2021年04月28日

4.25トリプル選全敗、高まる「反自民」のうねり

4.25トリプル選全敗、高まる「反自民」のうねり
与党内に広がる「菅では選挙を戦えない」との声
2021/04/27 東洋経済オンライン
泉 宏 : 政治ジャーナリスト

 菅政権発足後、初の国政選挙となった「4.25トリプル選挙」で自民党が全敗し、コロナ禍での政局混迷に拍車をかけている。
菅義偉首相の命運がかかる解散・総選挙の東京五輪前断行も絶望的との見方が広がり、与党内から「菅政権では選挙を戦えない」(閣僚経験者)との不安も漏れてくる。

菅首相は投開票から一夜明けた26日午前、官邸で「国民の審判を謙虚に受け止め、さらに分析をしたうえで、正すべき点はしっかり正していきたい」と述べ、平静を装った。
ただ、自民党内には「逆風は政権を失った2009年に匹敵する。
自民はもう崖っぷち」(若手)との厳しい見方も出ている。

唯一勝ち目のあった広島でも敗北
一方、全勝した立憲民主など主要野党は、次期衆院選での自民打倒を目指して勢いづく。
政府が25日に発令した3度目の緊急事態宣言も「後手にまわった」との批判が強く、大型連休を前に、菅首相の政局運営は一段と厳しさを増しそうだ。
  次期衆院選の前哨戦となった参院広島選挙区再選挙と参院長野選挙区、衆院北海道2区の両補欠選挙は25日に投開票された。
その結果、自民党は与野党対決となった広島と長野で敗北し、候補者擁立を見送った北海道も含めて全敗となった。

トリプル選挙で自民党が「唯一勝ち目のある戦い」(選対幹部)としていたのが広島再選挙だった。
しかし、野党統一候補となったフリーアナウンサーの宮口治子氏(45)=立憲、国民、社民推薦=が、自民新人で経済産業省出身の西田英範氏(39)=公明推薦=との事実上の一騎打ちを、3万票以上の差で制した。
同再選挙は、巨額の買収事件で公職選挙法違反の有罪判決が確定した河井案里前参院議員(自民を離党)の当選無効・失職を受けたもの。
選挙戦では「政治とカネ」が唯一最大の争点となり、金まみれの買収に対する有権者の強い怒りが保守王国・広島での野党勝利につながった。

広島と同様に与野党対決の構図となった参院長野補選は、野党統一候補となった立憲民主新人の羽田次郎氏(51)=共産、国民、社民推薦=が、自民新人で元衆院議員の小松裕氏(59)=公明推薦=を破った。
立憲民主の羽田雄一郎参院幹事長が2020年末に新型コロナで死去したことに伴う補選で、野党側は実弟の次郎氏による弔い選挙を前面に出して圧勝した。

支持率に表れない「反自民」のうねり
一方、収賄罪で在宅起訴された吉川貴盛元農林水産相=自民を離党=の議員辞職に伴う北海道2区補選は、自民党が不戦敗を決める中、野党統一候補として立候補した元衆院議員の松木謙公氏(62)=国民、社民、共産道委員会推薦=が、維新の新人ら5氏に圧倒的大差をつけて国政復帰を果たした。
投票率は3選挙区とも前回選挙をかなり下回り、有権者の無関心さも目立った。
中でも、これまで自民候補が野党候補の2倍近い票を得てきた広島で、公明党の全面支援を受けた選挙戦で自民が敗北した。そのことは、同党への逆風の強さを浮き彫りにしている。

2019年以降に実施された衆参補選・再選挙は計7回(衆院4回、参院3回)。このうち自民が勝利したのは2020年4月の衆院静岡4区だけとなった。
いずれも2017年秋の前回衆院選以降に実施されたもので、自民党内には「政党支持率には表れない『反自民』のうねりが感じられる」(選対幹部)との不安も広がる。
開票状況を自民党本部で見守った山口泰明選対委員長は25日夜、「(結果は)厳しいが厳粛に受け止める。謙虚に反省し、しっかり検証して正すところは正したい」と述べ、広島での「政治とカネ」批判についても「(影響は)ないとは言わない」と肩を落とした。

その一方で選挙の最高責任者の菅首相や二階俊博幹事長は党本部に姿を見せず、結果判明時のコメントも出さなかった。
広島の再選挙につながった前回参院選での河井氏の買収事件は、二階派所属の河井氏と岸田派重鎮の溝手顕正元参院幹事長による熾烈な保守分裂選挙がもたらしたもので、自民広島県連も菅首相や二階氏の現地入りを拒否していた。
今回の再選挙は岸田派による遺恨試合ともなり、前回選挙で河井氏に肩入れした自民幹部は地元県連の反発に配慮して現地入りを見送るケースが相次いだ。

党執行部内にも「敗北は岸田氏の自己責任」との突き放した声も出ている。
都議選とのダブル選はほぼ不可能に 次期衆院選に命運が懸かる菅首相にとっても、「広島での敗北は大きな打撃」(自民幹部)となる。
今国会終盤の衆院解散断行による7月の東京都議選とのダブル選という選択肢も、「政治的には今回の自民全敗でほぼ不可能になった」(閣僚経験者)との声が支配的だ。

広島での敗北は、次期総裁選出馬を目指す岸田文雄前政調会長にも大きなダメージとなった
広島は池田勇人元首相以来の「宏池会(岸田派)の天領」とされ、現在も県選出の自民党国会議員の半数が岸田派所属だ。
今回選挙で岸田氏は告示前から地元に張り付き、岸田派の所属議員や秘書団も大量投入して「宏池会選挙」を展開したうえでの敗北だからだ。
岸田氏は25日夜「素晴らしい候補者に恵まれながら、選挙戦を勝ち抜くことができなかった。力不足をお詫びしなければならない」と沈痛な表情で頭を下げた。
記者団からの責任を問う声にも「結果を出せなかったことは申し訳ない。それに尽きる」と言葉少なで、選挙に協力的ではなかった菅首相や二階氏への恨み言は封印した。
岸田氏周辺には「菅首相や二階氏による岸田つぶしにやられた」(側近)との怒りの声も少なくない。
ただ、党内には「これで、岸田氏のポスト菅の目はなくなった」と冷笑する声と、「岸田氏はよく頑張った」との同情論が交錯する。

「ゼロから出直して戦う政治家に変身する、いいチャンス」(自民長老)との見方も出る。
今回のトリプル選全敗の背景には、地方選挙における自民党の退潮があるとみられる。
各種世論調査での政党支持率をみると、自民は一貫して主要野党の支持率合計を大きく上回り続けている。
にもかかわらず、地方選挙で自民苦戦が目立つのは、「有権者の間で反自民の空気が強まっている証拠」(選挙アナリスト)でもある。
今回最も注目された広島も、コロナの影響を差し引いても投票率の低下が際立った。
自民県連は「従来の自民支持者の多くが棄権に回り、無党派層は積極的に野党に投票した」と分析。
背景には、安倍前政権以来の政治とカネの問題だけでなく、コロナ対応でも国民の命より政治的思惑を優先する菅政権への反発があると指摘する。

全敗でも「菅降ろし」は起きず
ただ、トリプル選全敗でも自民党内の菅降ろしの動きは顕在化しそうもない。
岸田氏をはじめとするポスト菅の有力候補らが、「軒並み挑戦権を封じられている」(閣僚経験者)からだ。
「選挙で勝たないと政権は続かない」として、再選狙いで衆院解散への意欲を隠さない菅首相に対し、正面から挑みかかる実力者も現状では見当たらない。

野党も足並みの乱ればかりが目立つ。
一部メディアの調査でも、「菅首相より枝野幸男立憲民主党代表のほうが嫌われ度が高い」との結果が出ている。
だからこそ、与党内に「結局、次期衆院選は菅首相のもとで戦うしかない」(自民幹部)とのあきらめムードも漂う。
菅首相は26日午前、解散・総選挙の時期については「新型コロナウイルス対策に最優先で取り組んでいく考えに変わりはない」と改めて早期解散断行に慎重な姿勢を示した。

広島での敗北の原因となった政治とカネの問題についても、「いろんな指摘をいただいている。自民党総裁として重く受け止めたい」と淡々と語った。
自民党内ではすでに、「菅首相は東京五輪・パラリンピックの開催にこぎつけ、その直後の9月に解散して一定の議席を確保することで、自民総裁選を無投票にする戦略」(有力幹部)との見方が広がる。

当面、「すべてはコロナの感染状況次第」(自民長老)という状況が続きそうだ。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(1) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
唯一勝ち目のある戦い
惨敗した理由

応援者が「票を分担したから」

こちら<西田>を応援してくださいと言われたけど、どうせ当選するだろうだから、私はこちら<宮口>を応援する


そう・・・ユーロ脱退したイギリスの投票者と全く同じ過ちをしているのである
Posted by タカやん at 2021年04月28日 08:53
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