「共産党の支持がなければ……」名古屋市長選で漏れる恨み節
2021年04月29日 SPA!
◆出馬するも地獄、せぬも地獄の河村氏だったが……
名古屋市長選は接戦の末、河村たかし氏が5選を果たした
。当初、対抗角であった横井利明氏にほぼ全ての政党が相乗りし、大船団を形成。
開戦前夜は「横井圧勝」と目されていた。
在名全国紙記者は選挙戦を振り返る。
「リコールの不正疑惑で窮地に立たされていた河村氏ですが、出馬を取りやめれば不正を認めたことになるし、出馬して負けようものなら政界引退の危機になった。
全政党相乗りという史上希に見る応援を取り付けた横井氏がほぼ勝つと見られていたので、出馬するも地獄、せぬも地獄の状況でした。
実際、河村氏は出馬の判断を最後までできず、代わりとなる候補者はいないか方々に声を掛けていたとも。
しかし、誰も『負け戦』に出る者はおらず、結局、出馬することとなったようです」
◆予想以上だった河村支持層
だが、蓋を開けてみれば思わぬ河村人気が河村氏を後押しすることとなった。
その辺りの詳細はこちら「“疑惑”の河村たかし氏が優勢。市長選で河村ラブな、名古屋人の謎気質」を参照してほしい。
この状況に後手を踏んだのが、「村・村コンビ」から「村・村戦争」の相手となった大村秀章愛知県知事と横井氏の陣営だ。
「誰もが盤石の選挙戦になると思っていたが、予想外の世論調査に横井氏の陣営だけでなく、最大の支援者である大村知事の対応は後手に回ってしまった。
コロナ対策と称してカネをバラ撒く“実弾戦”に出たが、これも焼け石に水。
横井氏はほぼ全政党の支援を取り付けながらも苦しい選挙戦を戦うことになったのです」
政党の支持は取り付けたが、横井氏は選挙戦の中盤からなんとも微妙な立場に立たされたのである。
◆共産党の支持がなければ……
ある名古屋市議は今回の選挙をこう分析する。
「共産党が横井支持を表明したことで、自民と公明支持層の半分近くが河村氏に流れたと見られてます。
自民支持層だけでなく、立民支持層にもいるアンチ共産党の支持者が河村氏にながれたのは大きかった。
もしも共産党が公に横井支持を表明せず、自主的な支持程度だったら選挙はもっとカオスになったと思いますよ。
ある自民党議員は『共産党の支持がなきゃよかったのになぁ……』なんて愚痴をこぼしてたくらいです」
普段は難敵である共産党の支援が支持層からの離反を促すことになるとは……。
なんとも皮肉な結果である。
◆物言う市長、河村たかしの人気
図らずも共産党の支援が河村氏の追い風となってしまうとは、なんとも皮肉な結果である。
だが、共産党の支持表明だけが河村氏の追い風になったわけではないというのが、前出の記者だ。
「昨年の春に発出された緊急事態宣言の際、名古屋市は登園自粛を呼びかけつつも、河村氏は『働くおかあちゃんに休めというのはあまりに残酷』と言って、保育園の通園を申告制にして開園させたのです。
こうしたわかりやすい施策に対して市民からの評価は高く、“物言う市長”というイメージが定着したんでしょう。
横井氏は大船団とも言える応援団をバックに出馬しましたが、これまでの河村氏の実績と人気を読み間違えたとも言えるんじゃないでしょうか。
それほどまでに河村氏の人気はすごかったということ」 とは言え、5期目を向かえることとなった河村氏だが前途は多難だ。
大村知事との関係に加え、市議会では支持母体の減税日本は野党であるため、捻れ市議会を運営するためには最大会派の自民党との折衝も大きな壁となる。
5期目を向かえる河村市政には、全国から大きな注目が集まりそうである。
〈取材・文/SPA!編集部〉