認知症春目春目やがんのリスクが高まる「睡眠負債」とよく眠るための8つの習慣
10/27(火) ハルメクWEB
更年期以降は注意。
認知症やがんのリスクが高まります
睡眠不足や睡眠の質の低下から、知らぬ間に蓄積していく「睡眠負債」。
この負債が認知症やがん、生活習慣病などのリスクを高めると注目されています。
睡眠の悩みが増える更年期以降は、睡眠負債をためないように質のよい睡眠法を身につけましょう。
睡眠負債とは?
寝付きが悪い、夜中に何度も目が覚める、朝起きたとき、すっきりしない……。
そんな心当たりのある人は、「睡眠負債」を抱えているかもしれません。
睡眠負債とは文字通り、眠りの借金がたまっていること。
米スタンフォード大学医学部精神科教授で、同大学睡眠生体リズム研究所所長の西野精治(にしの・せいじ)さんは、「日々の睡眠不足が知らぬ間に蓄積して、脳や体にダメージを与えてしまう。
この負債は睡眠時間の短さだけでなく、睡眠の質の低下によってももたらされます」と話します。
そもそも睡眠は年齢とともに変化するといいます。
「特に女性は更年期以降、睡眠の質が低下しがち。
女性ホルモンが減少するため、体温調節や睡眠そのものにも影響が出やすいのです」(西野さん)
十分寝ているつもりなのに、朝疲れがとれていなかったり、日中に強い眠気を感じたりするなら、睡眠の質が低下しているサイン。
また休日になると、いつもより寝坊してしまうという人も要注意です。
「普段より2時間以上も多く寝ているようなら、睡眠負債がかなりたまっている証拠」と西野さん。
さて、あなたは大丈夫?
まずは次のチェック表で確認してみましょう。
睡眠負債かどうかのチェックリスト
1つでも当てはまったら睡眠負債かも?
・寝付くのに30分以上かかる
・夜中に5回以上目が覚める
・朝、起きたときに疲れている・
・日中、やる気が出ずに眠気を感じる
・休日は2時間以上起床が遅い
よくイライラする 睡眠の大切な役割と健康効果を知っておこう
睡眠にはいろいろな健康効果があります。
例えば
・日中に活動した脳と体を休ませる、
・記憶を定着させたり、
・逆に嫌な記憶を消去したりする、
・成長ホルモンなどのホルモンバランスを整える、
・免疫力を増強して感染症やがんなどの病気を遠ざける、など。
最近の研究によると、脳の老廃物を除去する働きもあるそう。
「例えばアルツハイマー病では、脳内に大量の老人斑が沈着しています。
この原因となるのがアミロイドβという物質ですが、睡眠中はこれを除去する働きが最も高まることがわかっています」と西野さん。
不要になった物質を排出する、いわば脳のお掃除タイムというわけです。
【睡眠の5大ミッション】
・脳と体に休息を与える
・記憶を整理して定着させる
・ホルモンバランスを調整する
・免疫力を上げて病気を遠ざける
・脳の老廃物を排出する
ベストな睡眠時間と睡眠負債による健康への影響は?
30〜102歳までの110万人を6年間追跡調査した結果、死亡率が最も低かったのは7時間睡眠の人たちでした。
7時間睡眠を基準にすると、それより短くても長くても死亡率は上昇。
最大で1.3〜1.4倍高くなりました。
睡眠が本来持つ働きを妨害するのが、睡眠負債。
この負債がたまると、脳と体にさまざまなダメージが及びます。
なんと死亡率まで上がるというのです。
「米国の大規模研究では、死亡率が最も低かったのは7時間睡眠の人たち。一方、睡眠時間が極端に短い人や長い人では死亡率が1.3〜1.4倍上がるという結果でした。
つまり、睡眠時間は多過ぎても少な過ぎても死亡率が上がることがわかったのです。
他にも肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病、がん、認知症などのリスクも高まると報告されています」(西野さん)
睡眠負債のツケはかくも大きいのです。
とはいえ、更年期以降の女性は一般に睡眠時間も短くなりがち。
「個人差が大きいので7時間睡眠にこだわる必要はありませんが、自分に合った質のよい睡眠をとることが何より重要」と西野さん。眠りの質を高め、睡眠負債をためない生活を始めましょう! 睡眠負債を解消する睡眠の質を上げる鍵とは? ハルメクWEB 睡
眠負債をためない、あるいは既にある睡眠負債を返済する――。
そのために手に入れたいのが、質のよい眠りです。
西野さんによると、睡眠の質を高める鍵は、「寝始めの90分間」にあるといいます。
「睡眠には、脳も体も眠っている『ノンレム睡眠』と、脳は起きていて体が眠っている『レム睡眠』とがあります。
寝ついてすぐに訪れるのが最も深いノンレム睡眠で、これは90分間ほど続きます。
新陳代謝を促して健康やアンチエイジングに貢献する成長ホルモンが最も多く分泌されるのも、このとき。
最初の90分間をいかに深く、ぐっすり眠るかが、睡眠の質を決定的に左右するのです」 いわば“黄金の90分間”。
これが得られれば朝の目覚めもスッキリで、日中、眠気に悩まされることもありません。
逆に、この90分間の質がよくないと、いくら長く寝ても熟眠感がないのだそうです。
では、黄金の90分間を得るにはどうしたらいいでしょうか。
ポイントは「体温」だと西野さんは説明します。
「体の中の深部体温は、日中は高く、眠るときは低くなります。
逆に言うと深部体温が十分に下がらないと、ぐっすり眠れないのです。
この仕組みを知った上で、深部体温の上がり下がりをうまくコントロールすることが重要です」
また眠りの準備は「朝から始まっている」とも。
「よい眠りは、よい覚醒があってこそ。
朝起きて行うことや昼間の過ごし方の中にも、睡眠の質を高める大事な条件があります」。
そう語る西野さんに、最高の睡眠を得る8つの方法をアドバイスしてもらいました。早速試してみましょう。
覚えておこう!8つの睡眠負債の解消方法
1 入浴は就寝90分前までに
ぐっすり眠るために西野さんがすすめるのが、入浴。
「条件にもよりますが、お風呂に入ると深部体温が0.5℃ほど上がります。
深部体温は上がった分だけ下がろうとしますから、入浴後に急降下が起こります。
これがスムーズな入眠と熟眠につながるのです」(西野さん)。
つまり、深部体温を「上げて下げる」のがコツ。
深部体温が元に戻るまでに約90分かかるので、入浴は就寝90分前に済ませておくのがベストです。
2 アラームは2つの時間設定で
西野式アラーム活用術は、「2つの時間設定」。
1回目のアラームはごく微音で短くセット。
2回目は通常の音にして20分後に設定を。
「朝方は眠りの浅いレム睡眠が多いので、小さな音でも覚醒しやすく、目覚めもよいはず。
もし深いノンレム睡眠中なら、2回目のアラームで目が覚めます」
3 寝るときは靴下を脱いで
足が冷たいからと、靴下をはいて寝ていませんか。実はこれは逆効果。
「手足がぽかぽかしてくると、自然と眠くなるもの。これは手足の末梢血管が拡張して熱を放散し、その結果、深部体温が低下するからです。
靴下をはいたままだと、この熱放散が妨げられるので、深部体温が下がりにくく、寝つきも悪くなるのです」(西野さん)。靴下をはくのは寝る直前まで。寝床に入るときには脱ぎましょう。
どうしても冷たいときは、足湯で血行をよくするのが効果的です。
4 寝床にスマホは持ち込まない!
寝る前のスマホやパソコンにも注意を。
「画面から出るブルーライトを網膜が感知すると、覚醒度が上がることがわかっています。
またスマホを操作することで、脳も興奮します」と西野さん。
スマホは寝床に持ち込まないのが得策です。
5 朝起きたら日光を浴びる
人の体内時計は1日より少し長く、約24.2時間。
「このズレを修正してくれるのが、太陽光。朝起きたら、日光を浴びて覚醒のスイッチを」と西野さん。
なお白内障などがあると光に対する感受性が鈍り、眠りや体内リズムに影響を及ぼす可能性も。
6 日中は20分程度の仮眠を
日中に眠くなったら、仮眠を。
ただし、夕刻の長い仮眠は夜の睡眠に影響するので禁物。
西野さんは午後3時までの「20分程度の仮眠がいい」と話します。
30分未満の昼寝をする人は、昼寝習慣がない人に比べて認知症発症率が6分の1程度だったとの報告もあります。
7 素足で覚醒度を上げる
朝起きたらスリッパは履かず、あえて素足で立ち上がる――。
これは効率的に覚醒度を上げるテクニックなのだとか。
「脳の奥にある脳幹部には上行性網様体という部位があり、ここを刺激すると覚醒することがわかっています。
ひんやりとした床に足がじかに触れると皮膚感覚が刺激され、上行性網様体も活性化。覚醒スイッチが入るわけです」(西野さん)。
冷たい水で手や顔を洗うことも、皮膚の温度を下げて脳を目覚めさせてくれます。
8 「眠れない」という思い込みを捨てる
「寝つきの悪さや中途覚醒を過大評価して『眠れない』と訴える人がいますが、検査をしてみると実はよく寝ていたという例も多いのです」と西野さん。
寝つくのに20分ほどかかる、夜中に3、4回目が覚めるというのは正常範囲。心配無用です!
いびき、眠気……睡眠負債につながる病気にご用心!
ぐっすり眠れない、朝の目覚めが悪い、日中、強い眠気に襲われる……。
こんな悩みの背景には、病気が隠れていることもあります。
「代表的なのが、睡眠時無呼吸症候群。
肥満体形の中年男性に多いイメージがありますが、女性や、痩せている人も無縁ではありません。
高齢の方の場合は、心不全などの病気に合併して発症することもあります」と西野さん。
女性は閉経後に発症率が増えるという報告も。
いびきがひどい、途中で呼吸がとまっていると家族に指摘されたら早めに専門の医療機関で検査を受けましょう。
■教えてくれた人
西野精治さん にしの・せいじ
米スタンフォード大学医学部精神科教授。
同大学睡眠生体リズム研究所(SCNラボ)所長。
医師、医学博士。
著書『スタンフォード式 最高の睡眠』(サンマーク出版刊)が30万部を超え、コミック版も発売。
女性、子供、高齢者の睡眠問題も解説した「スタンフォード大学教授が教える熟睡の習慣」(PHP新書刊)。
最新刊に『睡眠障害 現代の国民病を科学の力で克服する』 (角川新書刊) 。
取材・文=佐田節子
※この記事は、「ハルメク」2017年10月号掲載の記事を再編集しています。
最近は 外出すると帰宅後ダウンが続き、「あしあと」も残せなくなってきています。
すこし静養期間が必要なようです。