施だとか、口にしたのは安倍政権の置き土産のみ。
それ以外も同様で、“スガ色”と言えそうなのは携帯電話料金の値下げと行政手続きのハンコ廃止くらいのもの。

安倍前首相との大きな違いを挙げるとすれば、キャッチフレーズがなかったことくらいだ。
 自ら火種をまいた日本学術会議の任命拒否問題には触れず、マーケットの安定や「Go To キャンペーン」の反響を自画自賛である。

■日銀とGPIFが東証1割強を爆買い
そもそも、株価を支えているのは公的マネーだ。
アベノミクスの異次元緩和で日銀が市場に大量のマネーを流し込んだ上、ETF(上場投資信託)を爆買い。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も国民の虎の子である年金を鉄火場にブチ込んだ。
その結果、保有額(3月末時点)は日銀31兆円、GPIF36兆円。
東証全体の時価総額の12%を占め、1部上場企業の8割で大株主となっているという。

 株高は“禁じ手”を延々と使い続けているからで、実体経済と乖離した官製相場なのだ。
経済が回っているからではない。
恐ろしいほどの能天気とスッカラカンの政権は、「Go To キャンペーン」でやっているふりの目くらまし。
それに浮かれる国民の刹那はこの国の行き先を暗示しているかのようだ。

政治評論家の本澤二郎氏は言う。
「二兎追う者は一兎も得ず。経済活動と新型コロナの感染抑止が両立しないのは、足元の感染状況を見れば明らかでしょう。菅首相がやろうとしていることはシッチャカメッチャカです。
政府は年末年始の帰省などを分散させるとの名目で1月11日までの休暇延長を経済界に要請するようですが、本来の目的は別のところにあるのではないか。
令和の代替わりに伴う最長10連休では、旅行業界が特需に沸いた。
令和特需の再来を狙い、菅首相肝いりのGo To キャンペーン利用を後押しする狙いが透けて見えます。

長期休暇を取って旅行を楽しめるのは時間、懐、体力に余裕がある一部の層だけ。
令和の連休では仕事を失った非正規社員の困窮が大問題になった。
14連休、17連休になれば、彼らの生活はどうなるのか。
経済弱者の存在は頭の片隅にもないのでしょうか」

 冬には経済も感染も阿鼻叫喚の地獄絵になるのではないか。
学者潰しやハンコ廃止に血道を上げている場合なのか。

ANAがトヨタに出向要請する異常事態
 東京商工リサーチによると、新型コロナ関連の倒産は650件(23日現在)を突破。事態は深刻だ。
 そうした中、国内エアライン首位のANAを傘下に持つANAホールディングスが事業構造改革案を27日発表。
ANAは一般社員約1万5000人の年収を平均3割削減する方向で労働組合と交渉中で、副業範囲の拡大も進めているが、新たに報じられた改革案の内容には愕然とする。

 コロナ禍が直撃したANAホールディングスの2021年3月期連結決算の最終利益は、過去最悪となる5000億円前後の赤字を計上する見通しだ。
前期は276億円の黒字。
コロナショックの凄まじさを物語っている。
採用凍結などで22年度までにグループ全体の社員の1割ほどにあたる3500人程度を削減し、維持費が割高な大型機を中心に約30機を売却する計画だという。

こうしたコスト削減策は一般的な手法だが、それに加え、一時的な人員圧縮策としてトヨタ自動車を含む数社に社員の受け入れを要請しているというから驚く。

 経済評論家の斎藤満氏はこう言う。
「異常事態です。経済危機に直面し、企業が子会社や関連会社に従業員を出向させて雇用を維持するケースは珍しくありませんが、他社への出向はまず聞きません。
需要が戻り、運航を回復する展望を描けない中での非常手段でしょう。
政府の新型コロナ対策は非常に場当たり的で、感染を封じ込めないうちに経済活動再開に舵を切った。
それで感染抑止に努めるといっても、つまるところ個人任せです。
アクセルとブレーキを同時に踏み込んでいるようなもので、コロナ禍収束は見通せない。
このままでは設備投資はおろか、雇用の維持もできなくなる企業が続出してしまうでしょう。
負担を覚悟の上でいったん経済を止めて感染を封じ込めなければ、感染拡大を何度も繰り返してかえって経済を冷やすことになりかねません」

■野党追及で国会空転か
 進行するANA危機を筆頭にした経済クラッシュが現実味を帯びている。
それなのに、菅は国会でマトモに議論する気もなし。
この国は恐ろしい方向に進んでいる。

「通常国会が閉会したのは6月下旬。
新型コロナ対応で通年国会を求める声は無視され、通常国会は6月下旬に閉会した。
4カ月も空けてようやく召集した臨時国会の会期はたった41日間。
学術会議問題で瞬く間に化けの皮が剥がれ、菅首相はどうしても国会に出たくないのでしょうが、それにしても卑怯なやり方です。
衆院議員の任期満了まで1年を切り、いつ解散総選挙に突入してもおかしくない。
1強多弱と揶揄されてきた野党も選挙を見据え、腹をくくっています。
野党が予算委員会で学術会議問題や新型コロナ対策を追及し、菅首相が的外れな答弁を繰り返せば審議を止めざるを得ない。国会が空転する事態になれば、国家観もなく、派閥総乗りで担がれた菅首相は一気にガタッといく可能性がありますよ」(本澤二郎氏=前出)

「Go To」も携帯料金引き下げも人気取りに過ぎない。
最後にババを引くのは国民だということを肝に銘じないといけない。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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