2020年12月10日

文章がどうもうまく書けない人のための処方箋

文章がどうもうまく書けない人のための処方箋
目的と読み手を定め、素材を順番に並べよう
2020/12/08 東洋経済オンライン
上阪 徹 : ブックライター

文章が思うように書けない、と悩む人は少なくない。
とにかく時間がかかる。
書こうとしたら書くことがない。
長さにひるむ。
読みづらいといわれる。
伝わらない、刺さらない……。

私はフリーランスで文章を書く仕事をして27年になるが、中でもよく相談されるのが、「どうすればうまく構成ができるのか」だ。
そしてこんな会話が、いろんな会社の社内で繰り広げられたりしているのではないか、と想像している。

上司「社内報の自己紹介エッセイ、まだ悩んでるのか」
部下「はい、うまく起承転結に落とし込めないんです」
上司「無理に起承転結に落とし込むことはないだろう」
部下「いや、でも、文章といえば、起承転結じゃないですか。それ以外だったら、どうやって構成すればいいか、わからないんです」
上司「そもそも、何のためのエッセイなんだ?」
部下「なんか、社員について知ってもらう、ということらしくて」
上司「それで起承転結にできたら、何かいいことがあるのか」
部下「……」

「起承転結」を無理やりつくらなくてもいい
書く内容(これを私は「素材」と呼んでいる)は、ある程度集まっているが、それをどんな順番で並べて構成していけばいいのか、わからない。
実はまじめな人ほど、この悩みを抱えてしまっている。
というのも、構成といえば、「起承転結」など、子どもの頃に教わった文章のセオリーに強く影響されてしまうからだ。
「書き出しがあって、展開があって、転機があって、結論に至る。
そんなストーリーで作文を作るといい」と教わったわけだが、このセオリーになんとか合わせようとして頭を悩ませてしまう人は少なくないのだ。

もちろん、起承転結でうまく書けるケースもないわけではないが、とりわけビジネス文書の場合、多くは最初に結論を伝える必要があるケースが多い。
最後に結論をいうことになる起承転結は、ビジネスとの相性がそもそもよくないのだ。
では、どうするか。 拙著『文章の問題地図』でも詳しく解説しているが、まず、やるべきは、素材を「見える化」することである。
書こうとしていることは、ぼんやり頭の中にあって、それを並べ替えて書いていけばいい、と考える人も少なくないが、ぼんやりと頭の中にあるままでは、構成もぼんやりとしたままになってしまう。

書く内容を「見える化」しないまま構成しようとすると、書き慣れている人でもスムーズにはいかないのである。
構成を考えるとき、文章を書くことを仕事にしている私がよくやるのは、これである。

「もしカフェで目の前に読者が座っているとして、しゃべって伝えるとすれば、どんな順番で話していくか」
しゃべって聞かせるように、といっても、もちろんしゃべることをそのまま文章にすればいいというわけではない。
実際にしゃべるときには、話はあっちに行ったり、こっちに行ったり、止まったりすることもある。
それでも、それほど違和感なく話が聞けてしまうのは、聞き手が話だけを聞いているわけではないからだ。
それこそ、話している人の表情、身振り手振り、言葉のトーンの高低などなど、いろいろな要素と話していることを、全体で理解する。
だから、多少まごまごしても、違和感なく聞けるのである。

しかし、文章はそうはいかない。
止まって、そこにあるのだ。
となれば、スラスラとロジックが流れていないといけない。
だから私がお勧めしているのは、ざっくりでもいいので、書く内容を一度、箇条書きにして抜き出すことから始めることなのである。
それを眺めて、どういう順番で展開するかを考えるのだ。

たとえば、こんな素材があったとする。
・会社は工場街・大田区にある
・先代から事業を引き継いだ社長
・人を大切にすることを何より先代に教わった
・そのために工場を作り替えた
・工場は5年前に新設 ・最新鋭の機械も入っている
・この5年間で、離職者はゼロ
・未経験でも学べる

さて、これをどう構成していくか。
いきなり構成しようとすると、実は文章のプロでもやりようがない。
しかし、こんなふうに条件を定めてみたらどうか。

文章の「目的」と「読み手」を定める
文章の目的=「人材採用のため」
読み手=「転職を考えている20代」

構成を考えるときには、こんなふうにまずは「目的」と「読み手」の条件を定めるといい。
そうすることで、一気に考えやすくなる。
この条件が与えられると、私ならこんな構成にする。

・この5年間で、離職者はゼロ →
・未経験でも学べる →
・会社は工場街・大田区にある →
・工場は5年前に新設 →
・先代から事業を引き継いだ社長 →
・人を大切にすることを何より先代に教わった →
・そのために工場を作り替えた →
・最新鋭の機械も入っている

「素材」をしっかり書き出していれば、こうした構成がやりやすくなる。
そして、目的に沿って読み手にしゃべって聞かせるつもりで、「こうでこうでこう」という流れで考えてみるといい。
まさにこれが、カフェで目の前に読者がいたとしたら、の意味である。

目の前に読み手が座っているとして、書き出した「素材」を使って、どう目的のための説明をするか。
「こうでこうでこう」とつながりで考えていけばいい。
これを言って、これを言って、これを言う、という順番を考えてみるのだ。

面倒でもちゃんと「見える化」しておくことで、スピードは一気に高まる。
しかも、見ていただいたように、起承転結などいらない。
話して聞かせるのも、読んで理解してもらうのも、実がコミュニケーションツールとしては、同じなのである。

「おっ」「えっ」「そうなんだ」「なるほど」で始めよ だが、ここでひとつだけ注意したいのは、「書き出し」だ。
もともと私は広告からキャリアを始めていること、また私自身が読むことが好きではなかったことも理由になるのだが、文章というものに極めてシビアな見方をしているのである。

それは、 「できればだれも文章なんて読みたくない」 ということだ。
これが、スタート地点なのである。
となれば、なんとか読んでもらえる工夫を書き手がしなければならない。
そこで気をつけたいのが、「書き出し」なのだ。
あまりに凡庸なつまらない話から始まっていたら、読もうと思わないし、読んでもらえないのだ。

「書き出し」には、この4つの反応を意識している。
・「おっ」(意外なこと)
・「えっ」(びっくりすること)
・「そうなんだ」(強く共感すること)
・「なるほど」(新しい発見)

こんなふうに感じることから始まっていれば、読みたくなくても読む気になるかもしれない。
間違ってもやってはいけないのは、「私は〜」から始まる文章である。
私が書いているのだから、あまりにも当たり前すぎる書き出しだ。
これだけは避けることである。
だが、あとは「起承転結」などのセオリーにとらわれず、「目的」と「読み手」を定めて、「話すならどう展開するか」で考えてみるといい。
文章もコミュニケーションツールなのだから。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | 教育・学習 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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