2021年02月10日

「役人を怒鳴りつける」「調整力不足」 河野ワクチン担当相に周囲から不安の声

「役人を怒鳴りつける」「調整力不足」 河野ワクチン担当相に周囲から不安の声
2021年02月09日 デイリー新潮

■お茶を飲んだだけで「客に感染したらどうする!」
 菅義偉首相は、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種について、「2月中旬にスタートしたい」と述べている。
そんな中、ワクチン担当相に任命された河野太郎大臣について、周囲からは「調整力不足」を指摘する声が出ている。
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コロナを正しく警戒することは重要だが、一方で、「行き過ぎ」と思われるような事態も起こっている。
 たとえば、東京都内のタクシー運転手は、マスクをずらしてお茶をひと口飲むと、後部座席の乗客から、「客に感染したらどうする!」と怒鳴られたという。
 さるカルチャーセンターの講師は、こんな話を。
「ある教室で講師に1人、新型コロナの感染者が出た、という連絡があって、家族や関係者にも一切口外するなと。知られると、どこの教室のどの講師かという詮索が始まり、聴講生が集まらなくなるし、そうして詮索することは個人情報保護法に抵触する、というのです。

どういう人がどんな状況で感染したか、知らないほうがまずいと思いますが。
また、感染に対して本部がこうも過敏だと、感染したらクビになりはしないかと怖くなります。
だから医者にかかるのが怖いし、PCR検査も受けたくない」

■「ゼロコロナ」追求のデメリット
 昨年まで毎年、インフルエンザが原因で、日本で1万人程度の人が亡くなってきた。
インフルエンザも死亡リスクを伴う感染症だが、社会は感染者を許容してきた。
カルチャーセンターの講師がインフルエンザに感染したところで、1回休講になるだけで、だれも慌てなかったではないか。  しかも、社会的影響力が大きい人が大真面目に「ゼロコロナ」を説いた結果、社会に無用の混乱が生まれている。

一人はテレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」のコメンテーター、玉川徹氏、一人は立憲民主党の枝野幸男代表である。  

1月31日、合流新党として結党以来、初めての党大会で枝野代表は、感染防止と経済再生の両立は「明確に失敗した」と政府を批判し、こう訴えた。
「なんとしても命と暮らしを守る。
命と暮らしを守ることのできる政権を作る。
自己責任から支え合いへ。“ゼロコロナ”の日本へ。
……新しい政権を作り、国民とともにこの危機を克服する」。

 医師で医療経済ジャーナリストの森田洋之氏が言う。
「抗ウイルスグッズや、部屋じゅうを除菌するといわんばかりの空気清浄機の宣伝からも、すべての菌やウイルスを排除しようという風潮が見られます。
しかし、菌やウイルスは人間と共存しているもの。手のひらにも口の中にもすごい数が存在し、体内も腸内細菌などは何兆個もいる。
それらをすべて排除したら、人間は生きていけません。
多くの人はこういう前提を知らないから、必要以上に怖がってしまうのでしょう」

 その発言が社会に影響を及ぼしうる立場の人は、基礎的な前提くらい学んでおいてもらえないものか。
森田氏が続ける。
「ゼロコロナの追求にはデメリットが二つ、あると思います。
ゼロコロナの方針をとっている台湾では、病院で陽性者が出たら、周囲が5千人規模で自宅隔離を命じられています。
このように、日常生活が制限されてしまうのが一つ。
次に、永遠に開国できなくなります。
やみくもにゼロをめざせば国民が幸せになるのか、考えなければいけません。
ウイルスとのある程度の共存を考えないと、永遠に鎖国という選択肢しかなくなります」

■2月、3月の感染者は
 政治アナリストの伊藤惇夫氏は、枝野代表の発言を聞いて、こう述べる。
「理想を言うのは構いませんが、現政権も現実を直視し、苦悩しながら方向性を決めている。
枝野代表も本気なら、ゼロ実現に向けてのタイムテーブルや工程表を示す必要があります」

 ゼロのための工程表なら、ロックダウン3カ月だろうか。だが、それでもゼロにはなるまい。
また、枝野代表は感染爆発を「人災」と指摘したが、感染拡大の原因は季節にもある点が見すごされてはいないか。
「呼吸器系の感染症のピークは、インフルエンザも既存のコロナウイルスも、1月中旬から2月上旬くらい。
1月に増え、いまはもうピークアウトしているのではないでしょうか。
予想通りにいけば、2月には新規感染者はいままでの半分程度になり、3月にはもっと減ると思います」(森田氏)

■河野大臣は「協調性が少し足りない」
 また、ゼロコロナなどと気張らずとも、2月中には日本でも、医療関係者を皮切りにワクチン接種が始まる。
ただ、ワクチン担当に指名された河野太郎大臣の発言に、国民の不安が増しているのも事実である。

 坂井学官房副長官がワクチンについて、「6月までに確保する見込み」と述べると、「修正をさせていただく」と発言。
政府内の足並みの乱れを自ら進んで浮き彫りにした。

政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は、河野大臣を長年取材してきた立場から、こう述べる。
「昨年12月から、菅総理は西村経済再生担当相、田村厚労相にワクチンの業務を任せていましたが、まったく進んでいなかった。
そこで総理は、行革を手際よく進めていた河野大臣の発信力、行動力を見込んだのです。
いまの官邸は根詰まりを起こし、総理の考えを共有できていません。

必要最低限の人にだけ話して流れを作る、というのが菅総理の政治手法ですが、コロナのような事態では、周囲とのコンセンサスや国民への説明が必要です。
結果、周囲は総理の考えがわからないまま混乱している。
そんななか、総理と唯一コミュニケーションがとれていたのが河野大臣なのです」

 そんな鈴木氏も、河野大臣の欠点を指摘する。
「ぐいぐい進めるがゆえに説明が不足し、協調性が少し足りない部分もある」

■「気負いすぎ」との声も
 さる国会議員の秘書は、こう述懐する。
「議員のほかに担当省庁の役人が集まる自民党の部会で、制度設計を説明する役人に向かって、河野さんがいきなり怒鳴り出したことがありました。
やると言っていたことができていなかった、という内容で、役人が謝っても構わず、“やるって言ったらやれよ”などと怒鳴り続けたのです。
場が凍りましたが、ただ、河野さんはほかの部会でも同じように怒鳴ることがあるので、役人は慣れっこという感じでした」  

前出の伊藤氏も、 「今後、摩擦が起きなければいいな、と思います」  と言って、続ける。
「ワクチンは業務が複数の省庁にまたがるのに、河野さんは調整力を不安視されている。
加えて、これまで新型コロナやワクチンに関与してこなかったので、どこに問題があり、どう進行しているのか、熟知していないはず。
それなのに、自分の発言以外は信用するな、などと発言するのは、気負いすぎかと思います」

  「週刊新潮」2021年2月11日号 掲載
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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