飲食店「協力金バブル」の落とし穴。もう普通の日常には戻れない
2021年03月18日 SPA!
いよいよ首都圏に発令されていた緊急事態宣言も解除され、ワクチンの接種も順次進んでいるとなれば、待っているのは「日常の復活」である。
多くの人が、コロナ禍以前の日常が再び訪れることを心待ちにしているだろうが、中にはとある理由から不安を覚えている人たちも……。
◆「協力金バブル」に浮かれて…
「夫は昨年の秋以降、ほとんど働いていません。
一度店を覗いたんですが、店頭に夫はおらず、結局、別の居酒屋で飲んでいた。
バブルに浮かれ、普通の生活が戻っても前のようにちゃんと働いてくれるのか不安です」
こう話すのは、神奈川県内で飲食店を経営する本島祥子さん(仮名・30代)。
夫(40代)が両親から引き継いだ居酒屋など数店を夫妻で経営する。
当然コロナの煽りを受け、休業や時短要請などに従う形で営業を続けてきた。
だが、夫に危機感はゼロ。
昨年から今年にかけ、さまざまな名目で支払われた協力金や補償金のおかげで、もはや以前のように働く気はなさそうだと嘆く。
「夏までは慣れないランチ営業、弁当販売などもやっていました。
ですが、夫は協力金が手元に蓄えられるようになってからは、ほとんど店のことをやらなくなった。
メインの居酒屋にはたまに顔を出しますが、馴染み客が来ると一緒に飲んで、そのままどこかに行ってしまう。
それ以外の店は従業員に任せっきりです」(本島さん、以下同)
飲食店に対する1日6万円の協力金、いわゆる「協力金バブル」に浮かれ、気がゆるんでいるという経営者の話が週刊誌の報道などで漏れ伝わってくる。
本島さんの夫は、まさにその急先鋒だった。
◆普通の生活には戻れない
役所などへの申請関係、
店の通帳は夫が握っているため、本島さんは協力金がいくら入ったのか正確な額はわからないという。
だが、その一部、もしくは少なくない額を夫は持ち出し、遊興の限りを尽くしている様子なのだとか。
「夫の羽振りがいいということで、怪しい友人が群がってきているようで。みんなを引き連れて、以前は行かなかったような女性がいるお店に通っていると、知人がこっそり教えてくれたこともありました」
もちろん注意をしているが、夫は「コロナが終われば働く」とぶっきらぼうに言ってみては、すぐにふて寝をするか酒を飲み始める。
世間では「コロナ明け」に期待が高まる中、本島さんの精神状態は悪くなる一方なのだ。
「夫は、まるで人が変わってしまったようです。コロナが終息しても普通の生活には戻れないでしょう」
◆フードデリバリーサービス配達員の懸念
東京都内在住で、昨年4月からUber Eats(ウーバーイーツ)などのフードデリバリーサービスの配達員を行っている依田篤志さん(仮名・20代)が不安を吐露する。
「日常が戻るとなると、仕事は減るでしょうね。不景気で新規の参入者も増えているし、これで食えなくなれば、また無職に戻ってしまうのか」(依田さん、以下同)
大学を中退後は仕事をすることもなく、3年ほど実家でニート生活を送っていたが、コロナ禍によりタクシー運転手である父の収入が激減。
母親から泣きつかれ、これでは流石にまずいと一念発起、ようやく始めた仕事が配達員だった。
依田さんの収入は、ここまで順調に右肩上がりを続けてきた。しかし……。
「ステイホームが呼びかけられ、特に昨年の夏以降は本当に注文数が増えました。
都内であれば、1日1万円以上稼げる日ばかり。
働けば働くほど稼げるので、労働の楽しさを知りました。
ですが、配達員の数も同じように増加。
今は配達リクエスト(注文数)が増えているのでいいですが、コロナ禍が終われば、確実に受けられる数は減るでしょう」
◆“コロナ”を口実に人とのやりとりが最低限で済むのが良かった
事実、緊急事態宣言の最中でありながらも、天気の良い休日などは、街に人が繰り出すようになっていた。
その数に反比例して配達リクエストは減る。
Uber Eatsのほか複数のフードデリバリーサービスに登録し、なんとかしのいでいるが、以前のようには稼げなくなってきていることも痛感している。
「やっと社会復帰できたと思っていたところ、また試行錯誤をするハメになりそうで……。
もともと人とのコミュニケーションがうまくありません。
正直、“コロナの感染対策”を口実に、人と会うことが最低限で済ませられるというのがよかったんです。
普通の仕事は、たぶん僕にはできない。
新しい生活様式なんて言いながら、みんな外に出たいに決まっています。
正直、コロナがもっと続いてくれればと思います」
すっかりコロナ禍の日常に慣れてしまった私たち。
そこには一定数、“コロナありき”の生活でお金を得ていた人たちも存在する。
そんな人たちにとってみれば、「普通の生活」の再来は頭の痛い問題なのだ。
<取材・文/森原ドンタコス>
●●〇〇さん(仮名)という書き方がダメ!
初めから AさんBさんにしなさいと言いたい。
同姓同名の●●〇〇さんがネットで被害に遭っている可能性を<取材・文/森原ドンタコス>さんは考えていない。