2020年12月23日

来年は「いつものように」

香山リカのココロの万華鏡
来年は「いつものように」
毎日新聞2020年12月22日都内版

 長いあいだ精神科医をやっていると、不思議なことがいろいろと起こる。
「いつも同世代の患者さんが多い」というのもそのひとつだ。
20代から30代にかけては若い患者さんを診る機会が多く、40代になるとアラフォー、アラフィフの女性の来院が増えたのだ。
 そして、いま。ミドル世代は相変わらず来院するが、次第にシニアが増えてきた。
よく考えればそれは当然で、クリニックのホームページで医師の年齢を確認して「この人なら同世代だから」と選ぶ人も多いのだろう。
もしかしたら、若い世代で一、二度来院して「この医者、ずいぶん年上で話が合わないな」と離れる人もいる一方で、同じような年齢の人はなんとなく通い続けてくれているのかもしれない。

 そういうわけで、いまは診察室で還暦あたりやさらに年上の人たちと話すことが増えた。
こちらもつい同級生感覚で「そういうこと、ありますよね」などと意気投合する場合も多い。

 最近の話題は、なんといっても「今年はたいへんでした」ということ。
定年で再任用の予定が新型コロナウイルスの影響で取りやめに、施設に入っている母にも遠くに住んでいる孫にも会えない、といった話を聞いて「たいへんですよね」と心から同情している。
 ある時、そんな男性のひとりがこう言った。
「やっている事業、今年は最後のがんばりと思っていましたが、コロナのせいで全面ストップです。
今年はなかったと同じようなものですよ」

 私が「いっそ今年はなかったものと考えるのはどうですか」と言うと、彼はこう返した。「そうしたいけどほら、この1年で白髪とおなかの脂肪が増えちゃって。これだけは“なかったこと”になってくれないんですよ」
 それを聞いて「そうですよね、からだだけは確実に年齢を重ねてるんですよね」と思わず大笑いしてしまった。

これは若い人にはなかなかわからない感覚なのではないか。
 「時よ止まれ、おまえは美しい」というのはドイツの文豪、ゲーテの「ファウスト」に出てくるセリフだっただろうか。
でも、今年に限っては本当に時間が止まった感覚を味わった、という人も少なくないだろう。
そして、それは決して美しくはなく、つらかったりしんどかったりすることも多かった。

 来年こそは、時間がいつものように進み、若い世代もシニアも予定や計画を着々とこなしていける年になるように、と願っている。
            (精神科医)
posted by 小だぬき at 12:00 | 神奈川 ☀ | Comment(2) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ある人は言った

2019年の次は 2021年ですよね


そう・・2020は 年ではなく

20歳まで20本の歯を残そう運動だったなのだ!Σヽ(゚Д゚○)ノ
Posted by タカやん at 2020年12月23日 13:21
2020年は、コロナ感染の拡大の1年でしたね。
感染は「運」としかいえない 感染状態。
政治の劣化も目立った年でした。

来年は 少しでも明るい年になるといいですね。

いつもありがとうございます。
体調不良から早く脱したい小だぬきです。
Posted by 小だぬき at 2020年12月23日 16:38
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