2020年11月17日

「デキる人」がやっている、たった5分でフェイクニュースを見破れる凄ワザ

「デキる人」がやっている、たった5分でフェイクニュースを見破れる凄ワザ
11/16(月) 現代ビジネス(-読書猿(読書家)

博覧強記の読書家、読書猿。
古今東西の名著で蓄えた膨大な知識を生かし、これまで『アイデア大全』『問題解決大全』などのヒット作を世に出してきた。
そんな彼の新刊『独学大全』は、これまで自力で学んできた彼の考え方のエッセンスが詰まっている。
独学にとどまらず、日常生活やビジネスなど様々な場面で応用可能なライフハックを、『独学大全』から紹介する。 「ビジネス書を読むと命取りになる理由」を説明した、前回の記事はこちら
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「夫市之無虎明矣。然而三人言而成虎」(市場に虎が出るはずがないことは、明白です。それにもかかわらず、三人して言えば虎が出せます)  
「三人市虎」という中国の故事成語がある。
「市場にトラが現れた!」という荒唐無稽なデマであっても、3人から言われるとつい信じてしまう、といった意味だ。

特にSNSが飛躍的に発達した現代では、どれだけ信憑性に乏しいデマであっても、たちまち数千人がRT(リツイート)、シェアして「真実」かのように見えてしまう。
 実際に2016年の熊本地震の直後の夜には、「動物園からライオンが逃げた」というデマがあたかも事実かのように流布して、大きな混乱を巻き起こした。

 さらにタチが悪いことに、世の中にはこちらを積極的に騙そうとする「悪意ある嘘」をつく人もいる。
典型的なのが詐欺師だ。
たいていの人間は「あんなものに騙されるのは不注意な人だけ」「自分は絶対に引っかからない」といった謎の自信を持っているが、これこそがヒトの「認知の脆弱性」である。
どれだけ知識が豊富で賢い人間であっても、認知の隙を突いたトリックには騙される可能性があるだろう。

 しかも一度誤った情報を鵜呑みにしてしまうと、事態はさらに悪い方向へと進む。
信念」とは事実に関する考えのことだが、人間は一度信念を取り込んでしまうとなかなか捨てられない。
それどころか、その誤った信念に合致した事実ばかりを選択的に信じるようになる。
 どう見ても効果が疑わしい健康食品であっても、「これを食べれば体が絶好調!」という信念が形成されてしまえば、人は食べ続けてしまう。
さらには、同じメーカーのミネラルウォーターやサプリメントまで「健康にいい」と思いこんで買ってしまうだろう。

こうした「認知の汚染」はドミノ倒しのように拡大していく。
 世間にはびこるデマや悪質な嘘、フェイクニュースなどを見抜くにはどうすべきだろうか。
今回はそれらを簡単に見抜くために、「タイム・スケール・マトリクス」と「四分割表」を紹介したい。

時系列に並べてウソを見破る Photo by iStock
 「事実」に関する主張や情報は、単独で目にするともっともらしく感じてしまう。
特に熊本地震のように大災害が発生した混乱状態であれば、入ってくる情報自体が絞られてしまう。
他の情報ソースを確認するのも難しいため、「普段であれば絶対に信じない」はずのフェイクニュースでも信用しがちだ。  

しかし物事というものはバラバラには起こらない。
単独の事象は必ず大きな「事件」の中の一部でもあるため、原因や結果となる出来事も生じているはずだ。
いったん落ち着いて、「ライオンが逃げた」という事実の原因や結果を考えてみてほしい。
 「頑丈なはずの動物園のオリが地震で壊れるのか?」「『逃げ出したライオンが人を襲った』というニュースがないのはおかしいのでは?」といった疑問を浮かんでくれば、同じ情報でも少し怪しく見えてくる。

 事実に関する情報を吟味する際は、このように大きな流れに位置づけて矛盾をあぶり出すのが有効だ。
これから紹介する「タイム・スケール・マトリクス」は、時間とスケールを手掛かりにして前後の事象との整合性をチェックする技法である。

 【タイム・スケール・マトリクス】
 1. 3×3のマス目をつくり、縦軸は「上位・同位・下位」、横軸は「過去・現在・未来」とする
 ここでの上位、下位とは、「スーパーシステム」と「サブシステム」のことを指す。
たとえば電話機を取り上げる場合、上位は個々の電話機を含む電話網、下位は電話機を構成する部品になる。

 2. 事実か否か吟味したい情報を中央のマス目「同位・現在」に書き込む
 今回は、Twitterで回ってきた「動物園からライオンが逃げた」という情報を例にして考える。

 3. 「仮にこの情報が事実ならば…」と仮定して、隣接するマス目を埋める  
「同位・過去」のマスには「その前に起きている」はずの出来事、「同位・未来」には「その後起こりうる」出来事を書き込む。
今回の場合、前者は「地震でオリが壊れた」、後者は「逃げたライオンが人を襲った」となる。

 4. 吟味したい出来事と比較して、より大きなシステムで起こっている出来事を「上位」に書き込む。同様に小さいシステムの出来事についても「下位」に書き込む。わからないマスは空欄にしておく。
 この例では、上位は「(ライオンを含む)動物園の動物すべて」、下位は「ライオンの体の一部」に関する情報となる。
 今回の事例を書き込むと、以下の表のようになる。

 5. 空いているマスに関して、上下左右のマスの内容から推論する
 たとえば「上位・未来」が空欄の場合、ライオン以外に逃げ出したトラやゾウが人間を襲っていてもおかしくはないし、ニュースで報じられたりSNS上で話題になったりするはずだ。

 6. 矛盾をチェックする
 しかし検索してみても、ゾウやトラが逃げて人を襲ったという話は一切出てこないので、最初の「ライオンが逃げた」というニュース自体が怪しいと考えられる。

 人間の思考は、「いま」「ここ」に注力する傾向があるため、過去や未来のこと、あるいはよりマクロやミクロな出来事について、同時並行で考えることは難しい。
 しかしこのように9マスに分割して広い視点から一望すれば、時間とスケールのつながりが見えてくる。

過去は現在、未来に影響を及ぼすだろうし、マクロやミクロな事象は相互に作用しているはずだ。
そういった関係性をチェックしていけば、矛盾の有無で出発点となった情報の正誤を判定できる。

 もともとこの技法は「9画面法」と呼ばれていて、現状の矛盾を見つけ出すことで、技術革新の糸口をつかむためのツールだった。デマ発見に限らず、新製品の企画開発など広い用途で使えるので、覚えておいて損はない。

「共変関係」を見抜くワザ 「揚げ物ダイエット」の真偽を見破るための四分割表
 古来より成功者の体験談は宣伝文句として使われ、人々を惹きつけてきた。
「この薬を飲んで頭が良くなりました!」「アプリを使えば、私のように簡単に恋人と巡り会えますよ!」など、こういった広告の例は枚挙に暇がないだろう。
しかし残念ながら、大々的に取り上げられているのは少数の特異なケース、あるいはまったくの嘘であることが多い。

 このような成功体験が本物か否かを判定するために効果的なのが、これから紹介する「四分割表」だ。
ほとんどの体験談は「Xという行為をすれば、成功者と同じYという効果が得られる」という形式の命題に置き換えられる。
Xの後にYが生じる頻度が高ければ、両者の間に何らかの関係性があると言えるだろう。

ここではもっともよく目にする成功体験の例として、ダイエット法を取り上げながら解説したい。  

【四分割表】

 1. チェックしたい主張を「XならばY」という形の命題に置き換える
 今回は「揚げ物を食べ続けて痩せる」という荒唐無稽な「揚げ物ダイエット」を取り上げよう。< 
 2. 次のような四分割表を作る
 それぞれXの「あり」「なし」、Yの「あり」「なし」で2×2の表になる。
 特に「Xあり、Yあり」以外の欄に当てはまるものがないか探していく。

今回の場合、以下の3つの命題について検証する。

 「揚げ物を食べなければ、痩せる」→野菜だけを食べ続けて実際に痩せた人の例は数多く見つかるだろう
「揚げ物を食べ続けたならば、痩せない」→揚げ物が好きで毎日食べており、痩せているとは言い難い人は多い 「揚げ物を食べなければ、痩せない」→揚げ物は苦手だがお酒が大好きな人は、なかなか痩せられない

  3. 4つの空欄を事例やデータで埋めていく
   特に「Xあり、Yあり」以外の欄に当てはまるものがないか探していく。
  今回の場合、以下の3つの命題について検証する。

「揚げ物を食べなければ、痩せる」→野菜だけを食べ続けて実際に痩せた人の例は数多く見つかるだろう
「揚げ物を食べ続けたならば、痩せない」→揚げ物が好きで毎日食べており、痩せているとは言い難い人は多い
「揚げ物を食べなければ、痩せない」→揚げ物は苦手だがお酒が大好きな人は、なかなか痩せられない

変換すると「揚げ物を食べ続けたならば、痩せる」となる。

  4. 事例の数や頻度から、最初の命題の信頼性を評価する
 最初の命題「XならばY」が正しい、つまりXとYの間に何らかの関係性がある場合、「XならばY」「XじゃなければYじゃない」の事例が他二つに比べて圧倒的に多くなるはず。
 つまり揚げ物ダイエットが本当に効果的であれば、「揚げ物を食べ続けたならば、痩せる」と「揚げ物を食べなければ、痩せない」という例が、他の二つに比べて格段に多く見つかるはずである。
 しかし、知り合いに聞いて回ってもインターネットで検索してみても、「揚げ物を食べ続けて痩せた」人の事例はほとんど出てこないだろう。
また揚げ物をあまり食べずとも、お酒や炭水化物、甘い物が大好きでなかなか痩せられない人は、少なくないのではないか。  
   このように条件と結果を入れ替えながら吟味することで、「Xを変化させると、Yも変化する」のかどうか、つまり両者の間に「共変関係」があるのかが見えてくる。
共変関係がなければ、そもそもXとYは因果関係で結ばれていないので、誤った命題の可能性が高い。

 今回はフェイクニュースやデマを手軽に見抜ける技法を紹介した。
これで情報を吟味する用意は整ったので、「いよいよ後はインプットするだけ…」というところだろう。
そこで次回は、効率よく情報を取り込むため役立つ「文章読解」の技法を紹介したい。
書籍や新聞はもちろん、ネット記事に対しても間違いなく効果を発揮する。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(2) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
フェイクニュースよりも怖いのは
直接の人間の言葉の嘘

「例えば学校の場合」
生徒がいくら正論だった場合でも「誰にも信じてもらえず」

先生が間違った説明した場合でも「生徒は全員信じてしまう」


これが、資格を持つと「そのひとが発言しているので正しい」という心理  洗脳なのである。(`・ω・´)ハイ!
Posted by タカやん at 2020年11月17日 16:59
この権威とか 専門家といわれる人が 表面的な出来事だけでなく 理論的裏付けも優しく説明してくれるといいのですが・・・。
芸能記者に政治政治を語らせても 頓珍漢な答えしか期待できませんよね。
Posted by 小だぬき at 2020年11月17日 21:07
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